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第一話 秘宝

 学生時代ボクはあまり真面目な生徒ではなかった。

 でも、魔術道具の制作と研究で評価され城内で採用されたのと、文官として大きく出世した優秀な親父殿の身内コネで城使えになれた。

 さらに、念願であった宝物庫担当にまでごり押ししてくれた親父殿には、一生頭が上がらない。


 仕事は主に宝物庫とその周辺の警備強化、及び改善、宝物庫にある魔術道具の研究である。

 文官ならではの細々とした仕事も当然あるし、有事ならば文官とは言え武器を持って戦わなければならない。

 しかし、学生時代の訓練のみで、実戦経験などはまるで無く、我ながら役に立つ気が全くしない。

 恰好良いというだけで学生時代に買ったハルバードは、今は家のどこかで埃をかぶっているだろう。

 ああ、平和が一番。


 今日も平和に宝物庫に籠る。

 さすが第一王国だけあり、宝物庫は素晴らしい。

 金銀財宝もさることながら、魔術道具とりわけ秘宝と呼ばれる品も沢山秘蔵されている。


 しかし、この秘宝の中には以外にやっかいな品もある。

 竜を倒したら、たまたま手に入ったというのもそれだ。

 竜が大事にしていたくらいだから、恐らく秘宝なのだろうが、取扱説明書や覚書もないので、効果や使用方法が全く分からない。

 一族により口伝で伝わっていった品も、竜が勝手に持ってきたために困った品物となるのだ。

 さらには、これは何?どっちが上?という形の品すらある。

 また、調べてる途中で強力な魔力により、呪われて体調に異変を起こす場合もあるので怖い。

 しかし、ボクが宝物庫担当に入れたきっかけがそれだったので、そういった意味では調査途中のまま封印された暗黒魔竜の壺には感謝している。


 昨日からのが一つ解明し終えた。

 太い蝋燭だが、“自分の影を自在にコントロールし、それが実際の世界に影響を与える”という品であった。

 例えば、何も手に持ってない状態でも、影を剣に変形させて相手の影に刺したら、実際に刺し傷ができるのである。

 親父殿に入学祝いに贈られた“あらゆる大気と魔力の流れと、妖精が見える瓶底黒眼鏡”をくいっと上げ、普段から注意されがちな猫背が集中し過ぎてさらに丸こまっていたのを戻す。

 よし、これは終了っと。


 カップに生温い珈琲を入れてきて、少しの休憩をとり、次にいつもの木の箱から大ぶりな水晶を大事に取り出す。

 かれこれもう数か月にらめっこしているが、この品の効果や使用方法がさっぱり分からないという顔をする。

 でも、実は解明していた。

 初めて触った時に。

 でも、報告していない。

 報告したら、とんでもない事になるからだ。

 まず、宝物庫から取り上げられるのは確実だろう。


 使用方法は魔力の周波数を合わすのが難しいが、あとは簡単で、魔力もそんなにいらない。

 その割に効果が“世界中のあらゆる場所が好き勝手に覗ける”という秘宝中の秘宝。

 しかも周波数のある一点には、音声さえも直接頭に響くようになるのだ。

 この秘宝の効果を知った時、全身が震えて、あやうくチビりそうになった。


 そして、ボクは本能の赴くまま、可愛い女の子たちの着替えや入浴などを覗いてしまっていた。


 今日も可愛い女の子を覗こうかなと思っていたある日、とても衝撃的な映像に遭遇した。

 主人公は地方の町に住む少女。

 名はアウリといい、鼻先にはまだそばかすの跡のある女の子だった。

 その日から彼女をよく覗き見するようになったのだが、それとは別件で彼女の身に危険が迫っているようでもあった。

 ああ、困った。

 こんな貴重な対象を失ったらボクの楽しみが激減してしまうじゃないか。

 これはいかん! なんとか阻止しないと、というわけでここ最近はもっぱら彼女の周辺を調べてる上げてる。

 本日ようやく調べ終えたので明日行動しようと思い、ボクは席を立ち上司の机に向かったのだが、有給は一か月前に申請しないと駄目らしい。

お読みくださりありがとうございます。

あと2話で完結いたします。

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