0028:日東米ダブルスタンダード大戦
9月第一週の日曜日。
午後6時15分。
東米国から来た外交官、という身分で、8人の能力者は虎ノ門のある建物に入って行った。
表に分かりやすい看板などかかってないが、列記とした政府の施設だ。
行政への登記とか色々非合法に誤魔化して、国民には今のところ内緒の部署なので、『列記』とも言えなかったが。
高層ビルの中に居た人間は、その大半がスーツ姿だ。国家公務員ばかりなので、当然ではある。
そんな中に我が物顔で入って行く、カジュアルな格好をした外国人の男女。
不機嫌極まりないといった面で整った顔が台無しな、ブラウスにプリーツスカートの金髪少女。
やや動きがぎこちない、鋭い気配のジャンパー姿の男。
Tシャツにカーゴパンツで、覆面のようなモノで顔を隠した大柄な黒人。
ロングコートにバイザー型サングラスの金髪少年。
ジャケットに付属したフードを被り、顔が見えない少年。
汚れた白衣にボサボサ頭の長身男性。
レザーパンツにほつれたTシャツのパンク少女。
灰色の肌をした岩のようにゴツイ身体にワイシャツを着た、3メートルほどもある巨人。
当然目立ち、職員の注目を集めていた。
「お待たしました。ご案内いたします」
受付に約束有りと告げてから、2~3分後。
受付嬢の案内でビル内を進む8人は、やはりかなり浮いた存在に見えた。
スーツ姿の日本人ばかりといった没個性な所へ、突き進んで行く個性的な人間ばかり。
エレベーターで偶々出くわした職員などは、露骨に驚いた顔をしていた。
もっとも、発足したばかりの部署なので、致し方ないところではある。
波乱含み、おおっぴらには出来ず、必要に迫られ、実務に優れたワケありの人間ばかりが集められる。
ここはそういった場所だった。
そして誰もが、すぐに慣れてしまう事だろう。
案内されてきた11階の会議室。
ガラスの壁面が中庭に向けられており、外部から見られる可能性が小さい。
広大な11階フロアは、ふたつの大会議室だけに割かれている。
30人は着席できそうな円卓が置かれる会議室には、東米国の能力者達が良く知る人物が居た。
「…………やってくれた…………やってくれたな、諸君」
苦渋に満ち満ち、死にそうな顔で怨嗟を込めて呻いていたのは、中年と呼ぶには若く見える、グレーの高級スーツを着た男性。
東米国安全保障局、特殊戦略情報部、特殊工作情報管理担当官。
ロジャー。
つまり適当にでっち上げられた部署で人身御供に立てられた人間である。
そして、本来なら好き放題する能力者の尻ぬぐいで早々に某爬虫類のシッポの如く葬り去られる筈だったが、後任が一切見つからないが故に、首が据え置かれているという人物でもあった。
が、それはある意味殺されるよりも悲惨で、酷い立ち場に追い込まれる事も意味している。
後任が居ないので軽々しく首も切れない。
かと言って責任を取らせないワケにもいかない。
能力者が何かをやらかすと、文句や苦情がこの男に集中する。
好きでこんな部署に配属されたワケでもないのに、責任を押し付けられる毎日だ。
しかし、氏を取り巻く状況はもう少し複雑だったりする。
東米国は当然、能力者を戦力として便利に使い倒そうとする。
ロジャーは能力者をまるで制御出来ない。
早々に担当者の首を挿げ替え、東米国お得意の、立ち場にモノを言わせた脅迫と強制による服従を強いようとする。
実は立ち場の強さを勘違いしており、政府の方が大火傷する。
ついでに、挿げ替えられた当時のエリート担当官が世にも酷い目に遭う。
クビを切られて処分寸前だったロジャー氏が超高速で呼び戻される。
能力者の方も、他のいけすかない担当官よりは遥かにマシ、とロジャー氏を微妙に立てるようになる。
と言っても、好き勝手するのは変わらない。
他に能力者を管理する人間が居なくなる。
以下ループ。
こうして、ロジャーは局と能力者から日々無茶振りされ続ける、終わりなき削肉減骨の道を歩む事となったのだ。
「ローニン! すぐに皆を連れて来るんじゃなかったのか!? 今まで一体何をしていたんだ!?」
「だから全員で来ただろう。遅刻もしていない筈だ」
そして今も、労災とは無縁の国家安全保障局担当官を極度の心労が襲う。
何せ国家の機関なので福利厚生はしっかりしているが、実質的に申請が出来ないという悲惨さ。
そんなロジャーに平然と言ってのける、元凶のひとりたる軍人風の能力者、ローニン。
かなり弱っている筈なのだが、面の装甲にヒビひとつ入っていなかった。
「ならウエノでの騒ぎはいったい何なんだ!? 駅と周囲が壊滅状態! 主要なハイウェイを寸断! 目撃者多数! 監視カメラにも映像が残っている!!」
「『何があった』って知ってんじゃん」
顔の見えないフードが聞こえるように独り言を吐き、安全保障局担当官が恨みの籠った目を向ける。
フードの少年は、気にしない風でそっぽを向いていた。
「日本に圧力をかけて黙らせるのはいつもの事だろう。何か問題か、ロジャー」
「今まではそうだった。だが今は状況が違う。分かっているだろうローニン。今回の顔合わせはその確認でもあったんだぞ…………」
基本的に、日本政府は東米国政府の意向に逆らえない。
大口の貿易相手である事。アテにはならないが、一応安保協力体制を結んでいた事。声の大きな東米国に日本がビビっている事、等々が理由である。
東米国の国家機関によるモノは勿論、個人の犯罪すら日本側は公のモノとせず、配慮して問題にしない事例が圧倒的に多かった。
輸出入の関税率や土地の借用、日本国内における在留邦人の特別な地位や権限。
日本が東米国に対して強いられている不平等は多く、『対等の同盟関係』というのも、国際社会に向けた表向きのアナウンスに過ぎない、というワケだ。
ところが、2か月前からそんな上下関係に変化の兆しが表れている。
「いや大変お待たせしちゃって! あ、コーヒーも何もまだお出ししてない? 何か飲まれますか? アルコール、ノンアルコールのドリンク、色々ありますが?」
会議室の扉が開かれ、東米国の面々の会話が中断した。
入ってきたのは、妙に明るいビジネススーツの男性。
中肉中背で、短く刈った髪が少しばかり逆立ちながら後ろに流されている。
そして、その笑顔は作りモノっぽいと言うか、胡散臭かった。
妙に明るいスーツの男が東米国の人間に席を勧めるのと同時に、他にも数名が会議室に入って来る。
うち何人かは濃緑色や濃紺、黒といった制服を着用しており、自衛官であるのが分かった。
加えて何故か、警察の制服姿やカジュアルな服装の人物まで見られ、東米国の面子程ではないにせよ、ほとんど統一感といったモノが存在していない集団だ。
「改めまして、東米国からご足労いただき、ありがとうございます」
統一感の無い東米国と日本の人間達が円卓に、または壁際の席に着く中、胡散臭い笑顔の男だけが立ったまま挨拶する。
「私、外務省アジア大洋州局北太洋州課の仁田と申します。正式な部署名はまだ決まっていませんが、このたび新設されます日本政府における特殊能力者を統括する部門の責任者を兼任いたします。東米国の特殊戦略情報部様とは、情報の共有や組織としての活動で相互に協力関係が結べれば、と考えております」
こう言うが、日本がいつも東米国から一方的な情報提供や費用の負担、活動への協力を強いられているというのは、半ば常識と化していた。
しかし、白々しいほど笑顔の男は、建前を前面に押し出し本音は一切漏らさない。
一見すれば既存の役人、東米国に従順な日本人だったが、言葉の裏を取れば、慇懃無礼と言ってもよかった。
口には出していないので、表立っての抗議や注意も出来ないのだが。
『仁田』と名乗った男はその後、外務省での直属の上司と部下を紹介すると、次に自衛官のひとりを指し示す。
立ち上がったのは、濃緑色の制服を着た陸上自衛官だ。
肩の階級章によると三佐。少佐に相当する。
上背があり、痩身に見えてガッチリとした体格をしており、実戦畑の人間だというのが雰囲気からも分かる、角刈りでやや神経質そうな顔の自衛官。
「こちらは当部署で実働部隊の指揮を執っていただきます、陸上自衛隊の釘山三等陸佐です。ご自身は能力者というワケではありませんが。また、私同様に原隊の第一師団第32連隊第6中隊隊長との兼任になります」
紹介された釘山三佐は敬礼ではなく、頭を下げる通常の礼を見せる。
頭を上げた所で、対面よりふたつ席がズレている軍人風の男、ローニンと目が合った。
釘山三佐にも、ローニンが元軍人、それも特殊戦に属していた人間であるのが分かる。
「クギヤマ三佐は、日本に現れた巨大モンスターの迎撃戦でも、自衛隊と能力者の指揮をしておられましたね。もしやそれ以前から、能力者を加えた部隊は組織されていたのですか?」
一転して若きキレ者局員の顔になったロジャーが穿った事を言うが、無論そんな事実は無い。対巨大生物戦は、行きあたりバッタリも良い所であった。
その辺は資料からも明らかな筈だったが、情報収集力をチラつかせ、難癖をつけて有利な位置を得るやり口は、何も東米国だけのお家芸でもない。
「いやいやいや、もっと早く特殊能力者の方々と協力体制が出来ていれば、東京の被害も押さえられたのですが」
これをかわしたのは釘山三佐ではなく、外務省の胡散臭い笑みの男だった。
日本が東米国様に内緒でそんな事しているワケねぇ、と。
「我が国は東米国ほど国民が政府に協力的ではございませんので。人材確保にも苦労しておりますよ。実際、政府職員以外の民間の能力者は臨時雇いの非常勤みたいなものでして」
これも言葉通りの意味ではない。
ロジャーは微かに鼻を鳴らし、立ち上がろうとした金髪の少女は、軍人風の男に小声で止められていた。
表立って非難する材料が無くても、ムカつく相手は主観と実力で叩き潰そうとするのが『ナイツ』という爆弾娘である。
ローニンの言う事は一応聞くのだが。
「そういう事でしたら、『島』への調査は我が東米国だけで行っても結構ですが? 勿論、日本側には我が国の調査隊への全面的な支援をお願いしたい、と考えております。調査で判明した情報も共有しますので」
部下の能力者の一挙一動に冷や汗をかくロジャーだったが、そんな事は表情に出さず、今回の本題へと入った。
最も大きな目的は、太平洋のある『島』を調査する為の、主導権を握る事だ。
問題の『島』は、北太平洋上の中央から日本寄りに存在していた。
巨大生物の出現に端を発して始まった調査。
その過程で発見された、存在していない筈の『島』。
衛星からの画像や高空からの監視映像で確認された異常事態は、能力者の必要を感じさせて当然のモノであった。
調査は東米国が主導で行う。
調査費用や機材といった必要な物は、合同調査という体で最大限日本側に負担させる。
重要な情報は日本には渡さない。
日本側も人員を出して来るだろうが、飽くまでも後方に控えさせ、現場からはシャットアウトする。
これが、東米国政府の方針だ。
通例で言えば、問題は無い筈だ。
日本政府は、東米国政府の決定には逆らわない。
200年前、第2次大戦の勝利後に表立って植民地にしなかったが、裏から強力な影響力を残して事実上の属国に仕立てたというのは、公然の秘密だ。
これにより国際的な非難をかわし、今日に至るまで便利な財布を手にし続けて来た。
日本国民にはほとんど知られていないが、東米国からの年次改革要望書の内容は、2年かけて確実に実行されている。
国政も実のところ、東米国の意向に沿って行われていた、というワケだ。
こうして、国民には事実を隠して東米国に都合が良い政策が行われて来たワケだが、現実に東米国に都合の良い状況になっているのだから、当然日本政府の内外から『東米国寄りだ』という批判が出る。
そこを押さえて来たのが東米国に対する経済依存、安全保障依存という2本の柱だったのだが、2か月ほど前に柱の一本が張りボテであるのが判明した。
巨大生物の一件で、在日東米国軍が全く動かなかった為である。
当初、東米国政府は日本での巨大生物戦において、在日東米国軍が東京解放に貢献したと言う事実を、日本政府に指示して捏造しようとした。
しかし、この捏造は東米国本土の捏造工作がバレた煽りを喰らい、同様に明るみに出る。
東米国の捏造指示にキレた日本政府職員が、マスコミに事実を暴露したという事もあった。
この職員は、公務員の内部告発を防止する『特定機密保護法』により逮捕、刑事起訴されそうになっているが、暴露した内容が内容なので、法律と内閣の方が怒り狂った国民に潰されそうな勢いである。
日本は現在、法律を守って内閣を潰すか、内閣を存続させて法律を見直すかの2択を迫られていた。
加えて、巨大生物戦で根性を見せた自衛隊への国民支持が爆上げで、東米国との安全保障条約自体がもう要らないんじゃないか、という極端な議論まで持ち上がっている。
これは、東米国政府はもちろん、日本政府としても困る話だ。
日本政府としても、東米国が正義から日本を守ってくれるとは、初めから思っていない。
しかし、アジア諸国が太平洋に進出するのは、東米国としても望む所ではないのというのは知っている。
日本という国家ではなく、太平洋へアジア諸国が進出するのを防ぐ防波堤として。
またアジア方面への拠点として、日本には今まで通り東米国寄りの国でいて貰わねばならない。
それが分かっているからこそ、日本政府も不公平による不都合を国民に押し付ける事で、今まで通りの関係を東米国と維持していきたいと考えていた。
自衛隊は優秀な組織だが、アジアの大国や徴兵制を維持する隣国、軍事社会主義国家を相手に戦えるとは思わない。
それに、巨大生物を排除出来たのは、自衛隊の力だけによるモノではないのだ。
話が逸れたが、巨大生物出現による影響で、日本の世論に変化が起こっているのは事実だ。
日本政府は火消しに躍起になっているが、その政府内部に、東米国に従属する現在の国家体制に不満を持っている人間も多い。
触れてはならないタブーとされた年次改革要望書の内容が、現在までにそのまま通っている事実も世間に漏れ始め、東米国への反発がジワジワと高まっている現在。
そんな時に、東米国の能力者が都心の一角を全壊させたなどというのは、日本と東米国双方が、断じて表に出せない情報だろう。
だが、あるいは日本側が強気に出て来る可能性も、ロジャーは考えていた。
東米国側の横暴を、不満に火を付ける起爆剤とする。あるいは、そうなると仄めかす。
政府内部の不満、国民世論、実戦を経験した自衛隊、そして、日本の能力者の存在。
今、世界は混乱してる。それは、巨大生物の脅威に曝されていた時以上かもしれない。
現状を変えるのは、所詮『力』。
そんな所に、確認されてしまった『島』の存在。
情報価値はあまりに大きいが、太平洋で日本寄りという立地は、諸外国の大々的な干渉を遠ざけている。
アジアの大国は極秘に潜水艦を出すに止まり、北の大国は政治的に東米国を牽制するが具体的な行動には出ておらず、非常に民主的な西の古米国は対応を決めかねていた。
東米国としては何処よりも先んじて動きたいが、その為にはどうしても日本の協力が必要だ。
日本側も、東米国の思惑は分かっているだろう。
足元を見て来る可能性は高い。
と、思われたが。
「ええ、それはもう全面的に協力させていただきますよ。『島』は現在航空自衛隊の早期警戒機で監視していますし、海上自衛隊の護衛艦も周辺海域に出ています。ま、それはそちらもでしょうが。近海で拠点として用いる輸送艦も、こちらの方で出航準備を進めさせていただいております」
聞けば、現地に行く準備は既に始まっているとの事。
しかも、日本側から『島』に入るほどの戦力は出せないので、東米国の調査隊を支援するのに全力を尽くす、と。
用意が良過ぎるし、都合も良過ぎる。
それをそのまま、ただの親切などと受け取ったりもできない。
腹に一物抱えるにしても露骨過ぎだ。
いっそ何かしら要求された方が分かりやすかった。
「…………日本としては、『島』内部の調査にはあまり積極的ではないと言う事でしょうか?」
「いえいえそんな事は。ですが、航空映像から見てもかなりの危険が予想されていますし、まずはじっくり外から様子を見たい、というのが本音でしょうかね。自衛隊も実戦経験豊富というワケでもありませんし、民間の能力者に危険を強いるワケにはいきませんので」
身内である自衛隊をすぐ側で「力不足」と言い放ち、臆面も無く実情を話す胡散臭い笑みの男。
ただ言葉では、東米国にとって好都合な事を言っている。
ならば良しとするか、それとも本音を引き出しにかかるか、ここは出直すべきか。
少なくとも仁田という男の態度は従順とは言えず、判断に迷うロジャーだったが、
「こちらに人員を回してもらう事は可能か?」
「ロー…………?」
「とー……仰いますと?」
不意に、軍人風の男、ローニンが口を挟んだ。
会議室の目が一斉に集まる。
仁田の声のトーンが少し落とされ、胡散臭い笑みもそのまま静止していた。
東米国が日本の人員を完全に排除するのは想定出来ていたが、あえて調査に同行させようというのは、いったいどういう事なのか。
身内のロジャーはもっと驚いていたが。聞いてないぞ。
「銃器や戦闘ヘリを使う能力者。見た目は18から二十歳…………と思われる女性。黒い服、金髪、身長は170前後。確か、ハネダでの戦闘にも参加していた筈だ。そちらで押さえている能力者ではないのか?」
次に軍人風の男の口から出て来た特徴には、東米国の能力者全員と、日本側でも数名が反応を見せていた。
東米国の能力者にとっては、つい3時間ほど前に遭遇したばかりの、恐ろしい戦闘力を持った脅威。
日本側にとっては、特徴の一致する能力者というのが、少しばかり特別な意味を持つ魔法少女だったりする。
「えー……恐らく、仰る人物は分かりますがー……こちらでも素性などは把握しておりません。『黒アリス』、とネット上でも話題になってる能力者ですね。当然、我々が雇用する能力者でもありません」
「ではこっちで雇っても構わないか?」
再び会議室に動揺が走る。
何と言って良いのか分からない、困り笑顔の男、仁田。
何言ってるの? と言いたげな東米国の面々。
密かなどよめきを上げる日本の偉いヒト達。
そして、目を細める釘山三佐と、軍人風の男の視線が再びぶつかる。
◇
その日の会合は、初顔合わせという事もあり、細かい調整はまた後日となった。
具体的な調査日程、調査に出る人員、連絡の経路などを、日本側と東米国側で再度取り纏めておく事になる。
基本的な方針は決まったので、なるべく早い段階で実際の調査に出るという話で、双方が同意していた。
同時に、軍人風の男、ローニンの発言により、日本と東米国の両内部で、少々問題も持ち上がっていた。
ちなみに同じ頃、上野から南に下った秋葉原にある三つ葉大学付属病院では。
診療台の上に座り、太腿の切創を縫われていたある少女が、クシャミをして「動くな」と女医さんに怒られていた。




