0060:敵を知り己を知れば100戦危うからずとは言うが前提条件が難易度高いのではというよくあるハウトゥもの
魔法少女近況:いつも思うんだけどそういう大事なことを何故一介の女子高生に言うんだ。
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六月第3週の土曜日。
午後9時06分。
東京都麻布十番、ニルヴァーナ教団本部三階。
イニシエーションホール。
自ら敵へと前進しながら、セミオートショットガン、ベネットMS4を連射。
ズドバンッ! と肌を叩く衝撃と音が連続し、ショットガンを構える黒ミニスカ魔法少女の正面へ散弾が拡散していた。
対人散弾は僅か5メートルほど先にいるメガネにショートヘアの無表情少女を直撃するが、相手は多少よろめくだけ。
煤けた服が穴だらけになっても、気にした様子は無い。
巫女侍の身体強度をコピーした平坂エリカは、真正面から散弾を喰らいながらも止まらず早足で向かってくる。
黒ミニスカ魔法少女、旋崎雨音もショットガンを叩き込みながら大股で相手との間合いを詰め、
ドガキンッ! と、振るわれた大刀に対し、ショットガンを立て防御。
だが、膂力の差が有り過ぎ黒アリスは易々吹っ飛ばされていた。
派手に転がる黒ミニスカ魔法少女。手にしていたショットガンが白銀の回転拳銃に戻る。
すぐに倒れたままの姿勢で発砲しようとする雨音だが、その前に仲間の海賊少女が突撃してきた。
「くたばりやがらぁ!!」
海賊刀を金属バットのように使ったフルスイング、と思わせて、傘の柄のような形状の海賊短銃を抜き打ちで発砲。
不意打ちで至近距離から弾丸を叩き込むと、飛び蹴りからカトラスの脳天振り下ろしというケンカ殺法に繋げる。
その全てを、防御するまでもなく平坂エリカは身体で受け切ってしまったが。
「マリさん退がって! 西木さん!!」
大刀で払い除けるように海賊ギャルを攻撃しようとした寸前、黒ミニスカがメガネ娘へ回転拳銃を連射。
下段にいた自衛隊員たちもアサルトライフルを発砲し、火力を一点に集中する。
平坂エリカが激しい銃撃に曝され、周囲にも兆弾が飛び回った。教祖が倒れて右往左往していた教団員も、流れ弾に怯えながら逃げ場を求め這いつくばっている。
「んにゃぁあああ!!」
壁にまで吹っ飛ばされていた巫女侍が、高い天井付近まで飛び上がると、連続前転しながら大刀を振り下ろした。
巨大生物でも押し潰せそうな一撃が黒い大刀とぶつかり、強烈な衝撃波が隠し部屋内に広がる。
平坂エリカの足下が砕け上段が土台ごと割れるが、お構いなしに着地した巫女侍が床板を踏み砕き更に押す。
斜め下より斬り上げる大刀が床を抉り、剣風がつむじ風のように室内で吹き荒れた。
大きく飛び退り壁際にまで距離を取るメガネコピー能力者に、カティは間髪入れず追撃。
同時に踏み出そうとした平坂エリカだが、その足を何者かが掴んだ。
「つーかまえたしー」
倒れた卓の陰から這い出てきたのは、悪魔的美女だった。
三つ編み吸血鬼のマスコットアシスタント、カミーラがコピーメガネを闇の中へ引きずり込もうとする。
それを脚で振り払い、逆に魔美女を踏み付けようとする平坂エリカだが、壮絶に嗤う三つ編み吸血鬼が割と本気で首を取りに飛来して来る。
巫女侍もタイミングを合わせて突っ込み、
「反射……ドラゴンバーナー」
跳ね返されて巫女侍と吸血鬼が吹っ飛び、コピー能力者の黒い大刀から炎が噴出し周囲を薙ぎ払った。
輻射熱が室内を舐め、魔法少女、能力者、自衛隊員が大急ぎで逃げ出すが、チビッ子魔法少女刑事はこれに対抗する。
「マジカル制圧放水ー!!」
銀色のノズルから高圧力の水が噴出し炎とぶつかった。
水蒸気が噴煙のように広がり、全員の姿を飲み込んでしまう。
その雲の上を飛び越えるように動くチビッ子警視殿が、警棒を振り上げた大上段からの脳天から竹割り。
ゴガキンッ! と甲高い金属音を立て受け止められ、逆に弾き飛ばされてしまうチビッ子だったが、ふたりの距離が開いた瞬間を狙い澄まし黒ミニスカが精密射撃。
反射された弾丸がそのまま黒アリスへ飛んでくるが、これを予想していた雨音は予め防弾盾越しに射撃していた。
「ふぬぁああああ! こん下郎がぁあああ!!」
ここで、隠し部屋中央の穴からボロくなった魔王嬢が飛び出してくる。大分激オコな様子と、地下での戦いは芳しいモノではなかったのが窺えた。
「遍く静止せよ廻る星すら眠りにつく真なる夜の帳に沈め!!」
魔王ラ・フィン。翼手にねじ曲がったツノ、そして血の通うような長い黒髪の少女は、エレメンタムと呼ばれる魔法の力を行使。
両掌を勢いよく叩き合わせると、立ち込める水蒸気が一瞬で凝結した。
特に、白煙を大刀で振り払っていたメガネの少女の周囲が、映像を早送りするかのように凍り付いていく。
それが平坂エリカの全身を覆い尽くした、と思った直後、氷柱が白く染まり木っ端民に砕け散り、煌くダイヤモンドダストと化していた。
「ええいどうにも効かぬか! 理外の力には……!!」
余裕一切無しな魔王嬢は上段側に下りると、そこに転がっていた金属製のポールを拾い上げる。エレメンタムによる魔法は分が悪そうなので鈍器の現地調達だ。
焦げたり煤けたりの魔法少女たちも、再度の攻撃態勢に。
これに加えて、その他能力者と自衛隊員からも狙われ四面楚歌の状態だが、平坂エリカは一切気にした様子もなく、飽くまでも攻める姿勢を崩さなかった。
「ベイシスエルージョン……!」
メガネの少女が何かを呟くと、能力者たちの中で何かがザワザワと騒ぎはじめる。初めての感覚だ。
特殊な能力を持つ者ゆえの、その能力が歪められる強烈な違和感。
そして、不吉な波動の中心にいる平坂エリカは、あらゆる能力者には不可能な異端の能力を行使して見せた。
周囲に浮遊して出現する、能力者には多いマジックアーム系の腕。その手に持つのは、銃器や剣や槍といった武器から、鉄骨や鉄パイプやチェーンソーといった資材工具類まで。
メガネの能力者本人が腕や脚に部分的に纏う、銀色の機械鎧。
足元の影の中からは、水面から顔を覗かせるように、女物の腕や怪物の筋張った腕、鞭に似た触手が跳ね上がっては沈んでいく。
それは、あらゆる能力が混沌と交じり合った存在だった。
「これはッ……違う! 断じてアンリエッタと同じモノではない!!」
魔王嬢ラ・フィンは、怒りとも怖気とも言えない面持ちになっている。
かつての親友の力の使い方を思い返せば、目の前にいる相手の力はまるで喰らっては相手を取り込む邪神のようだと。
「コピッた能力の同時使用、ってか合体!? レベル2!!?」
「えー……? アレは、なんか違くない??」
「フシャー!!」
平坂エリカの特殊能力、他の能力の複製は既知のモノ。だがそれらを同時に、しかも混ぜて全く違う形にしているのは、少なくとも魔法少女側は誰も知らない能力だった。
今までにない危機を訴えてくる本能に、巫女侍が全身の毛を逆立てたネコのようになっている。
三つ編み吸血鬼も口調は軽いが、ただならぬ気配に思わず後退ってしまっていた。
黒ミニスカはコピー能力者の『レベル2』と予想するが、かくいう雨音も他の能力と比べて異常過ぎるのを感じている。
「抗えないのなら……ニルヴァーナに助けを求めなさい!」
「ギャンッ!!」
その異形と化したコピーメガネが、巫女侍の前に瞬間移動した。この種の能力も、制限は多いが取得した人数の多いタイプだ。外見に反映されていないだけで、これも融合している。
「チィッ!!」
咄嗟に構えようとした大刀ごとカチ上げられてしまい、カティが後方宙返り。
悲鳴を噛み殺し、黒ミニスカが回転拳銃を一瞬で変形させ対物ライフルを連射した。
ドゴゴゴンッ! と重い爆音をたて、12.7ミリ弾が砲口初速900メートル/秒という速度で叩き込まれる。
ところが、もはや弾丸が平坂エリカまで届かない。近付いたところでデタラメな方向に飛んで行ってしまった。
かと思えば教祖と同じ反射パターンも健在であり、全身に力を込めて防弾盾で喰い止めようと構えていたが、着弾と同時に張り付いてくる弾丸で黒アリスがもろに衝撃を受けてしまう。
「姉御!? クソがー!!」
海賊ギャルがロングコートの陰から出した2基の大砲を発砲。撃ち終わった八百キロの重量があるそれを、三つ編み吸血鬼が持ち上げて容赦なくブン投げる。
不自然に弾道が変わる砲弾に、浮遊する機械のマジックハンドに叩き落とされる大砲の筒。鉄の塊が板張りの床に落ち砕けて大穴があいた。
「くッ――――んなぁああ!?」
「わー!!」
すぐさま直接ブッ叩きに行く海賊ギャルだったが、その前に機械式マジックハンドの打撃が飛んできて受け止めた海賊刀ごと吹っ飛ぶ。
すぐ後ろで受け止めようとした三つ編み吸血鬼も巻き込み、木片の散乱した床を転がるハメになった。
「おのれ! カツホやユラギには悪いがもはや許さん!
万物の母より流れ出る叡智のイカヅチ! 連綿たる命の雷火に還るがいい!!!!」
地下に残したメガネ娘の友人と、三つ編みの想い人を秤にかければ、魔王嬢ラ・フィンとしても考える余地無し。
超高温の水蒸気は既に発火燃料と変らず、それが電撃を纏い雷雲の激流となって平坂エリカに襲い掛かった。
だがそれさえも、超高速サイクルで発生する不可視の衝撃により正面から打ち消されてしまう。
更に、その衝撃波は光を飲み込むほどの高密度となり、黒い波動となり遂には魔王までをも飲み込んでしまった。
「雨音さん!? 西木さんお願いします!!」
「撃てぇ!!」
空中で同じ防弾盾同士がぶつかり合い、自衛隊員たちは平坂エリカへ発砲。
それを防ぐ壁となる機械マジックハンドと、足下から持ち上がる無数の黒い触手、本人が装備する手甲に阻まれ、弾丸は弾き返されてしまう。
そして射撃が止んだと同時に、平坂エリカを中心として円形に配置されたマジックハンドが凄まじい勢い振り下ろされた。
「ちょ――――ウソッ!!?」
「退避しろぉ! 退避ぃ!!」
大刀や大剣、炎、重機のアーム、船の錨、鉄骨、それらが床全体を作業のように爆砕しはじめる。
質量による衝撃だけではなく、火焔や電撃、黒い波動なども撒き散らされ、破壊力を数十倍に引き上げていた。
チビっ子刑事に自衛隊員、残っていたものの手を出せなかった能力者たちが必死に逃げるが、成す術無く巻き込まれている。
ついでに教団員も、無慈悲に分け隔てなく破壊の嵐の中へと投げ出されていた。
嵐が過ぎ去った後、隠されたイニシエイションルーム内は原型を残していなかった。隕石落下と大地震と洪水と山火事が同時に起こったかのような有様だ。
巫女侍や三つ編み吸血鬼といったタフネス組すら、吹き飛ばされた後に追い打ちを喰らった形でノビてしまっている。
魔王は壁を突き破って飛んでいった。戻ってこない。
何人かはチビッ子魔法少女刑事同様に防弾盾を被ったまま倒れており、うめき声すら漏らさしていなかった。
アルバトロス所属、魔法少女突入部隊は壊滅状態である。
「う゛ー………ん゛ー…………」
その中で、木材に半分埋もれていた黒ミニスカが意識を取り戻した。
対物ライフルの射撃を跳ね返されてから、ワケがわからないまま暴風に巻き込まれ、気が付いたらこの状態だ。
何となく、足下から何かの突き上げを喰らって放り投げられた感覚を覚えている。
(みんなどうなった……?)
肩から先が鈍痛で痺れて動きも悪い。
どうにか身を起こして仲間の姿を晒すと、そこで目に入ってきたのは、自分のすぐ近くまで歩いてきていたメガネの能力者だった。
「クソッ――――!!?」
ドドカンッ! と条件反射で回転拳銃を連射するが、その瞬間に消えて弾丸を飛び越えた平坂エリカは、雨音の目の前に現れ両手で頭を挟み込んできた。
至近距離。
迷うまでもなく残弾全てを叩き込もうとするが、何故か指が動かない。
「やはり、ニルヴァーナの資格者は現れない……か。残念。
所詮『セルウス』プログラムは代替プランに過ぎない? 結局、全人類を使って脆弱なコマしか揃わなかったということ??」
「ちょッ……離して――――!!」
「ならもう……後はこれに期待するしかない」
何を言っているのか理解できないまま、相手の声色に諦めと決断の気配を感じた。
嫌な予感に怖気を震う雨音だが、すぐにそれどころではなくなってしまう。
「は? なに!? や……ヤダヤダヤダんぐぅううう!?」
思考が真っ二つにされ、そこから何かが捻じ込まれてくるようだった。
肉体の苦痛とは違う、痛みに似た別種の感覚。
完全に制御をなくした雨音の身体が勝手に痙攣し白目を剥く。
ヒトの限界を完全に無視したデータ容量に、端末に使われた普通の少女は弾け飛びそうになっていた。
浮遊感、五感喪失、物理現実世界に足場を無くし、高位次元から世界を俯瞰、時間の連続性を失い、今までとこれからが同時に現れる。
形象と形而上概念の境が曖昧になり、本来触れえざるメタロジカルな領域と能動する意識の情報がない混ぜに。
その中で、ヒトとしての殻の無い剥き出しの雨音の意識は、声にならない悲鳴を上げながら溶けて無くなりそうな自分という個を死に物狂いで掻き集め、
フッと、気付いたら砂漠のド真ん中にいた。
頭上には、仰ぎ見るほどに黒へと近くなる紺碧の空。
耳を叩き、身体に吹き付ける暴風となった大気の流れ。
砂丘など無い、ただひたすら彼方にまで続くフラットな砂の大地。
そこにへたり込んでいた黒髪の普通の少女、旋崎雨音は、無意識に自分の形を確かめるように両手の平でペタペタと顔に触れていた。
「コアのIDの履歴を辿って上位領域に強制アクセスしようなんざ無茶苦茶しやがら。そもそも常にルートを確立しているワケでもないっていうのに」
落ち着きがあり透き通るその声は、強風の中でも雨音の中にスルッと入ってきた。
右手へ振り向くと、砂の上を足早に歩いてくるヒトの姿が。
宝石のように赤いストレートのミドルへアに、空の色と同じ深い青の瞳、意志の強そうなキレのある美しい相貌。
どこかの学校の制服のような衣服を纏い、その上からでも分かる肉感的なスタイル。
以前にどこかで見た覚えのある、ビックリするほど綺麗な少女だった。
「ようこそ、ニルヴァーナ・イントレランスへ。
前のはイレギュラーだったけど、旋崎雨音さんとは縁があるらしい。あまり良い事じゃないけどね」
「……は?」
赤毛の少女のセリフに、物凄く怖い何かを思い出しそうになる雨音。
だが、他にも気になることを言われたし思い出さない方がいい、と感じたので、いったんそれを忘れる。
差し伸べられるその手を取って立ち上がると、失礼かとは思いながらも、相手をまじまじと見つめざるを得なかった。
「あ……アナタが、ニルヴァーナ?」
「わたし? いや、旋崎雨音さんが見ているのは、単なる端末体だね。受付にあるロボットみたいなものだよ。
ニルヴァーナもわたしを通して見ている……という感じかな」
「ここは? あたしは、どうなったの??」
「『キュリオサイト・イントレランス』の端末体が無茶やって、旋崎雨音さんの『メタロジカル情報コア』が吹っ飛びかけた……。命とか、存在とか、そういうのをひっくるめた、全て。
だからニルヴァーナの領域に一時的に保護している。
ここは、旋崎雨音さんのエミュレートの為に構築した仮想の物理現実世界。人間はメタロジカルデータの状態で思考とかコミュニケーションが出来るようにはなっていないからね。
話をするにはこういう空間と時間のフィールドが必要になる」
赤毛の少女が目線で示した先には、いつの間にかテーブルとイスのセットが置かれていた。砂地の上に直接だが、傾いたり沈み込んだりしている様子はない。
薦められるままに雨音がそこに座ると、赤毛の少女がどこからともなく、焼き肉の乗った皿を出してきた。
「は!?」
「ハハッ……冗談。最初にコンポーネントをオーバーライドした時に、焼き肉を堪能したってログがあったから、ついね。ごめんなさい」
思わず目ん玉ひんむいて声を裏返した雨音に、イタズラがバレた子供のように微苦笑する赤毛である。
こいつこの状況で冗談とか言うのか、と雨音の目は限りなく胡散臭いモノを見るモノになった。
あたしらはこんなのに振り回されていたのか。ニルヴァーナ本人ではないと言うが。
「ていうか……あたしが最初に能力貰った時も、あなたが……? あの、能力の内容を決める面接みたいなのを??」
「わたしじゃないけど……知ってる。ニルヴァーナと情報を共有しているから。
と言うより、わたし自身が旋崎雨音さんと話をする為に、一時的に過去の資格者の情報から再現して作り出された端末体だから」
誰かに指示するように赤毛娘が指を動かすと、テーブル上の焼き肉皿がティーカップとケーキスタンドに代わった。
ニルヴァーナ端末体という少女も、雨音のはす向かいの席に着き、テーブルを指で叩きカップを呼び寄せる。
生々しい、まるっきり普通の人間と変わらなく見えた。
漠然と、神や悪魔のような超常のモノ、を想像していた雨音は、軽く混乱して何を言うべきか分からないのでとりあえず紅茶飲む。美味しい。
今の状況、元の世界への帰還、ニルヴァーナ・イントレランスとは何なのか、能力者を無数に生み出した理由と目的、など聞きたいことはいくらでもあった。
どれから聞くべきなのか、何と言って切り出すか。
考えが纏まらないでいた慎重派女子高生だったが、先に相手が口を開いたので、その辺の懊悩は丸ごと無駄になった。
「キュリオサイトの端末体……こうしてわたしが旋崎雨音さんと接続したのは、ある意味で相手の思惑通りな状況である、ワケ、だ……。
もっとも、このままニルヴァーナの本体までアクセスなんて出来るはずもないがね。パワーが足りなさ過ぎるし。
あるいは、この状況そのものが相手の狙い……か?」
「あの……さっきも出た『きゅりおさいとの端末体』? っていうのは? コピー能力者の平坂エリカ、さんのこと? ニルヴァーナとは違うの??」
「全く別物。キュリオサイト・イントレランスは、ニルヴァーナとは別の『イントレランス』。
そもそも全ての問題は、このキュリオサイトが地球の存在するブレーンフィールドに手を突っ込もうとしたのが発端になる。
わたしの上、ニルヴァーナはこれに対抗して、地球人類自身に抵抗力を持たせて世界を守らせる『セルウス・プログラム』を発動し、メタロジカル・スクリプトに自力で干渉できる能力者を大量に発生させたワケだ」
「それが……それが全ての原因? あたしたち能力者が生まれた理由!?」
「そう。イントレランスという、上位領域に棲む知性体からの浸食と戦う為に人類に配備されたセンチネル。キミたちが能力者と呼ぶ存在が、それだ。
プライマターの侵攻、別のブレーンフィールドとの接続……人類もそろそろ、何が起こっているのかを知っていい時期だろうね」
知りたい部分の中でもかなり大きな疑問の答えが飛び出し、却って錯乱しそうになる雨音。
ニルヴァーナのような意味不明の存在が他にもいて、しかもメガネの能力者はそちら側とは。
挙句、事のスケールが宇宙以上だわ人類の存続にもかかわるわ、と。
それらの事情を明かしてくれるのはいいのだが、それなら自分ひとりに対してだけではなく先進7ヶ国首脳会議とかでやってくれんかな、と思いいまいち集中できない雨音だった。
感想、評価、レビュー、Wave-01を参照していただけると色々単語が出てくるのではないかなと愚考する次第であります。




