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いまさら魔法少女と言われても  作者: 赤川
Wave-03 吸血鬼は文学だけにしておくべきかと
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0017:ヴァンパイアハンター系魔法少女

 時刻は23時30分過ぎ。

 大型百貨店裏手の、ひと気の無い工事現場。


 街中に展開される航空無人攻撃機(UCAV)6機、地上無人攻撃機(SWORDS)4機、武器遠隔操作システム(RCWS)搭載軽装甲機動車(LAV)一両。

 そして、手持ちの火器は数知れず。


「ハッハッハッ――――――――――ギャボッッ!!?」


 またひとり、逃げ出した所を補足された吸血鬼が、ショットガンに打ち倒された。

 仕立ての良い高級ブランドスーツだったのに、勿体ない事に背中に巨大な穴が空いている。着ていた吸血鬼は、ちょっと2枚目のビジネスマンに見えた。

 これまで狩ってきた来た吸血鬼は、チャラ男風、大学生風、チョイ悪オヤジ風、爽やかインターン風、その他諸々。そこに、たった今仕留められたビジネスマン風吸血鬼も加わった。


「おねえちゃん……もう後ろの方、いっぱいだよ? また埋めてくるの?」

「ジャック、まだ兵員スペースには余裕があるネー。転がして積んでおくと良いデース」

「ふっっザケんなこのアマー!」

「こ、こんなの人権の侵害ですよ!!」

「ねーねーおねーちゃん、こんな事やめようよー。これ解いてくれたらさー、楽しい事してあげるからさーねー?」


 その全員が、最初のオヤジ吸血鬼を埋めた時同様、装甲車に放り込んであった。



 始めてはみたものの、そうそう簡単に見つかるワケが無い。

 と、思いながら街中に監視の目をバラ撒いてみたら、いるわいるわ。そこら中でそれらしい人物を目撃する事が出来た。思ったより末期的状況だったらしい。

 昨今の無人偵察機(UAV)――――――無人攻撃機(UCAV)――――――の目は恐ろしく、おしなべて体温の低い吸血鬼であっても、問題なく自動で補足する事が出来た。赤外線だけが真夜中の目ではないのだ。

 カティの「力任せ」がその身体能力ならば、雨音のそれは、ひとりで戦争が出来そうな兵器――――――正確には銃器――――――を造り出す能力だ。無人機が発達した今日この頃、その気になれば雨音の魔法は、世界の軍事バランスさえ打ち崩すだろう。

 その「力任せ」でバラ撒いた、無人機やセンサー付き兵器の数々。僅かな期間でプロ顔負けの無人機オペレーターに成長し、ますます非合法プロフェッショナルの様相を呈してきたジャックの全面バックアップ。

 そして、カティが突っ込み雨音が援護射撃する鬼の連携攻撃。

 カティを捜索した時は超音速無人攻撃機を用いたが、アレは周辺への影響が大き過ぎたと雨音は反省。カティまでフッ飛ばしてしまった時は大いに慌てた。

 なので、今回は無人攻撃ヘリを投入。これにより、実際に女性が襲われても、その瞬間に助けに入る事が可能となった。

 雨音も、もう被害者が出るのを許すつもりは無い。この際、魔法なんたらの手段は問わない。そこの所は良いのだが、依然、問題は山積みだった。


「そうね……とりあえず今捕まえた分は、また埋めてくるか」

「でも、公園の地面が装甲車だらけになってしまうデスよ?」


 とりあえずは、捕まえた吸血鬼が多過ぎ問題。何日も探して一人か二人か、などという当初の予想を完全に裏切る釣果。

 既に3度も、吸血鬼を捕まえては装甲車に押し込んで、最初のオヤジ吸血鬼同様に公園の地面に埋めている。

 穴掘り担当であったカティも、その数には首を(かし)げていた。


「んー……まぁ、いざとなれば申し送りでも張り紙して、警察の前に放置しとけばいいかしらね」

「警察が咬まれて吸血鬼(ヴァンパイア)取りが吸血鬼にならんデス?」

「それなら事前に牙をぶっこ抜いとこう」


 刀が武士の魂なら、牙は吸血鬼の魂と言ったところ。いや、吸血鬼でなくても無理矢理に歯を引っこ抜くと言われれば、一目散に逃げ出したくもなるだろう。揃いも揃って頑丈なワイヤーで縛られ、逃走は不可だったが。


「うん……牙抜いておくのは悪くない考えかも。勝左衛門」

「………素手じゃちょっと触りたくないデス。ペンチでも欲しいところデスねー」

「お、おいマジか!!?」

「ね、ねぇそんな事されそうになったら咬んじゃうかもよ? 咬みついちゃうかもよ!!? ねぇ!!!」


 とんでもない相談を平然と始めるエプロンドレスと巫女装束に、口々に吸血達が喚き始める。

 だが、


「じゃ(アゴ)ごと吹っ飛ばそう」


 ガシャコン、と、雨音はショットガンのフォアエンドを、音を立てて引いて見せ、吸血鬼達を黙らせた。

 雨音の銃弾は、ヒトを殺さない魔法少女面目躍如の魔法の弾丸。

 しかし、そんな事は知らない吸血鬼達。

 今さっき喰らったばかりの銃の威力と、エプロンドレスの少女が放つ本気の迫力に、にわか吸血鬼達は一様に顔面を青紫色に染めていた。


「でね、喋れなくなる前に聞いておきたいんだけど………」


 吸血鬼オヤジの時とは一転、完全に目の据わった雨音が吸血鬼達を見下ろし、地の底から響くかのような声色で問う。


「……あんた達の操り人形にされた娘ってさ、どうすれば元に戻るの?」


                        ◇

 

 雨音がカティの思惑に乗っかり、吸血鬼狩りに乗り出したのが3日前の事。

 学校の噂話にあった、吸血鬼に咬まれたらしき少女。

 彼女が入院する病院に忍び込んだ、その日が始まりとなった。


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