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夢の中の少女は俺を主様と呼び仕える  作者: 龍夢
第一章 転移・タリナ編
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プロローグ

 エルジェは夢を見ていた。まったく知らない場所ではあったが、夢の中の風景は、古くから伝わる物語、あらゆる英雄譚とともに語り継がれるようなお馴染みの世界であった。

 何千年も前に交流を絶たれ、今は行く事が出来ないその世界は、この世界の裏側に存在するとされ、オールドスフィアと呼ばれている。


 エルジェは、自分の見る夢の世界は、オールドスフィアではないかと思っている。


 自分の住む世界、ネオスフィアにもモンスターや冒険者、各種ギルドといったものは存在するのだが、夢の中の世界は比べ物にならない規模であり、人と人、人とモンスターの争い等も絶える事はない。そして、ネオスフィアに比べ文明レベルはやや低いようだが、其処に暮らす人々は、いつも顔が活き活きとしているのも印象的だった。

 いつも夢は人々の生活の様子から始まるのだが、そんな夢の中の世界に憧れを抱き、今では一度行ってみたいとさえ思っている。


 夢の中で鮮明に思考出来る事に多少の疑問はあるのだが、この夢はエルジェが半ば強制的に見続けている夢であり、今ではもう慣れたものだ。寧ろ見る事を楽しみにしていたりもする。

 そう、この夢は、その場所に自分がいなくとも、いろいろな出来事を教えるかのように見続け、最初は何日かに一度しか見なかったこの夢も、最近はだいぶ短い間隔で見るようになっているのだ。


 そもそも何時からだろうか、こんな夢を見るようになったのは…。


 最初に夢を見たのは、自分が十二歳か十三歳になったくらいの頃からだと思うが、いつも同じ女の子が夢に出てくるのだ。

 最初は十歳にも満たなかった女の子も、今では成長し、ネオスフィアであれば自分より少し年下、いや、もしかしたら人によっては立派な大人の女性と見るだろう。

 見る者の目を奪う長い黒髪に、紫紺の瞳、体はまだ少女から女への成長過程ではあるだろうが、とても整った顔立ちとプロポーションをしている。夢であっても成長するのであれば、これからがとても楽しみな少女だ。

 名は判らない。住んでいるのが何処かも判らない。何度も見る夢にはいつも音がなく、登場する人々や彼女の会話も内容を知ることは出来ない。だが、その中でも彼女の存在は特別だ、夢に彼女と一緒に出てくる何人かの女の子、その中でも頭一つ抜き出た容姿をしており、周りの男達でも彼女に憧れている者が多くいるようだ。


 しかし、夢とはいえ、これだけ頻繁に見れば知り得たことも幾つかある。


 彼女の暮らしている場所は何処かの砦のような場所であり、山間の盆地のような場所に築かれていて、二つの大きな門だけが砦への通用門となっているのだ。

 砦の規模はなかなか大きく、人口もおそらく千人近いのではないかと思われる。村という規模ではない。しかし、街でもなかった。

 それでも鍛冶場など生活に必要な物を生産できる場所もあるというのは、砦の自給自足率を高める為だろう。そして、男女問わず毎日のように剣を使って練兵のような事をし、少女もそれに参加をしている。剣術とは別に自分の知る柔術に近い投げ技と、突きや蹴りを主体にした体術をやっているのも夢で何度か見た。

 これも訓練なのだろうか、何かを登ったり降りたり、駆け抜けたりジャンプをしたり、そんな場所を子供たちが遊び場としているのも、少女が小さい頃から続いている。


 夢の為、自分で見たい所を好きに見るということは出来ないのだが、何年も夢の中で成長する彼女を見続けるというのは、やはり異常としか思えない。


 しかし、そんな事はどうでも良いと思っている。なぜなら、夢でしか会えないとはいえ、何年も夢で見続けてきた彼女は、自分の中でも特別な存在になってしまっているのだから。


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