スキル取得
「まぁ…帰るか。」
「がう…」
限界突破にそこまでの感動も無く翼竜の解体に励む。いちいち面倒くさいんだよなぁこれ……ドロップアイテムみたいに勝手にアイテムBOX入ればいいのに。
「ふぅ…」
「早く、帰ろ。」
「そうしたいのは山々なんだが如何せん大きすぎ…はぁ!?」
「?」
声のする方へ顔を向けるが、もちろんシルバしか居ない。その時、本日二回目の(ピコン)という機械音が頭の中に流れてきた。
(『使獣調教スキル』を取得しました)
「……そゆことね。」
こういうスキルまであるってことはめがっさ増えるじゃん。ていうか調教スキルって…
(使獣調教スキルはその名の通り使獣を調教できるスキルです。調教だけでなく言葉が分かったり、もっといけばポケ○ンのように命令を下し技を繰り出すことも出来ます。隠しスキルの最大レベルは10で、今のお二方は1です。なので断片的にしか会話できませんが悪しからず。)
ふぅん…何か便利なのは把握した。シルバが急かすので解体の手は止めない。
「(どうやったら命令下せるまでになる?)」
そう問うとやはり無機質な声で返答。
(このスキルは使獣に対する愛情でレベルを上げていきます。しかし初期からかなり相思相愛でしたのでこの状態からスタートとなるとかなり時間がかかるかもしれません。)
「(そうか、ありがとう。あと相思相愛って言うな。)」
(いえ、向こうの世界にもこの世界にも動物愛といって恋愛対象が人間ではない者も少なくは無いですよ。……プクク)
「(分かったお前猫被ってるだろ)」
(そんなことはないです。私はあなたの中に存在するガイドブックのようなもの…人格は存在しません。)
「(いやお前完全に笑っ……)」
(四の五抜かさずさっさと解体に戻りやがってください。では。)
「(え、ちょ、)」
プツン、という音がして頭の中に響き渡っていた声は途絶えた。腹黒いというかどす黒い本性が判明したがとりあえず置いておこう。
「がう?」
「…ああ、断片的にしか聞こえないんだったっけ。とりあえず解体終わったから帰るか。」
いつの間にかバラバラになっていた翼竜をアイテムBOXに入れ帰路に着く。その間にも片言ながらシルバと会話が出来た。うん、純粋に嬉しい…我が子の成長を見ているようで和む。
(inギルド)
「お疲れ様です、こちらが報酬となります。」
「ありがと。」
さっさと手続きを終わらせ宿へ戻ろうとする。すると…
「あ、アスカさん!聞いてください、何とパーティーのお誘いがきたんですよ!」
リース登場。満面の笑みでこちらへ抱きついて…いや違う。突進してくる。リースのタックルが重いことは重々承知しているのでひらりと避ける。
「あだっ!」
見事、勢いに任せて転倒。
「パーティー組むのか、おめでとう。」
「見下ろしたまま仁王立ちで言わないでください…心へし折られました…」
「冗談だ。」
「いや、実現してるんですから冗談も何も…」
ぶつぶつ言っているリースの手を引き立たせる。アスカさんマジ紳士。
「うぐぅ…何気なくかっこいいところ嫌いです。このプレイボーイめ。」
「悪いことしてないのに何その言われよう。」
ふとリースの視線が俺の隣に居るシルバへ移る。…シルバは目線がかち合うと思いっきり低い声でうなり始めた。
「…シルバ、気持ちは分かるが噛み付くのだけはやめておけ。逆に噛み付かれるぞ。」
「!?」
「そんなことしませんよ!?私をなんだと思ってるんですか!」
「何って……制限外したら女やめちゃったAランク魔術師。」
「勝手にやめさせないでください!」
言い合いも程ほどにリースはシルバと目線を合わせるように跪き頭を軽く撫でる。シルバはというとすっげぇ睨んでる。
「可愛い…」
「お前嫌われてることに気づかねぇのか。」
「愛情の裏返しですよ。」
「シルバ噛み付いていいぞ。」
「がう。(パクッ)」
「きゃぁぁ!?」
…まぁ賢いシルバはどういう状況か理解しているので甘噛み。血は出ないものの歯型がくっきりとついていた。
「可愛いから許しましょう。」
「本当に掴めねぇこいつ……」




