初めての仲間
(ガチャ)
「……出来たか?」
「…急に開けないでよ馬鹿。」
「まぁ気にするな。」
クエスト達成後、俺が向かったのはシアの部屋。根気よく空間魔法の練習中だ。よく続けることが出来るな…
「……掌にブラックホール的な何かをイメージする。」
「した。」
「出来ない?」
「うん。」
「じゃあ才能が無いんだな。諦めろ。」
「何でそうなるの!気が散るから出てってよ!」
「あーはいはい。」
俺はさっさと退散。怒ると怖そうだからな、おちょくるのはやめておこう。することが無くなった俺は何とはなしに町の外へ出る。
「……今日はこっち。」
いつもクエストをこなしている森ではなく逆方向の林っぽいところへ足を進める。気分で散歩コースを変えるようなもんですよ。
(in???)
「……迷った。」
畜生、マジでどうしよう。初めての場所は考えながら歩くべきなのだが…ちょっと口ずさみながら来たためちょいちょい抜けている。ウォッチマップを使おうにも磁場的なものが狂っていて動かない。ていうか磁力で動いてたのか、あの双子どんだけだよ。
「キュン……」
「!?」
とりあえず記憶を頼りに来た道を戻っていると…モンスター発見。ただし怪我している。
「キュ……(うるうる)」
「……うぅ、」
全長1.9mほどの大きなシルバーウルフ。美しいシルバーの毛並みに少し青がかかっている。鋭い瞳も美しいスカイブルーだが怪我のせいでうるうると涙が滲んでいる……ように見えるのは俺だけだろうか。普段はめちゃめちゃカッコいいモンスターなのだが…そんな苦しそうな声出されると…
「……放っておけるかよ!そんな目で見んなぁ!!」
俺の動物愛護精神(もちろん時と場合による)が炎を上げる。だって可哀想じゃないか!どう考えても!!
「上級治癒属性魔法【完全回復】」
読んで字の如く完全回復です。腹部が引き裂かれていて赤黒かったが全部修復。どういう原理で回復してるんだろうね…
「がぅ!」
「うん。元気になったか、自分の場所へお帰り。」
「……。」
「じゃ。」
シルバーウルフに背を向け来た道を戻っていく……アレ、こっちの方向だったっけ。まぁこっちだろ。違ったら逆行けばいいし。…そういう問題じゃないか。
「……。(てくてく)」
「♪(とことこ)」
可愛い…じゃなくて。
何これ、何で付いてきてんの?懐いたの?
「……どうしたの?」
「がぁう!」
「分からん…俺の言葉分かる?」
「(こくこく)」
どうやら俺の言葉が分かるようだ。俺は分からないが…何となくなら。
「がぉ、が、がぅん♪」
「……えーと、俺の仲間になってくれるの?」
「(こくこく)」
「マジで!?」
いきなり仲間が増えました。ホントにいきなりだな!でもな~…
「?」
可愛いからいっか。正確に言うとカッコいいなんだけど…ニュアンスで言うとイケメンわんこ系男子みたいな感じ。カッコいいけど仕草が可愛いみたいな?
「じゃぁ…お前の名前はシルバだ!」
「がぅ!」
シルバーウルフからとってシルバ。誰だ、安直って言った奴。
「とりあえずこっから出してくれる?」
「がぅ♪」
「ありがとう。」
(ぼふん!)
「……ん?」
……大きな音を立てて煙に包まれたかと思ったらシルバが大きくなってました。どういうことだよ!戦闘フォルムですか!?
「♪」
「…乗っていいの?」
「きゅぅ!」
シルバの現在の大きさ、全長3m、高さ俺の肩ぐらい…でかいよ!あ、でもふかふか…
「…埋もれる……」
「がうぅ!」
「うん、出発して。」
「がぅがー♪」




