0054:起爆装置とタイマーが動いている爆弾を列に並ばせる社会システム的構造の問題
魔法少女近況:う魔娘、ゲート前焦れ込み過ぎ。
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昨年5月、地球人類の1割近くがニルヴァーナ・イントレランスを名乗る超常の存在と接触し、そのほぼ全てが物理法則を超越した特殊能力を得る事となった。
それまでの人類の叡智、文明、研究、歴史、積み重ねた全てを鼻で笑うような能力を持つ者が次々に出現し、人類社会は今現在も対処療法的に、辛うじて機能を維持している。
一方で能力者は、軍事や経済、物流、安全保障、食糧生産や工業生産において圧倒的な利益を齎す存在でもあった。
国家や企業がこれを抱え込もうとするのは当然の動きであるが、能力者にならなかった人類の9割の中にも、人智を超える特別な能力を求める者が少なくなかった。
特殊能力者の発生以来、能力者と能力の研究は世界各国で進められている。
そんな各機関で共通する研究テーマのひとつが、『ニルヴァーナ・イントレランス』とは何か、というモノだ。
能力者とは、異世界から地球と世界を守る防人である。
そのような教義を掲げるニルヴァーナ教団も、その名を掲げて活動を続けていた。
なお、『ニルヴァーナ教』という組織自体は、10年以上前からこの世界に存在しているとの事である。
◇
NGO『アルバトロス』と、繋がりのできた能力者や関係者を招いて行われていた打ち上げの会。
そこで、異世界の銀髪姫エアリーが誘拐されるという事態が発生した。
間髪入れずに奪還に走る、アルバトロスの代表にして黒ミニスカ魔法少女、旋崎雨音。
だが、そこに立ち塞がったのが、これまでも度々魔法少女の前に立ちふさがったメガネのコピー能力者、平坂エリカだ。
目の前でエアリーを浚われた黒アリスは、冷静さをかなぐり捨てて追撃に移る。
当時警備にあたり、また雨音に近い警察関係者は、既に事態をある程度掌握していた。
犯行グループの主犯と見られる、ニルヴァーナ教団。
魔法少女の行き先は、東京都内の高級住宅街、麻布十番である。
◇
六月第3週の土曜日。
午後6時05分。
東京都麻布十番、ニルヴァーナ教団本部。
緑豊かな公園のような敷地に、美術館にも似た3階建ての平たい建物があった。
その周辺、住宅街までをも巻き込み封鎖地域が設定され、近隣の住民が大勢避難させられている。
現場は機動隊から制服警官、刑事までもが押し込まれ、厳戒態勢だ。目立たないところにこっそり自衛隊と東西の米軍と政府の役人と情報機関の職員までいたりする。
教団の敷地内を完全に包囲し、これを睨む警察は気炎を上げていた。
『SAT狙撃班配置完了。教団本部の全周監視中』
『微かな動きでも全て報告を上げるように! どんな些細なことでもだ!!』
『電力会社来ました。地下電源経路の確保中です』
『第四機、六機現着、特科は5分後に現着予定、応援の神奈川第一機は首都高を移動中』
『特能室が待機所を設置。三条警視は待機中です』
『三条警視はすぐに本庁本部へ報告をお願いします』
銀色の金属盾を持った重装備の機動隊員が集団で駆け足していく。
上空にはけたたましいローター音を響かせる警察のヘリコプター。地上監視だけではなく、マスコミのヘリが来るのを防ぐ役目もあるらしい。
最先端かつ実験的に導入されたドローン部隊まで、全力投入の警視庁と日本の警察機構だ。
それも当然であった。
要人が大勢いる会場の警備を破られた時点で、警察の面子は完全に潰れているのである。
しかも、エアリー王女を目の前で誘拐され、警備に当たっていた警官隊は総力戦で破られていた。
この上、エアリー王女の殺傷という事態にまで至れば、事は日本の警察の信用が地に堕ちるだけではすまされない。
異世界との国交、これを主導する日本の立場、異世界との関係性の見直しに、今後の世界経済の予定までがご破算になり、下手をすると大恐慌までありえる、と。
日本という国が傾く、そこまで危惧される非常事態であった。
一方で、ニルヴァーナ教団のある施設は、沈黙したままなのであるが。
警視庁はこの間も電話で本部内に呼びかけを行っていたが、全く反応が無いので交渉すら始まらない。
相手からの要求も無い。
もっとも、エアリーの身柄そのものが目的なら、要求など出ようはずもないだろう。
既に目当ての者は手に入れているのだから。
レインボーブリッジの直下、東京湾芝浦ふ頭から上陸したエアリー誘拐グループは、その後の警察の追跡も振り切り、予想通り本部へと逃げ込んだのが確認されていた。
『SATが撤収! 西側駐車場所定警備の警官は警戒して待機!!』
『西側監視より本部、狙撃班は発砲待機中。命令を待ちます』
『SATが出てくるぞ! 西側の人員は待機! 勝手に動くな!!』
『SATに負傷者多数とのこと! 医療班の待機を!!』
『西側監視より本部! 駐車場のシャッターが――――!』
警察の無線通信が俄かに騒がしくなる。
警察とて、今までただ事態を傍観していたワケではない。なにせ日本の今後100年の名誉がかかっているのだ。
交渉を求める一方で、特殊強襲部隊『SAT』を施設内に潜入させ、偵察、情報収集、そして可能であればエアリー王女奪還を指示していた。
肩を貸し合い、脚を引きずる様にして西側地下駐車場出入り口から出てきた集団を見るに、首尾は良くなかった様だが。
「SAT撤収! 西側駐車場に動きありません!!」
「東側ルフラン監視、南側ゴールドコート監視、北側音楽院監視、動きありません」
「電話にも相変わらずです。ニルヴァーナ教側に応答無しです」
教団の敷地から、それに警察の前線指揮所からも少し離れた有料駐車場。
そこに建てられた警察の天幕の下に、警視庁特殊能力者捜査室の連絡本部が置かれていた。
文字通り、警視庁内に設置された、特殊能力者に関係する事件を専門に捜査する部署である。
その性質上、対能力者へ対処するのを想定して、能力者の警察官も複数人加えている。
だが、千差万別の能力に対し定石のような対処法など確立のしようもなく、今は能力者案件に対して、各部署に応援を送る予備戦力のような存在になっていた。
それはそれで非常に有用とされているのだが。
なお、責任者の三条京警視は最重要案件に専従しており、平時は特能室もこれをバックアップしている。
その警視殿、メガネにボブカット、上質なビジネススーツを着た若きエリートキャリアは、部下からの報告に難しい顔をしていた。
現在は、警視庁の上層部主導でニルヴァーナ教団によるエアリー王女誘拐事件に対処しており、三条警視ら特能室には出番が無い。
とはいえ、今は予備戦力的な扱いであっても、名目上は能力者犯罪の専門部署。
声がかかるかもしれない、という事で、こうして前線指揮所から少し離れた所に臨時連絡所など構えているのである。
それはいいとして、問題は天幕の片隅で小さくなって座り込みながら殺気の塊になっている黒ミニスカ魔法少女にあった。
「京さんもういい? まだ? まだ行っちゃダメ??」
「も、もうちょっと待って…………。本部に次の方針を確認するから」
恐る恐る振り返ると、もう何度目かの同じセリフが飛んでくる。
回転拳銃を握り締め、膝を抱えながらも目は爛々と輝いている黒アリス。医療テントでジッとしてなどいられず、手当を受けた姿のままで手負いの獣状態であった。
そこの一画だけ影が濃く見えるのは、三条京の気のせいなのか。
日本の治安維持の主役は警察である。故に、まずは警察に任せるべきだという京やSP警官の意見に、黒アリスは素直に頷いていた。
警察側の人間として当然の話をした三条警視であったが、その内心はヒヤヒヤしていたというのが実情である。
なにせ、黒ミニスカ魔法少女が完全にブチ切れていたので。
横浜のシーパライゾアイランドからここまでの道すがら、旋崎雨音はニルヴァーナ教団の事で説明を受けていた。
今まで、公的な場所に幾度となく教団の関係者が不法侵入していたらしきこと。
学校でのエアリー襲撃を実行した生徒や 医師を狙った襲撃者も教団の人間であったこと。
公安部などが組織を内偵中であり、雨音に動いてほしくなかったので情報を伏せていたこと。
これらを明かした上で、警察が手を打ち尽くすまでは、黒アリスたちに待機しているよう言ったのだ。
それを、無言で頷き飲み込んだ後の、今の状態である。
雨音が限界間近なのは、誰が見ても明らかだ。
安全装置の外れた核弾頭、という以上に表現する言葉がない。
魔法少女『黒アリス』の性格を考えれば、今この瞬間に第4次世界大戦をはじめないだけ、よく我慢していると言えるだろう。
雨音だって、三条警視殿やSP警官のイケおじ、大平警部補が何を思って自分に教団の関与を隠していたかくらいは分かっているつもりだ。
でも正直、「まだか」とは思う。
それだけだ。
それ以上を考えてしまうと、火が付いて一瞬たりとも我慢出来なくなる、と雨音は予感していた。
特殊強襲部隊による内部の偵察が失敗して間も無く、警視庁は次の手段を講じる。
主に能力者の警察官で編成される、完全非公式の特別対応班の投入だ。
「ウチは刑事局だから主に捜査を目的としているけど、あちらは警備局だからより実戦的と言えるわね。同じ刑事局でも組織犯罪対策部の方でも、能力者対応の専従班があるんだけど」
と、警察内部の能力者対応事情を教えてくれる京警視。
なにやら複雑で、そういうの一本化した方がいいんじゃないの? と思わなくもない黒ミニスカ以外の魔法少女だったが、そこは大人の事情や手探り状態とかの事情があるのだろう、と勝手に解釈しておいた。
無線通信の中でも、警備局能力者班(仮)の名前が多く飛び交い始める。
雨音のいる連絡本部の位置からは分からないが、どうやらSAT以上に重装備な10人前後から成る集団のようだ。
警察が能力者による攻性の部隊を作るとかまだ公にできないので、表向きは単なる機動隊員ということになっているようだが。
◇
警察車両の投光器が、教団の敷地内をハイコントラストに照らし出す。
エアリー誘拐から2時間以上が経過しつつあるが、状況が好転しないまま、午後7時00分。
警備局の特殊能力者班も、教団本部内で能力者に遭遇した末に撤退したとの事だった。
電話などを用いた交渉にも、相変わらず応じる素振りすら無い。
2度に渡る警察の強攻策にも反応が無い。
以って、警視庁は実質的に打つ手を無くし、魔法少女の黒アリスを押し留めておく理由もなくなってしまった。
「よし……行こうか、ジェラさん」
「はいッ」
警備局の能力者部隊が撤収し、次善策を協議中。
そんな警察無線が入ったところで、闇の中に座り込んでいた黒ミニスカが立ち上がる。
同じく、待ちに待って焦りと怒りを溜め込んでいたエアリーの騎士、ジェラノアも覇気を漲らせてそれに続いた。
我慢していたのは雨音だけではない。当然、エアリーを守らなければならなかった麗人騎士などは、いの一番に突っ込んで行きたかったはずだ。
静かなふたりだが、揃って溜め込んだ熱が陽炎を上げているようにも見えてしまう。
そんな重苦しさに、無言で控えていたその他魔法少女勢も、手に手に得物を持ち直して黒ミニスカの後に付いて行こうとしていた。
「ち、ちょっと待って雨音さん――――!!」
「少し待て、黒衣」
いよいよ第4次大戦がはじまってしまうのか。いざ始めたらこの娘一切手加減とかしないぞ。麻布十番が紛争地域になる。
そんな予感に、どうにか冷静になってもらいたく声をかける京警視だったが、ちょうど同じタイミングで自衛隊の人間が複数入ってきた。
その先頭にいたのが、常に緊張感漲る表情を崩さない常在戦場自衛官、釘山武三等陸佐だ。
「三佐!」
「よく今まで堪えていた、というところか…………。黒衣、教団施設に突入するとして、何か考えは」
「まず建物を上の階から木っ端みじんにして、遮蔽物を無くした上で周囲から――――」
「待ちなさい」
本気の真顔で言う黒ミニスカJKに、珍しく戸惑うような声で待ったをかける三佐殿。
待たされていた間、十二分に考えを纏めたのだとは思う。
その結果がコレとは。
要するに銃と兵器の魔法少女の非殺傷特性をフル活用した作戦なのだろうが、怪我人や周辺被害といったそれ以外の一切を考慮しないあたり、かなり頭に血が上っていた。
そして、他の魔法少女、能力者も、それに全く反対しようとしない。
ここにいるのは、今この瞬間限界までギリギリと引き絞られた、エアリー救出というただひとつの目的の為に機能する魔法少女戦闘群である。
「ここから先はエアリーを助けるまで一切の交渉も足踏みも回り道も何もしない! 時間優先! 障害は全て排除! デストロイゼムォー!!」
「うぉおおおおおおお!」
「やったれぇええええええ!!」
「皆殺しじゃー!」
「たたっ潰せー!!」
「戦が始まる!!」
「二次会じゃー」
「パーティーするわよ!!」
リボルバーを振り上げる黒ミニスカに、期を悟り集まっていた能力者達も、武器やら魔法の道具やらを掲げ鬨の声を上げた。警察車両や近隣の建物のガラス窓が揺れる程の気合である。
魔法少女、アルバトロス、それになんとなくここまで同行してしまった能力者の中で血の気の多い、突撃参加希望者の約50人、臨戦体制であった。
天幕の中心、何台もパソコンが置かれたそこに座っている三条京警視を一瞥する釘山三佐。
警視のお姉さんは、沈痛な面持ちで首を横に振っていた。もう限界です、という意味である。
勝手に突撃陣形を作りはじめるロボやら騎馬やらコスプレヒーローやら能力者どもを見るに、三佐も同意見であった。
こうなると思われたので、唯一黒アリスを抑えられるであろう釘山三佐が送り込まれたワケでもあるが。
「黒衣……施設内には宗教団体に強引に入会させられた能力者もいると思われる。また無差別攻撃で現場が混乱すれば、エアリー殿下の特定も難しくなるだろう。
この期に及んで強攻策を取るなとは言わんが、ギリギリまで慎重な行動を行い状況をコントロールする可能性を担保するべきだ」
この三佐のもっともな意見に、沈黙のまま炉心を臨界出力まで上げていた黒ミニスカの教え子が、ちょっとスン……となった。政府の采配は大当たりである。
とはいえ三佐も、雨音を抑える為だけに来たワケではない。
「現実的に、遺憾ながら政府として打てる手は無くなった。能力者を編成に加えた特殊部隊も、そもそもがまだ実働できる段階にはない。言いわけのようになってしまうが。
黒衣が直接救出に動くというなら、政府、自衛隊、それに警視庁としてはこれをバックアップする方針だ。飽くまでも非公式に、その上で政府としてアルバトロスに協力を求めての事、という形式になる」
話が具体性を帯びてくると、黒アリスとジェラノア、それに仲間の魔法少女へと緊張感が伝播していき、自然と皆が無言で三佐の話を聞くようになった。
これが実質的な突入前ブリーフィングなのだろうと、実戦経験者なら誰もが理解する。
「インドアでの対テロ戦のプロも必要だろう。一時的に警察官として出向した自衛隊員を付ける。諸君らは建物へ潜入しての行動は素人だろう。可能な限りアドバイザーとして意見を求めるように」
「警察官として……ですか? え? 今回の為に臨時に移籍を? 有り難いですけど、そういうのっていいんですかね」
「職権の一貫性という点では、あまりよくない。このような非常事態でない限りは、言い訳の効かない手段だろう」
三佐は教団施設突入に際し、屋内における対テロ作戦の訓練を積んだ警察官を付けてくれるという。警視庁ではなく自衛隊所属の三佐がそれを説明するのは、その警察官の中身が自衛隊員であるからだ。
これは、自衛隊員がこのような状況下でも、法律的に活動が許されない為である。
それ故の、自衛隊員による一日警察官というキャンペーンであるが、法的に問題なくても自衛隊員が裏技を使えば自由にその武力を行使できる、と国民に思われるのは、信用と信頼の上でよろしくないだろう。
でも非常事態といえばこれ以上の非常事態もなかなかないしね、と雨音も納得した。
「向こうは当然ながら攻撃されるのを想定している。しかもこちらは教団側の情報をほとんど持っていない。保有能力も大半は不明だ。それでも突入せざるを得ない以上は、敵戦力を可能な限り分散させるのが必須となるだろう。
本命となる黒衣の班以外に、陽動と支援を行う班を編成するべきだな。突入班が内部の情報を得ながら外と連携する。特殊能力者相手ではそれすら確実ではないが、何を置いても全力で突入班を援護するほかないだろう。
無論、警察と自衛隊も同様に支援する」
釘山三佐のアドバイスにより、機動隊の装備を着けた自衛官を含めて、黒ミニスカたち能力者は即席に部隊を編成。
魔法少女を中心に、インドア戦に向いた能力者を突入救出班とし、派手な能力や高い機動力を持つ能力者を外部からの攻撃に回す事となった。
大騒ぎになること確定なので、同時並行して警察がマスコミを遠ざけるのに必死だったとか。
「黒衣……無茶をせず、危険と判断したら戻ることを最優先しなさい。自分で分かっているとは思うが、今のキミは冷静とは言えない。
それでも行かせるのは、この国で誰よりも実戦経験を積んだ能力者だからだ。
あの東京と、富士の訓練センター、異世界での作戦、それを戦い抜いたキミの力は本物だ。
だから、黒衣のその能力ではない、戦場でも決して諦めず最善を模索し続けたキミの力を信じよう」
いつになく感情を滲ませる師匠のセリフに、ほんの少し落ち着きを取り戻す黒ミニスカの弟子。
三佐の言う通り、今の雨音は自分がパニクっているという自覚があった。
改めて周囲を見ると、アルバトロスに所属する能力者で、自ら希望して参加している者の姿が多数見られる。
皆、基本的に戦闘は素人だ。このような対能力者戦に連れて行くべきではないと、雨音にも分かっている。
だが、能力者達がアルバトロスの一員としてやる気になっており、また雨音も付いて来ないように皆を説得するような余裕を無くしていた。
正直、エアリーを助ける為の戦力になれば、とさえ思ってしまっている。
これで怪我人や死人が出たら、とも想像してしまうが、それでも今はエアリーを無事に助け出す事が何より優先された。
様々な悪い考えが浮かび上がり、パニックに飲まれて思考を放棄してしまいそうになるが、雨音は無理やりこれを抑え込む。
そして、最後に大きく深呼吸。
「――――三佐、行ってきます! ニルヴァーナ教団攻略戦に参加する能力者は出るよー! アルバトロス前進!!」
「いっくネー!」
「本部! 本部! アルバトロスが教団敷地内に入ります! アルバトロスの各班が移動中!!」
「黒衣さん、西側の植生の濃い方から接近してください。投光器を落とします」
「本部、東側の誘導お願いします」
「車両の陰を移動するぞ! バスを動かしてくれ!!」
黒ミニスカが先陣切って歩き出すと、能力者と警官の約60人が一斉にこれに続いた。
急いで道を空ける、現場警備の警察官や警察車両。
決戦を前に、突入チームと陽動チームはテンションが高いながら、無駄口を叩かず無言のまま大股で歩いて行く。
魔法少女とアルバトロスの動きに合わせて、敷地を囲む警官隊も教団側の注意を引くように動きを活発化させていた。
何台もの警察車両の投光器で照らし出されるモダンな3階建て建築物が、木々の向こうに浮かび上がってるように見える。
敷地の周囲が騒がしくなっているにもかかわらず、一見して動きは全く無い。
そんなだんまりの教団本部を、銃と兵器の魔法少女が振り下ろす、155ミリ砲弾のノックが揺るがした。
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