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いまさら魔法少女と言われても  作者: 赤川
Wave-02 ヒロインはもうひとりの方で良かったのでは
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0029:無茶しやがって……

 僅か2日前に、市内で銃の乱射事件があったばかりだったのだ。当然、同市警の各署は大規模な捜査態勢を布いていた。

 そこに来て今回の爆発事件。警察の対応は迅速を極め、装備を固めた警官が現場である室盛市産業振興会館へと到着する。

 しかし、警官が到着するまでの僅かな間に、爆発事件に加え、再び銃の乱射事件までが同じ現場で発生したとの連絡があった。これはテロ確定か、と。

 特殊急襲部隊(SAT)への出動要請がかかる事態となり、騒然とする現場の警官たち。

 その中にあって、鼻息を荒くしてるひとりの警官がいた。


「この前と同じ奴らか!? 良いぞー、あの時は悪辣な奇襲で不覚をとったが、今度こそ劇的な逮捕を演じてくれるわ、ハリウッド的に!!」


 そう言ってショットガンをガシャコンとやって見せるのは、一昨日の夜に動く等身大フィギュアに昏倒させられた、心はダーティーハリーなお巡りさん、那珂多浩史(なかたこうじ)巡査部長。


「那珂多さん、そんなもんどっから持って来たんスか!!?」


 それに、相方の若い警官、古家巡査も一緒だった。

 那珂多巡査部長は、何故かモスバーグM590などというショットガンを携行している。無論、交番勤務の警官が持つ装備ではない。


「今日この時の為に部品を個人輸入して足りないパーツは削り出し、いつでも組めるようにしておいたのだ! 惜しむらくは先日の夜にこれさえあれば、その場で全員公務執行妨害で射殺してやれたものを!!」


 もはや町のお巡りさんの科白(セリフ)ではなかった。ちなみに警官であっても違法である。

 しかし、この場でそれを(とが)める警官は誰一人としていない。

 警官たちは全員、万が一に備えて防弾ベストとポリカーボネートの防弾盾ライアットシールドを装備し拳銃も携行していた。

 だが、会場から聞こえてくる派手な銃撃の音を聞くに、とても十分な備えとは思えなかったのだ。

 那珂多巡査部長の違法な私物(ショットガン)が、今はとても心強い。


「よし! 自分達が銃撃犯に対応する! 他は一般市民の避難誘導!」

「おし!」

「了解!」

「ちょ!? 『自分()』って……まさか俺もっスかぁ!!?」


 那珂多の相棒である若い警官が、再び自分の死期を悟った。

 マシンガン相手ってだけでも二階級特進――――――殉職――――――がチラつくのに、あの夜以来ネジが飛んでいる那珂多と銃撃犯に向かって突っ込むとか、もはや生き残れる気がしない。


「行くぞ古家!! 突入!!」

「な、那珂田さん! SATを待ちましょうよ那珂多さん!!」

「突入ぅぅぅううぅうう!!」


 頭の中で開演ブザーが鳴り響き、もはや那珂多に雑音は聞こえていない。

 必死に何かを喚いている古家巡査を会場入口まで引き摺って来ると、未だ大量に人々が流れ出てくるそこで、相棒へ怒鳴りつける。


「よし古家! 『3』で同時に突入するぞ! お前は盾で援護しろ!」

「そ、それって俺に盾になれってことっスかぁ!? マシンガン相手でこんなプラスチックの盾じゃ、俺ハチの巣っスよぉ!!」

「その盾は散弾やサブマシンガンにも耐えるよう想定して作られておる! 大丈夫だ!!」


 とても信じられなかったが、ショットガンを持った目を血走らせる上司に、若い巡査は逆らう事など出来やしないのだ。

 安定した職だと思って、頑張って地方公務員試験の勉強をしたのに、老後を待たずに俺は今日ここで死ぬんだ。

 そんな絶望の若人の事などまるで気にせず、


「行くぞ古家! いち! にぃ!!」


 気分はブルース=ウ〇リスかシュワル〇ネッガーなベテラン警官――――――交番勤務――――――は、ショットガンの銃口を前面に押し出し、勇猛果敢に人波の中に飛び込んで行き、


 ドカンッッ!! と。


「さ――――――――――バンナッッ!!?」


 運悪く、人々の間を()って発射された.50S&W弾の流れ弾が直撃し、空中後方三回転半の宙返りを決めた後、固い地面へと叩きつけられていた。


「…………な……那珂多、さん?」


 白目を剥いて大の字に倒れた上司の姿に、古家巡査は一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 だが、空に響く残響と、その瞬間を見ていた一般人の悲鳴で古家巡査も理解する。


「那珂多さん……! 那珂田さーん!!」


 勤続28年。交番勤務一筋であったベテラン警察官は、その職務に殉じたのだと。


「那珂多さぁぁあぁあぁあああああああん!!!」


 那珂多浩史(なかたこうじ)巡査部長、殉職である。


                        ◇


 そして、その時会場内では。


「いや待って殺してないわよ!!」


 超ミニスカエプロンドレスの金髪少女が、硝煙――――――らしき何か――――――を吹くハンドキャノンを片手に悲痛な叫び(ツッコミ)を上げていた。


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