0031:早朝からの材料集めと下ごしらえそしてハイリスクな課金の是非
魔法少女近況:9億円溶かすとか怖いからやらないでおきます
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五月第3週の月曜日。
午前8時35分。
神奈川県室盛市、某市立高等学校。
ゴールデンウィーク明けのことである。
皆と同じように久々の登校となった冷淡系女子高生、旋崎雨音は、初っ端からおかしなモノを目の当たりにすることとなった。
壁や窓を手探りするように恐る恐る触れている男子と、少しはなれたところでそれを見下ろしている高身長の一年生男子。
それに、所在なさげにしながら身を寄せ合う、女子生徒ふたりの姿である。
「お、おはようございます大吾くん。どういう状況か聞いてもいいですか?」
「っス……おはようございます旋崎先輩。嫌がる女子たちの間にしつこく入り込もうとする男がいたんで、ヨソに行ってもらいました」
「ちょ……! なにこれ? なんなのこれ!? え!? VRかなにか!!?」
ことが風紀委員としてまっとうな執行なのか、単なる私闘なのか、まずそこのところを確認せねばならなかった。
登校時刻の昇降口前廊下。そんなところで、朝一から見上げるような巨漢と相対しなければならない我、つまり雨音さん。
相変わらずなプレッシャーの風紀委員一年男子を前に、副委員長は大分腰が引けており、ご主人さまの腕に抱き付く金髪の忠犬が唸り声を上げていた。
とはいえ、話を聞いた限り風紀委員の活動の範疇のようだし、暴力を用いたワケでもなさそう。
未だ詳細は聞けていないのだが、なかなか強力そうな能力である。
また女子生徒たちに話を聞いても、迷惑を被っていたのは事実のようであった。
「えー……うんまぁ分かりました、問題無いと職員室には報告しておきましょう。あとあっちのヒトも解放してあげて」
巨漢風紀委員に能力を解除させ、雨音は改めて女子ふたりを困らせていたという男子にも注意勧告。
それほど悪意のある相手でもなかったので、こちらも個人名など職員室に報告しないこととした。
「あの……ありがとうございます、わたし達困るって何度言っても『なんでなんで?』って全然聞いてくれなくて…………」
「助けてくれなかったらあたしがブッ飛ばす寸前だったよ! でもありがと! キミ超デカくない? 一年生でしょ? カッコいいじゃん!」
一方、風紀委員会のリーゼント巨人にお礼を言う、おっとりした長い黒髪の女子と、ミドルヘアの快活な女子生徒。
それに対し、『気にしないでください』と短く答えるクールな男子に、親友らしき女子ふたりは熱い視線を送るのである。
だが、『ガーディアン』大吾尊治の切なる願いは、どうか自分なんか見ていないでふたりの友情を変らず育んで欲しいという、ただ一点であった。
「大吾くん、月曜スタートからお疲れさま。暇な時でいいから、今回の報告書よろしくね?」
「っス……今日の帰り前に委員会室に出しておきます」
「急がなくてもいいけど……確かに忘れないウチに書いてもらったほうがいいかもね。それじゃまた」
巨体の一年男子に別れを告げて教室に向かう旋崎副委員長。
かと思えば、何故かご主人様に付いて行かず、金髪の子犬は小さな唸りを上げ続けていた。
どうやら雨音の好感度ゲージ上昇を察知したらしく、カティはこの新入りを敵として認識したのである。
もっともそれは、ゲージの読み違えでしかなかったのだが。
「カティーナ先輩…………旋崎先輩と出来るだけ一緒にいてあげてください。貴重で重要な立場のヒトですから」
「ッ……!? そんなんアタり前デスッ!!」
キャンキャン吼える小型犬と、茫洋とそれを見つめる大型犬な状態。
それが、大型犬の一声で小型犬はご主人様へとダッシュし、
「ぐッ!?」
背後から腰目がけて、タックル気味に飛びついた。
ドゴォッ! と、朝っぱらから生徒の面前でバックアタックを喰らい、変な声出る副委員長さま。ちょっとグキっていったぞ。
当然、すぐさま反撃に出たが。
「いきなり何してくれてんの? この娘は。アンタたちの攻撃は、あたしのセンサーにも引っかからないし。天敵かよ」
「ニャァアアアア!? ちちちちょっとこうドロドロしたドクセン欲みたいなのが出て、なんだかタマらんくなったデスよー! あ゛!? ソコはだめネー!!!!」
カティは雨音に脳天グリグリされた。お腹の具合に時限爆弾が。
全く自業自得な悲鳴を上げる残念金髪美少女に、マゾにはたまらない冷酷な目でそれを見下ろす淡白娘。
寡黙な巨漢の男子は、その光景に胸を熱くしていた
そんなクール男子の穏やかな微笑を見て、周囲の女子も胸も熱くさせていた。
複数の生徒にとり、今日はイイ日になりそうだ、とか。
◇
ゴールデンウィークはお仕事で潰した魔法少女である。
東京都内から出られないので、やたら高いホテルで連休気分だけは味わってやったわ。
でも終盤はおウチが恋しくなってしまう、そんな旋崎雨音であった。
本格化する地球と異世界の交流を目前として持ち上がった、ポータル周辺の領土、クローディース領の整備開発計画。
正直、規模が大きくなる両世界の国交にポータル選手村だけでは対応し切れない恐れがあったので、広大なクローディース領が使えるのは緩衝材としても都合がよく、早々にインフラや必要な設備を整えたい、という要望が各方面から出ていた。好き勝手言いやがって、という気がせんでもない。
また、領地自体が『死の濁流』怪物群により大きく疲弊していたこともあり、これの復興も合わせてやってしまいたい、というのが領主となった雨音の考えでもある。
『女神クローの領地』という名前も、何とか闇に葬らねばなるまいと密かに画策していたが。
そんな理由で領主よりやる気を出した霞ヶ関官僚により、開発計画の大枠が出来上がったところで雨音は解放された。
連休明けは学校が始まるので、とりあえずの散会である。
選手村ポータル基地に店舗を置きたいテナントの評価やら審査基準の件やらもあり、まだまだ領主様の仕事は尽きないらしい。
ナラキア各国の合同葬儀で国王様方と会った際に、色々と地球産の物資を送ると約束したこともあり、大量に買い物するような用事もあった。
同時に、国家事業ほど大げさじゃない魔法少女としての予定もあり、地球側で売る異世界の物も仕入れておきたい。
これに関しては、三つ編み娘あたりが怪しい物を密輸入しないように目も光らせねばと思う。
◇
朝から一仕事片付け雨音が教室に行くと、先に来ていた異世界王族組と三つ編み少女が、他の生徒と雑談の最中だった。
馴染んできているようで何よりだね、と安心しながら席に着いたところ、どうやら待ち構えていたらしく、雨音もそれに巻き込まれる。
「旋崎さん!? 旋崎さんの土地でツアーやるって本当!!?」
「抽選っていつ始まるの!?」
「関係者チケットとかある!!?」
「なに? なにごと? どういうこと??」
勢い込んでくるクラスメイトの女子たちに、目を白黒させる冷淡少女。
どうも話題の中心は、間もなくはじまると専らのウワサな、一般人による異世界旅行のことらしい。
問題は、関係者ド真ん中な雨音が、そんな話を一度も聞いたことがないという点だが。
「その手の話って前からちょくちょく出てくるよねー。まだ全然そういう段階じゃないんだけどね」
「えー、じゃホントに異世界ツアーってただのウワサなのー?」
「レナさまの国のお城見てみたかった……」
「いや仮にあたしの管理地のツアーがあったとしても、レアーナさまのお国は全く別の国だからね?」
北原桜花が間延びした声で言い、ウワサに振り回された女子たちが肩を落してションボリする。
異世界事情最前線にいる魔法少女に否定されては、返す言葉も無いだろう。
公開していない雨音の領地の件がクラスメイトにまで知られているのは、この際いいとして。
一般市民でも異世界に行けるらしい、というウワサ話は、異世界の存在が公になって以来、消えることなく上がり続ける話題でもある。
その内容に具体性が伴うのも、世論の期待の高さを示すモノと考えられるだろう。
また、ポータルが存在する土地を日本政府(正確にはひとりの少女)が管理しているという点も、ウワサに現実味を匂わせる要因となっているようだ。
「俺の国なら構わんぞ! 何人でも来い存分に持て成してやる!!」
「マジっスかアニキ!?」
「ナイザルアニキ、さすがキング!」
「いやナイザルぱいせんは王様じゃなくて王子さまな」
そんな考察をする淡白女子の一方で、山男の王子さまは既にクラスの男子を母国に招くつもりになっていた。男子たちも本気にしたら現地でえらい目に遭うだろうが。
では実際どうなのかというと、企業人など一般人に限りなく近い層の異世界渡航は、秒読み段階ではある。
クローディース領の整備状況は別にして、民間の企業や団体の人間がナラキア地方全域の調査に来るのは、『テラーブラスト』以前からの懸案事項ではあった。
それ以外の地球人類が観光などで訪れるのは、相当先になると思われる。
とはいえ、異世界に興味を持たせ注目を集めるのも、地球の国家の動きを監視させる上で必要ではあるのだが。
「電気とか水道はごくごく一部しか通ってないし、文化や習慣とかの注意事項も把握しきれてないし……。お客様気分のヒト達を向こうに連れて行って迷惑かけられんしなぁ」
「探検隊みたいな気合の入ったヒト達ならいいんだろうけどねー。…………ハッ!? 冒険者!」
容易に想定される問題に溜息を吐く冷淡女子に、なにやら思い出して力が篭る三つ編み。
いずれは観光も、というのは観光業界やそこに尻を叩かれた政治家や観光庁から希望が出ているが、観光業なんてモノは先方に受け入れる意志がなければ成り立たないだろう。
その土地の住民の生活圏に踏み入るのだ。持て成される客の方にも、相応の礼節を求めたいところ。
同じ地球人類として、雨音はまだその辺が不安だった。
先のナラキア共同体視察団では、全員が仕事であるという意識を持っていたので、一部を除いて無礼なマネはしなかったが。
「いっそウチの管理地で一から作った方がいいかもね。観光業となるとプロを呼ぶから、結局地球のリゾートホテルとかと変わらないような気もするけど…………。まぁそれはいいや」
「ホテルなら選手村の中にもうないデスか?」
「あそこじゃホントにそこらのビジネスホテルと同じだし」
怪生物群を片付けてようやく国交がはじまるかと思いきや、今度は溜まっていた諸用件が雪崩を打ってくるという。
ゴールデンウイーク中の会議は終わったが、次は選手村と領地の整備で現地と往復し、ナラキア地方を巡る調査団のエスコートも準備しなければならない。
出来れば併せて裏アルバトロス計画を進めて安全性を高め、雨音の仲間内でやろうとしているアンテナショップの方も、そろそろ具体的に形にしたいところ。
(それにフィンさまの国の方も、そろそろ行っておきたいんだけど……。てかあのヒトそこのところ忘れてやせんかな?)
またアイランドプランに直接関わらないところとして、東方大陸の雄、南半分を支配する統治者にして魔王ラ・フィンからも、ザピロス国への招聘を受けているのだが、
「99連ガチャでUSSR一回も出んっておかしいじゃろー! こんなことではいつまでもラインハイム出ずにフランクフルトまでチェインせぬわ!!」
「フィンさまー課金だよー、課金しかないよー」
「おいでーおいでよー」
「ふぬぅ!? 我は屈せぬぞ!!」
スマホのソシャゲに血道を上げ、今まさに妖しい踊りを踊るクラスの女子から破滅への道に誘われている魔王嬢さま。プラスよく分からず一緒に踊っている妖精少女。
その辺の話を覚えているのか、甚だ疑問な雨音さんであった。
◇
西方大陸中央の広大な領域を占める、魔導大国ジアフォージ。
搭都『カプティウス』は、その首都となる。
あらゆる場所に魔石というエネルギー資源を用いることで、ジアフォージの大都市圏では地球社会に迫る発展を見せていた。
幾つも聳える尖塔も、地球の都会にある高層ビル並み。
その多くがジアフォージに君臨する魔導師の個人所有であり、やはり魔力で動くエレベーターのような昇降用の装置が備え付けられていた。
ある塔の最上階に近い部屋では、大きく腹の出た金髪の男が酒のグラスを傾けている。
穏やかな笑みからはゆとりある身分が、仕立ての良い衣服に身に着けた無数の宝飾物からは財力が窺えた。
対面のソファに座るのは、痩せ細った面長の老人だ。
白地に金の刺繍の聖衣、紫の帯を纏い、小さな目からは何の感情も窺えない。
塔の主人、魔導師卿ローディックと、神聖国アークティラのブーリアン聖爵である。
「やはり果実酒には、アークティラに一日の長がありますね。血のように赤く、歴史を感じさせる深い味わい……。あなた方の歩んで来た道そのモノだ」
ローディックはグラスを光に透かし、アークティラ特産品への賛辞に含みを持たせて言う。
ブーリアン老人はそれを聞いているのかいないのか、絵画か彫像のように反応を示さなかった。
実際にはしっかり聞いているし、ローディックが何のことを言っているのかも当然分かっていただろうが。
ある意味では、掣肘し主導権を握ろうなどという不快な会話に付き合う気など無い、という意思表明ではある。
これ以上は無駄だと判断し、グラスの中で果実酒を転がしながら、ローディックも切り口を変えることとした。
「かつてあなた方は神の導きにより勇者を見出し、中央大陸への神征を行う旗手となりました。しかしその神聖なる遠征は、魔王の卑劣な罠により勇者が失われたことで、道半ばにして頓挫してしまった…………と。
そして今、魔王は再び我らの前に現れ、この西方大陸を支配せんと蠢動をはじめています。
彼の者の企みに我らが気付いた以上、これを看過することはありえないのです」
字面こそ正義と使命感に満ちたモノだったが、そのセリフはどこか芝居染みており、真実味にも薄かった。
事実、それは予定調和に物事を進める為の、冒頭挨拶のようなモノに過ぎないとお互いに分かっている。
つまり、この路線で行くというロードマップの確認だ。
「魔王の操った『死の濁流』を畏れるばかり、ナラキアの目は曇ってしまいました。他ならぬ魔王こそが、その死を引き連れてきたのだというのに。
勇者と過去の神征に倒れた英霊達の無念を晴らし、今一度正しき叡智と信仰により東の地を照らさねばなりません。
我らジアフォージの階列の賢者、そして王師テッセリングも全会一致でナラキア解放の為の遠征軍派兵を決議しました」
「しかし……貴国は今この時も、ナラキアに現れた者たちと同じ、異界の軍勢とも戦っておられる。それに加えてダソトとも懲罰戦争の最中。手を広げ過ぎではないかな?」
規定路線として、ナラキア出兵の決定を告げる太鼓腹。さもナラキア地方の為のように言うが、無論そんなワケがない。
空々しく、しかし恥ずかしげもなく言い切る。
そして、老人の方も分かり切ったことを相手に問いかけていた。
ジアフォージは魔石資源略奪の為、正義を建前に南のダソトへ繰り返し攻め込んでいる。
更に、地球と繋がるポータルを挟んでは、中国こと中華社会主義共和国と交戦中だ。
これらの戦闘でも既に相当の戦力を繰り出しているのに、この上ナラキア地方まで攻める余力があるのか。
その為の、この会談である。
「異世界の軍勢も、所詮神も真理も解さない蛮族でしかありません。玩具のような道具に頼りきり、大儀なく、また信仰によって得る力も無い。
連帯した我らの前に、己の矮小さを思い知ることとなるでしょう」
「『我ら』、と? 神より賜い受け継ぎし楽園に巣くう、魔。これを討ち果たさんとするは、使命を帯びる我がアークティラの本懐である。
だが、ジアフォージの私欲の為に、我が信仰の徒の命を使うことはありえぬ。
ジアフォージの賢者とやらが神の如く真理を語る奢りを悔い改め、我が教会と神の信仰に帰依するというなら、信徒として守護するも吝かではないが?」
ようするに、ジアフォージは足りない戦力をアークティラから持って来るつもりだ。
国を上げてザピロスと魔王を神敵としているアークティラにも、ナラキア攻めの理由があるはずだった。
だがここでも、聖職者の老人はしたたかにジアフォージから利益を引き出そうとする。
神と教会の名の下に、可能であれば全てを。
100年前から変わらない根性に、腹の出た魔導師の方も、失笑の本音を隠すのが大変だった。
「ははは……ブーリアン聖爵、『私欲』などというお言葉はあたりません。我らは英知を求め、あなた方は神を求める。確かに至上とするモノの違いから、我らは隣国でありながら相容れなかった。
しかし、お互いの主張をひとまず棚に上げても、大局的な目的の為に協力できるはずです」
ジアフォージを聖教圏に呑み込むなどという戯言は無視し、魔導師ローディックは飽くまでも別の餌と利害の一致を強調する。
魔王が『死の濁流』を操るというのも、100年前に勇者を殺されたという遺恨も、ナラキア地方で魔王が跳梁しているというのも、全て建前に過ぎない言いがかりだ。
聖教国アークティラは、100年前の失敗から在りし日の権勢が失われて久しく、それを取り戻そうと躍起になっていた。
ジアフォージは、支配を受け入れないナラキア地方が異世界との国交で力を伸ばすのを警戒している。
魔道士の血統とその統治を国是としている以上、ナラキア地方に対しては主権すら認められない。認めてしまえばジアフォージの秩序が傾く。
しかし、ナラキアが手に入れば大半の問題は片付くのだ。
現在は多数の土着信仰入り乱れる大陸東部の信仰を聖教で統一し、潜在的なジアフォージへの脅威も排除する。
それだけではなく、広大な支配域と豊富な労働力も手に入るのだ。
異世界が素直に取引相手をジアフォージに変えれば、更にどれだけの力が手に入るか分からない。
それら全てを我が物とできれば、大陸南部のダソトと北部のマト・ゾーヤまで下すことも難しくないだろう。
自国が大陸を制覇するという野望に、腹の出た魔導師は僅かに笑みを深くし、老人の方はそれを当然のこととして表情を変えなかった。
そういった皮算用を頭の中で済ませる両者の間に、具体的な話を進める空気が作られる。
「だが……ナラキアはオリゾンデの忌み子を打ち倒したと聞く。それも、ジアフォージを脅かすモノと同じ、異世界の力を用い。
我が守護騎士は神の加護を満身に受けし不退の軍。いかなる者を相手にしても敗北はない。
さて、ジアフォージはどうであろうか」
「何も問題はないでしょう。ナラキアの者に魔道の深奥は理解できず、異世界にはそもそも魔法が存在しない。
そして、我らは既に異世界の力を得ており、ナラキアの内でも先を見通せる者は我らに恭順を誓っているのです」
ナラキア共同体は、実力で『死の濁流』という絶対的な脅威を跳ね除けた強者である。この事実は変らない。
聖爵、聖教国において2番目に高い地位にいる老人は自国の騎士の力を説くが、それも教義の上の力であり、現実には無敵でも不死でもないことを知っていた。
無論、そのことも腹の出た魔導師、ローディックは理解している。
故にアークティラの戦力を求め、ナラキア地方の事情に通じ、今も影響力を行使できる者を用意しておいたのだ。
元イレイヴェン国王宮魔道士筆頭、ビーター。
白髪頭を中分けにした酷薄な目の男は、以前と変らずプライドを押し固めたような顔で、魔導師ローディックの後ろに控えていた。
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