0018:知らぬ間にテロリスト扱いだった
午前0時。
都内某所のマンション。
一家4人が余裕を持って暮らせる広さの部屋には、大小無数の紙箱や木箱が散乱していた。
箱は、ひと抱えはある大きさの物から、手の平に乗る程度の物、派手な色使いでイラストが描かれている物から、単に文字が描かれているだけのシンプルな物と様々だ。
それらの箱を、部屋の真ん中にあるソファーにどっかりと座り込んだ男が、片っ端から開封している。決して痩せ形とも、「ひょろ長い」とも表現できない、やや背が低い小太りの男だ。
「おー、バージョンコトブキかっけー。ヤベっ、タイプⅡって無印要らなかったじゃん」
箱の中には、更に透明な樹脂製のケースが入っており、中には完成済みのフィギュアが納まっている。美少女系ではない。某国民的ロボットアニメの物だ。
ちなみに、同じロボットのフィギュアはもうひとつ開封済みの物があったが、デザインの細部が異なっていた。同じデザインでも新旧があるのだ。
「あーどうすっかな。この調子じゃ一瞬でスペース無くす……。やづっちの土産もあるしなー……」
箱はまだ半分も開いてないが、4LDKの全室は、既に無数のフィギュアやプラモデル、模型の類でいっぱいになっていた。
それに、これから想像もつかない量の美少女系フィギュアが到着する予定になっていたのだが。
「あーにーじゃー………!!」
「おおやづっち、お疲れさん……ってどうしたんですか家津さん!!?」
同居人の声が玄関から聞こえ、出迎えに行って驚いた。
「三次のイカレビッチにレ〇プされたでゴザルー! チクショウムカつく! めっちゃムカつく! フズバッッ!!」
意気揚々と出ていった筈の同居人は、見るも無残な姿で帰って来ていた。
伸ばし放題の髪はメチャクチャに跳びはね、着ていたトレーナーは肌に張り付く布切れと化して、ほぼ全裸。その身体にも無数の擦り傷がついている。
そして、足元もおぼつかない様子で、自ら動く等身大フィギュアに肩を借りてようやく立っているような有様だった。
小太りの男は、このひょろ長い背の男が美少女フィギュアに仮初の命を与えるという、特別な能力を持っているのを知っている。
小太りの男とひょろ長男はそれぞれの能力を以って、それぞれの目的の為に奔走していたのだが。
「で何があったやづっち!? 他のフィギュアは!!?」
「なんかエロい格好したテロメイドと日本刀振り回す巫女に邪魔されたでござるー! みくるちゃんハジちゃんヲーたん……みんな……みんなテロメイド達に壊されたでござるー!!」
「マジか!? 何それラノベ!!?」
「現実でち!」
今の自分達の境遇も相当変わっていると思っていた小太りだったが、その話は輪をかけて異常だった。
ひょろ長い背の男、『やづ』は集配前の等身大フィギュアを強奪に、室盛市の倉庫会社へ向かい、そこで目的の物を手に入れたと思った直後に、得体のしれない巫女侍とテロメイド(仮)に襲われた。
結果、やづの連れて行った等身大フィギュアのコレクションは三体を残して全滅。当然、新たなフィギュアを手に入れる事も叶わなかった。
話を聞く限り、その二人の女も自分達同様、普通じゃない。
「ヤべー…………。で、可愛かった?」
「それどころじゃなかったでち! まぁ捕獲してお持ち帰りしても後腐れない三次女っぽいから、持って帰ってAV好きのケンさんのお土産にして一緒に変身ヒロイン悪落ちアヘ顔ダブルピース調教しようと思ったんでちが」
「そこは死んでも持って帰ってこい。正体が明かせない変身ヒロイン調教。ヤべーめちゃシコ」
「だからそれどころじゃなかったでござるー!! もうちょっとで拙者まで殺される所だったでござるー!! でも仲間っぽいのをゲットしてきたでゴザル。ゲットだぜ」
「マジか」
しかし、全く成果無しというワケでもなかったらしい。
ひょろ長男『やづ』によって命を与えられた等身大フィギュアの一体。その小脇に抱えられて、和服姿の美女がマンションの一室に運び込まれていた。
◇
その頃、室盛市某所。
「あ゛ー!! こら! ちょっと! 待ちなさいカティー!!」
「ヒッ!!? ヒィン!!? お、お断りデース!! お雪サーン!!!」
雨音が事情を説明する前に、あらゆる意味で必死な形相の巫女侍が、軽装甲機動車から逃げ出していた。




