魔術師リース
……この町に来てから一週間後。
「うむぅ……本当にどうなっておるのじゃお前さん。」
「さぁ、俺にもちょっと…」
朝から晩まで猿の一つ覚えの如くクエストをやり続けた結果、見事5Sランクにまで上りつめることに成功。でも目立つのは好きじゃないのでこのことは王族関係の人々、その他諸々の数少ない貴族、そして目の前に居るギルド長のリックさんぐらいだ。
「…いい加減公表したらどうじゃ。」
「嫌ですよ。面倒くさいのは目に見えてますし。」
アイテムBOXから今回の獲物を引っ張り出す。あれ、どこいったっけ。クエストをやり続けていると嫌でもアイテムが溜まっていくので探すのに一苦労。
「はい。」
大きな角をまとめて渡す。
「おぉ…この百角獣も無事狩ることができたようじゃな…」
「はい、ちょこっと武技を使えば一発ですよ。」
「……もうお主に突っ込むことは無い。今回の報酬じゃ。」
「はいどうも。」
リックさんは呆れながらもGの入った巾着となかなかお目にかかれない白米を頂いた。炊飯器の無いこの世界、炊くのが非常に面倒なのだがこれはありがたい。アイテムBOXに入れお決まりの加護で∞にする。これでいつでも食べれるね!
「……最近キャラがおかしい……」
「どうした?」
「いえ何でも……」
(inギルド)
「……遅いです。」
「悪い…お前結構食べるんだな。」
「今日はここの魚料理が30%オフなんです。」
ギルド長室から出てきてすぐ目に入るのは魚料理に囲まれているリース。4~5皿はもうすでに空になっている。
「食べ過ぎたらこれからこなせねぇぞ。」
「いつもこれくらい食べますよ?割り勘にしてくれるんだったらアスカさんもどうぞ。」
「俺その半分も食えねぇのに割り勘とか詐欺だろ。」
「じゃあ急いで食べるんで待ってください。」
「(パンッ!)ごちそうさまでした!」
「見てるこっちが吐きそう……」
きっとこんな娘が居るから生活が苦しいんだろう…小さいのによく食べるなホント。どこに入ってんだ?
「それでは行きましょうか!」
「そうだな。お前が選んでいいぞ。」
「……最初のクエストが懐かしいです。」
「お前が成長したってことだろ。さっさと選べ。」
「はぁい♪」
駆け足で掲示板の所へ行くリース。リースは瞬く間に成長しメキメキと技術を身につけていった。おかげで現在Bランク(一流の冒険者)にまで到達したのだ。あのリースが…と思うとかなり凄い。
「Aランクの大猪討伐なんてどうでしょう?」
リースがいい笑顔でこちらへ走ってくる。そんな満面の笑みで言う内容じゃないんだが。
「ん、ナイスチョイス。」
「それでは行きましょう!」
受理してもらいすぐに指定された場所へ。
(in森の奥地)
「……この間もきましたよここ。」
「あぁ、よくボスモンスター的なの出るからな。」
「あ、本当だ。」
リースの視線の先には大きな猪としか表現できないモンスターが現れていた。体長6m程の立派な猪。
「ギィィ!」
「よっし、やりますよ~…」
「まぁ頑張れ。応援してる。」
最近のクエストはリース1人でも片付けることが多いので俺は休憩。危なくなったら助けますよもちろん。
「ですよねー…上級魔法雷属性【雷弾】」
【雷弾】、電気が弾丸のようなスピードで相手の体を貫く。かなり危険。
「グルァァァ!!」
「ふっふーん、私に勝とうだなんて一万年と二千年早いですよ!」
「何か知ってるぞそれ。」
「まぁ気にしないでください。」
「グ……ギ…」
大猪はリースに敵わない事を知り俺に向かって突進してきた。おいおい。
「グルァァァァァ!!!」
「……。」
聖王魔法時間属性【時間長刻】を使いいつでも避けられる状態にする。すると急激に動きが遅くなった。その隙に何の技を繰り出そうかと考える。…………よし。
「ウィザード級【十字斬】」
【十字斬】、対象の胸から下腹部にかけて十字型の傷をつける武技。若干中二病臭。
「グァ……(絶命)」
(ドスン!)
「俺に勝とうなんて一億と二千年早いんだよ!」
「あ、ずるいです。」
「ずるいわけあるか。数字は皆のものだ。」
「うー……」
不満げな表情でこちらを見てくるリース。おいコラ、睨んでないでさっさと解体しろ。
「ほい、ナイフ。」
「……女の子にそんなことさせるんですか!?」
「冒険者は女を捨てるべきだ、やれ。」
「うぐぅ……」
余談、リースは解体後肉が食えなくなったそうです。からの泣きつかれた。あんだけ魚食ってんだから別にいいだろ…。




