表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いまさら魔法少女と言われても  作者: 赤川
Wave-03 吸血鬼は文学だけにしておくべきかと
58/592

0011:火力過剰な魔法少女

 逆光でシルエットとなっていた二人の姿が、徐々に鮮明になって来た。

 ひとりは脇から肩まで大きく露出させた改造巫女装束で、もうひとりは極端にミニなスカートの黒いエプロンドレスといった(よそお)い。

 巫女装束の方は長く濡れたような黒髪で、エプロンドレスの方は胸ほどまで来る金髪。


「なんや、おねえちゃんら!? 美味しそうやないか!?」


 オヤジ吸血鬼の言う通り、そのどちらもが美少女だった。 

 胸や腰は大きく起伏し、手足もスラリと伸びている魅惑的な体型(スタイル)。片や勝気な吊り目で、もう片方は涼しげな眼差しの、タイプの違う整った美貌。

 吸血鬼(ヴァンパイア)でなくとも、放っておけないとびきりの美少女が二人が、この修羅場へ乱して来ていた。


「アカーンこんな野郎なんか構ってられるかい! 上玉ちゃんと3Pやー!!」

「ヒギィイイイ!!?」


 今にも牙を突き立てられそうになっていた若い警官は、紙ゴミか何かのようにダイナミックに放り投げられていた。

 (よだれ)を垂らさんばかりに表情筋を緩めた変質者のオヤジが、獣のように四肢で土手を蹴り、極上の獲物二人に突き進む。


「平和を乱し! 文字通りヒトの生き血を啜る悪党吸血鬼(ヴァンパイア)! ひとつ斬っては友の為! 二つ斬っては世の為に! ムコの民を救う巫女侍! 秋山――――――――――――!!」


 改造巫女装束の黒髪美女は口上を上げつつ、腰の鞘から引き抜いた大刀を高く掲げ、


「いただき――――――さまーそにっく!!?」


 金髪のエプロンドレスが前振り無しで大砲をブッ放し、変態吸血鬼は天高く吹っ飛ばされていた。


                         ◇


 警官を(エサ)にして、その間に雨音とカティは吸血鬼から逃げた。

 などという事は無く。

 いくらなんでも、そこまで雨音はクール&ドライではない。時間稼ぎに使わせてもらったのは事実だが。

 警官を囮に(酷)している間に、雨音とカティはそのまま土手を駆け上り、そこから更に滑り降りて川に架かる橋の下へ。

 雨音はそこで魔法を起爆(・・)。カティも変身し、ふたりで警官と吸血鬼の所に取って返して来た、というワケだ。

 ワケだったが。


「酷いデスあんまりデスアマネは一体何が楽しくてこんな事をするデス!?」

「いや『酷い』って……いいじゃん!? 結果は同じじゃん、手っ取り早く終わったんだから!」

「だってせっかく考えた決めゼリフ、全部言う前に終わっちゃったデース!!」

「あんた科白(セリフ)言い切る前に襲われてたからね?」

「そんときゃ吸血鬼をブッ飛ばしてから続きを言うデース!」


 涙目の黒髪巫女装束が、超ミニスカエプロンドレスに喰ってかかる。改めて紹介しておくと、黒髪改造巫女装束がカティで、黒いエプロンドレスが雨音が変身した姿だ。

 カティが荒ぶっているのは、雨音が一瞬で吸血鬼を倒してしまったからだ。その吸血鬼は、今は二人の足元で大きな腹を上に向け転がっている。

 雨音の魔法の杖であり、主砲。魔法のS&W M500リボルバーキャノン。

 容赦なくブッ放された.50口径S&W弾は、雨音の精密狙撃能力に寄るまでもなく、真っ直ぐ突っ込んで来た変態吸血鬼の顔面に直撃していた。

 吸血鬼といえども耐久力は並の人間程度でしかなかったのか、やはり西瓜(スイカ)を木っ端微塵にする.50口径は吸血鬼でも耐えられたものではなかったのか、白目を剥いて舌を出したオヤジ吸血鬼はピクリとも動かない。

 バケモノ相手に存分に魔法少女の力を振るえると思ったのに、と不平をぶつけるカティだったが。 


「カティ……あんたさっき、吸血鬼に襲われるのが狙い通り、とかなんとかほざいてたわね……?」

「………え? あ、アー……その……それはぁ……」


 変身後の目線の違いで、雨音さんは下からカティをギロリと。


「……明日の朝ご飯で『腐ってやがる早過ぎたんだ』の刑……」

「ハァウッッ!!? そ、それだけはお許しを御代官サマー!!」


 変身後見せ場もなく、しかも失言をガッチリ雨音に捉えられ、カティの命は明日の朝までだった。

 漏らさんばかりに震える黒髪美女を放っておき、雨音は土手の上から川側に手を振る。

 そこにゆっくりと接近して来る軍用の大型車両。


「さて……ワイヤーガンで良いかな」

「……? あ、アマネさま、一体何をする気デス??」


 下手に出るカティを無視し、雨音が新たな銃器を作り出す。

 爆音とともに現れたのは、以前産業振興会館でフィギュア遣いを相手に使った、地形踏破用のワイヤーガン。

 今回は発射せず、手動でワイヤーを引き出す雨音はカティに足元を示し、


「カティ、そこのデブオヤジを持って来て。咬み付かれないようにね」


 見下ろす吸血鬼オヤジを前にして、強靭なワイヤーをピンと張って見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ