0073:政治的デンジャラスブリーフィング
午後2時。
要塞化した日本国総理大臣官邸。東京都内における日本政府最後の砦と化したこの場所に、黒いカラーリングの特殊戦仕様MH-60他目的ヘリが飛来する。
「何か増えてない?」
「ヒュー♪ 壮観じゃーん」
機内から地上を見下ろし驚嘆の声を漏らすのは、ミニスカエプロンドレスに金髪の眼帯娘と、ビキニ水着にテンガロンハットの陽気な少女だ。
ヘリに乗っているのは、6人の魔法少女達。
黒アリス、旋崎雨音。
ビキニカウガール、荒堂美由。
赤備えの鎧武者、武倉士織。
魔法少女刑事、三条京。
巫女侍、カティーナ=プレメシス。
海賊少女、安保茉莉。
彼女達がここ、総理大臣官邸からお台場にある入浴施設、『昭和銭湯物語』へ向かったのが、午前中の事。
それから3時間と少ししてから戻った事になるが、出た時よりも官邸の外で動く自衛隊員の数が、5割ほど増している気がする。
無線による着陸誘導も、てっきり官邸屋上のヘリポートを指定されるかと思ったら、中庭のど真ん中に設けられたヘリポートへ降りるよう指示された。
「東部方面隊の臨時再編成が終わったんだ。第1から第3連隊、それにうちの第32連隊に第34連隊とかの各連隊本部もここに置かれる事になったから、全室稼働率100%だよ」
着陸誘導で迎えてくれた知り合いの混成第6中隊員は、黒アリスら魔法少女に冗談めかして言う。
元々魔法少女達が知っている自衛隊員なんて混成第6中隊の隊員くらいのモノだが、言われてみると、毛色自体が違う自衛隊員というモノが、何となく見分けられる気がした。
もっとも、この場で一番浮いているのは自衛隊員でも政治家でも官僚でもない、若すぎる上に個性的な格好をしている少女達だったが。
中庭でも、官邸に入っても、魔法少女達はその場にいる人間達の目を例外なく引いてしまう。
しかし、黒アリス以外は皆堂々としたもの。
雨音は、この件が片づいた後が恐ろしい。推察する限り、海賊少女などは変身前後で全く容姿が変わっていない筈だ。
ヒトのことまで心配になってしまう、心配性の黒アリスである。
混成第6中隊の知り合いが言った様に、官邸内にはヒトが大量に行き交っている。アレだけあちこちに転がっていた4腕4脚の怪生物はどこに行ったのか。その姿は、今は全く見る事が出来なくなっていた。
そんな迷彩服とスーツ姿の間を縫って地下に入ると、途端に覚えるある空気になる。
地下は現在、総理が本部長を兼任する『甲種』巨大生物災害対策本部の、専属即応部隊の様になっている混成第6中隊の中隊本部となっている。
つまり、基本的に混成第6中隊の人間しか出入りしていないのだ。見知った顔がチラホラ見えるのも、馴染みに感じる理由の一因か。
その背景には、一万体に近い怪生物に攻め込まれた際に地下に閉じ込められた閣僚などから、ケチが付いた地下には近づきたくないという意見が出た為に、主力となる部隊の部隊本部ほど官邸の上の階に設けられていた、と言うような事があったが。
つまり、混成第6中隊は、若干ハブられていたりする。
「すまんな、帰してやれると思ったのだが」
そのハブられている部隊の隊長、角刈りで緊張感のある引き締まった顔をした釘山三佐は、地下危機管理センターに入って来た少女達へ開口一番謝罪していた。
「会議の結果は芳しくなかったようですね、三佐」
最初に口を開いたのは、チビッ子いのに大人びた口調で話す銀髪縦ロールのテンプレ魔法少女、魔法少女刑事のトリア・パーティクルだ。
女子高生の子娘どもとは事情が違い、お堅い組織の中での身の処し方に多少の覚えが有ればこそ、三佐の立場に近い物の考え方も出来るのだ。
「『芳しくない』って……攻撃の計画が纏まらないって事ですか?」
「まーた制服とスーツが足の引っ張り合いでもしてるんじゃん?」
首を傾げる眼帯の黒アリスに、ビキニカウガールが皮肉げに微笑する。日本随一の家のお嬢さまは、大人のフリをする幼稚な争いをこれまで数多く見て来た。
「殺り方なら姐御がテメーらの前でやって見せただろうが……。また規則だルールだ言い訳こいてんのかぁ? ダセェ上にウゼェ………」
反権力的というか反骨精神に溢れすぎてるヤンキー少女は、多くの場合大人が二枚舌を用いて、もっともらしい建前で手前勝手な本音を押し通すのを知っている。
そう言った輩は往々にして自己の利益を優先し、合理性よりも自分に都合の良い事を優先するのだ。
今回もそんな事だろうと吐き捨てる海賊少女だが、残念な事にそれほど間違ってもいなかった。
「攻撃計画は予定通り……機動力を削ぎ、至近距離から精密射撃で体表の穴を徹す事になった。その計画は変わらないが、『甲種』巨大生物の方に変化が有った」
魔法少女達の意見はひとまず置いておき、釘山三佐は皆へ席に着くように勧め、正面の大型情報モニターに映像を映す。
そこに映っているモノが、黒アリスは一瞬何か判別出来なかった。
「…………あッ!? これ、あの……?」
「え? え?」
「赤くなってマスねー…………」
口々に戸惑いを示す魔法少女達が見せられたモノは、体色の表面が斑に赤く変化した巨大生物に、周辺の小型怪生物の姿だ。
黒アリスや他の魔法少女が覚えている限り、つい先日まで巨大生物も怪生物も、体色は緑灰といった、悪い言い方をすればヘドロや濁った池の様な色をしていた筈だ。
それが、どういうワケか斑のある滲んだ赤色のようになっている。
三佐が説明するには、体色の変化した『乙種』怪生物は、明らかに緑灰色の個体よりも、膂力、速力、身体強度などの面において優れているのが確認されたらしい。
つまり、実際に確認してはいないが、大本である『甲種』巨大生物にも同じ事が起こっている可能性がある。
にもかかわらず、政府はもっともらしい建前を打ち上げ、精査もしないうちに性急に攻撃しようとしているのだ。
「攻撃しちゃいかんデスか?」
卓に頬杖をつく巫女侍は、何が問題なのかと片眉だけを器用に顰める。
どっちみち攻撃はしなければならないのだし、弱点そのものが消えたわけでもないのだろう、と思うが。
「黒衣はどう思う。意見を聞きたい」
「あ、あたしっスかぁ!?」
釘山三佐に大真面目な様子で話を振られ、黒アリスはヤンキー少女のような返しをしてしまった。
眼帯黒アリスは、そんな重要なことあたしに訊かないでください、とでも言いたそうなテンパった顔を見せるが、最初の海戦以来、常に巨大生物と戦い続けて来たのは他でもない、この魔法少女だ。
最も交戦回数が多い者に意見を求めるのは、当然の事ではあった。
そんな人選で、少し考え込む黒アリスだが、
「…………三佐は、あの戦術はもう使えなくなっていると?」
「弱点は克服するのが生命だ。ましてや相手は常識が通用しない。何が起こっても不思議ではない」
「生物学者の意見を聞きたいわねー…………」
テンガロンハットを弄びながら軽めに言うビキニカウガールだが、口調や格好と違って目付きは鋭い。意外に慎重派だ。
そんなビキニカウガールな才媛のお嬢さまも、三佐の口から関東大学教授の見解を聞くと、あからさまにガッカリして見せる。
生物として地球上に存在しなかった種だ、というのは興味深いが、肝心な部分が分からないのでは。
「近づいてって調べるワケにもいくまいなぁ…………。三佐、これ第二案はあるんですか?」
希望を込めて訊く黒アリスだが、そもそもそんな有効な案があれば、最初からそうしている、と言う話で。
案の定、機動力を奪う第一波、近距離からの精密射を行う第二波攻撃が失敗すれば、東京湾の海上自衛隊と航空自衛隊による力押しと、捻りも何もない作戦になっていた。
「…………時間と税金の無駄でござるな」
それでどうにかなる相手なら、最初の攻撃で仕留めていただろうとは誰もが思う。
ちょっと考えれば災害対策本部のお歴々も分かりそうなものだが、どれほど話が大きくなっても、結局は「面倒だし時間も無いからとりあえずやってみて上手く行けばいいな」という人間のやっつけ思考は変わらないのだ。
失敗した時の事は考えない。成功すればいいのだから。
万が一失敗しても、ケツを拭くのは自分ではない他人である。
「じゃぁ……あたし達が用意するのは、バックアッププラン、て事?」
眼帯を引っ張り目の様子を見ながら言う黒アリスに、魔法少女達が顔を上げた。釘山三佐も微かに頷いている。
集まる視線に居心地を悪くした黒アリスは「成功するに越した事はありませんけど……」と前置きしてから、戦術の為の情報をリクエスト。
「…………今どこにいるんでしたっけ?」
巨大生物は恵比寿三田の戦闘以来、品川の試験林公園に移動してから動いていない。
攻撃は当然、ここで行われる事になるのだが。
「弱点攻撃は自衛隊があたしよりも上手くやってくれるでしょうから……それがダメだった時の話、ですよね」
「てか東米国は何してマス? あそこ、安保とか同盟を理由に日本に基地持ってる筈デス。こんな時に出なくてどうしマスか」
意外な――――――失礼――――――巫女侍の科白に、黒アリスをはじめ魔法少女達が目を丸くする。猪巫女侍がこういう事を考えるのが、少々意外な気がしてしまい。
だが、誤った日本観を持つ巫女侍ではあるが、中身は古米国総領事の娘さんなのだ。特に、関係が微妙な東側の事情には、目が行きがちである。
とは言え、黒アリスだって強い味方である筈の在日本東米国軍の事を考えなかったワケでもない。
考えた上で、頼りにならないと分かっていたのだ。
同盟国である東米国の軍隊が有事の際に日本を守る義務が無いのは公然の秘密だったし、この状況で出てこないのが何より実情を知らしめていた。
その辺の実情を知ってか知らずか。この巫女侍の科白には、周囲の自衛隊員達も憤りとも諦観とも取れない溜息を、こっそりと漏らしている。
「んん…………」
釘山三佐も、閣議室の災害対策本部で偉そうに踏ん反り返っているだけな在日東米軍の司令官を思い出し、その姿を咳払いで頭から追い払った。
「上……政府の方針としては、日本と首都東京は日本の手で守るという事になっている。日東米同盟としては、今回の事態は『有事』には該当しない、との内部でのコンセンサスが取れているらしい」
この瞬間、魔法少女達と自衛隊員達の気持ちが、(なんだそりゃ)とひとつになった。今の事態が有事で無くて何だというのか。
本当に政治と言う世界は言葉が軽い。というか言葉が言葉として機能していない。
ついに最低限の、言語と言う共通の約束事までもを反故にするのが、政治の世界なのだ。
「だが、政府は東京を焼け野原にしても、東京都以外に被害が広がる前に『甲種』脅威生物を無力化するつもりだ。『甲種』体内への直接攻撃が何らかの形で失敗した場合、品川ごと空と海からの総攻撃で『甲種』を落とすつもりだ」
三佐が目で合図すると、情報担当の自衛隊員が頷き情報モニターの映像を切りかえる。
表示されるのは、無人航空攻撃機からの周辺映像だ。
前回の現場からは、約5キロ圏内。品川区ではあるが、目黒区にも近い。
黒アリスの旋崎雨音は、あまり東京の地理に明るくない。東京に興味が有る女子高生ばかりではないのだ。専ら興味は銃だとか。
「…………避難とかはどうなってんのかしらー?」
試験林公園を中心に、バームクーヘンのように円形に色分けされる赤い範囲を眺めながら、陽気さを少し潜めたビキニカウガールが言う。
「…………知り合いが?」
「うん……仲は良くなかっ――――――――――ないけど」
黒アリスが少し遠慮がちに尋ねると、ビキニカウガールは一瞬だけ鎧武者の少女と目を合わせる。
詳しい事は訊かないが、黒アリスもその関係を察していた。
「無論、予想作戦区域では徹底した住民の捜索が行われている。今もヘリで要救助者が護送されている筈だ。サイレンサーは隠密裏に『乙種』を排除するのにも効果を発揮している」
「それは……何よりですね」
混成第6中隊は、通常自衛隊員に支給される物よりも遥かに強力な武装、兵器が配備されている。出所は聞かないで欲しい。
強力な怪生物を音も無く処理するサイレンサー付き大口径アサルトライフルだけではない。武装ヘリ、戦闘車両、誘導ミサイル兵器。
混成第6中隊はこれら特別な武器兵器類を有効に使っている。
つまり、これら強力な戦闘群と黒アリスたち魔法少女が、最終的には対巨大生物の全戦力となるワケだ。
「んぅ……………………」
言葉も無く考え込み、周囲を見回して意思を問う黒アリス。
だが、ビキニカウガール、鎧武者、海賊少女、魔法少女刑事、巫女侍には、これといった案は無いようだ。
皆、どちらかと言うと、黒アリスの次の言葉を待っている様子。プレッシャーをかけて欲しくない。
それでも、今回ばかりは「ただの女子高生ですので」と弁解するワケにもいかないようだ。
いざあの巨大生物が暴れ出せば、今度はどれだけの被害が出るわかからないのだから。
「…………最悪のパターンとしては、次の攻撃で効果が出なくて、あの怪物が北か南かに向かって突っ走る事ですよね」
「北陸は第12旅団、東北は第6師団、中部は第10師団が『甲種』『乙種』共に侵入を防ぐ為布陣されているが、実際に『甲種』が強行突破しようとすれば、阻止は難しいだろう」
上陸地点は最悪だったが、今はまだ東京だけに被害が留まっている。
これが南に移動すれば、雨音としても最悪だ。地元室盛市は、多摩川を挟んで東京に隣接しているのだから。
つまり、何としてもここ東京で仕留めなければならない。その点も、魔法少女達と自衛隊は意見の一致を見ている。
「一応……一応聞いておきたいんですけど三佐。か、核は――――――――――――」
「黒アリスさんそれ以上イケないデス!」
「黒アリスガール冷静になって!!」
「黒衣殿!?」
「姉御いろんな方面に怒られる!!」
恐る恐る、本当に念の為だけに訊くつもりだったのだが、どうやら質問自体がNGだった様子。
魔法少女達に総突っ込みを入れられる黒アリスだが、一方で三佐と魔法少女刑事は張り詰めた睨み合いをしていた。
「黒衣…………今のは聞かなかった事にする」
「すいませんでした…………」
冷や汗をかきながら縮こまる、銃砲核兵器系魔法少女。
そして、魔法少女刑事と三佐の間の緊張も霧散していた。冷や汗をかきたいのは大人達の方である。
「んじゃ気化爆弾頭も非核弾道ミサイルもダメでしょうか」
「あの……三佐、一度黒アリスさんだけ別の部屋で調整した方が………」
「黒アリスガール……それある意味核より性質が悪い」
だというのに、またとんでもない事を言い出す黒アリスに、保護者の魔法少女刑事は呻くように言い、ビキニカウガールも諦観混じりの突っ込みを入れていた。
むしろ、核じゃなきゃ大丈夫じゃない? 的な言い方をする黒アリスの方が性質が悪いかもしれない。
気化爆弾も非核弾道ミサイルも、間接的に世界の核戦略を左右する戦略兵器である。
「気化爆弾は放射性物質の汚染が無いだけで、破壊力は核に次ぐと言われている。周辺被害が大きすぎる。それに、SLBMは射程が長すぎるだろう。どこから撃つつもりだ」
「ですよねー…………」
釘山三佐からも、微妙にズレた物言いをされながらも却下された。
黒アリスとしても、核を含めて却下される事は想定の内ではあったが。
そうなると、まともな兵器ではダメだという事になる。
核・生物・化学兵器は都心で、しかも住民が残っている可能性が有る環境では使用不可。
被害が出過ぎるという意味で、広域を爆撃する様な兵器は不可。
「でも…………相手は武器燃料を満載したイージス艦の至近爆発に耐えてるんですよね……。身体の表面の構造があたし達の予想通りなら、外部からの衝撃にはとことん強い事になるし…………」
「…………待て、何だその『イージス艦の至近爆発』と言うのは」
またポロッと、とんでもない独り言を垂れ流す黒アリスに、三佐は眉間にシワを寄せ、他の自衛隊員は目を剥いていた。
こんな事でも、黒アリスにはもはや些事である。随分昔に感じるし。
「あー、あったデスねーそんな事」
「勝左衛門は記憶リプレイ禁止ね」
「なしてデス!!?」
もし、弱点への攻撃が有効でなかったとしたら、あの時以上の衝撃エネルギーか、圧倒的な運動質量による物理エネルギー攻撃しか選択肢が無い。
「と……なると、大口径の砲熕兵器。大質量の弾頭…………あの図体に?」
自衛隊に限らず、世界では大型のランチャーから兵士が携行するレベルの武装まで、ミサイルなどの誘導兵器への更新が進んでいる。
黒アリスがボルトアクションライフルのように使っている106ミリ無反動砲だって、近いうちに対戦車ミサイルなどに完全に取って代わられ、退役していく兵器だろう。
何故ならば、ミサイルの方が命中率が高く、扱い易く、戦術的に有効だからだ。
だが、外部での爆発に対しては、巨大生物は非常に高い防爆性能を有している。弱点を突かないにしても、有効なのはやはり単純な運動質量と速度による物理エネルギーだろう
問題は、全長600メートルを超える巨大生物に決定打を打てる質量兵器など、存在していないという事だが。
「80センチ砲でも……足りないだろうなぁ…………」
かつて、列車のように線路上を移動させて運用する、80センチ砲なるとんでもない兵器が存在した。
しかし、当然の如く線路に沿った向きにしか砲撃出来ず、発射速度も最短で30分間隔。
とてもじゃないが、連射は無理だ。
それに、巨大生物が30分も一か所に留まってくれているとは思えない。
となると、発射角度がそれなりに融通が効き、かつ数が撃てる大口径兵器、という事になる。
そんな条件で、黒アリスが頭をフル回転させてアーカイブ内を検索し、沈黙すること約5分。
「…………三佐、あの怪物をもう一度羽田におびき寄せる事は可能だと思いますか?」
「聞こう」
黒アリスが顔を上げて口を開くと、釘山三佐が指を弾き、それだけで察した部下のひとりが地図を長卓の上に広げた。
「ご存知の通り、あのバケモノに爆弾の類は効果薄です。身体の穴を攻撃して効けば良いですけど、ダメならもう力技しかありません」
「それって……弱点攻撃がダメなら、自衛隊もそうするんじゃなかった?」
魔法少女刑事が、黒アリスに確認するように尋ねる。核の件で若干信用が無い。
「二の矢としては間違ってませんし、他に選択肢もありません。あたしとしても成功を祈りたいです。でもダメなら、あたし達に出来る方法を使います」
魔法少女達は、いずれも普通ではない超常の力が使える。
巫女侍の超怪力。
ビキニカウガールの魔法の投げ縄。
鎧武者の不退転の鎧。
海賊少女の海賊船。
魔法少女刑事の超警察権限。
銃砲兵器を自在に作り出す黒アリス。
そして、
「あたし達であの怪物を羽田空港におびき寄せ、足を止めた上で、大和級二番艦『武蔵』の46センチ砲に集中砲火してもらいます」
黒アリスが白羽の矢を立てたのは、失われた巨大戦艦を甦らせた、ここには居ないもうひとりの魔法少女。
史上最強の46センチ砲を搭載した『武蔵』を駆る魔法少女艦長、宮口文香である。




