0002:どちらかというとクライムムービー
旋崎雨音は中学出たての高校一年生だ。
4月から花の女子高生デビューである。
身長160センチ。体型は発展途上。3サイズは黙秘。この辺は追々。
高校デビューは端からする気が無く、鎖骨程度まで伸びたストレートな黒髪。
化粧っ気は皆無に等しいが、中学ではそこそこモテた事を考えれば、容姿はそれなりに良い方。
人並の社交性は持ち合わせるが、どちらかと言えばひとりの方が気が楽だと考えている。
普段は無表情というか淡白というか、クールでドライな少女だ。
かと言って、仲の良い友人がいないワケでもない。
友人なら知っている事だが、雨音はあまり自分の趣味をおおっぴらに語る気はない。
恥入る事ではないのだが、年頃のお譲さんが趣味とするには、些かマニアックに過ぎると知っているからだ。
イケメンアイドル、ファッション誌、話題のスイーツ――――――甘いもの自体は嫌いではない―――――――と、同世代の少女達が血道を上げる物には、それほどの興味が持てない。
話題性の共有という観点において、それもあんまり良くないなぁ……、と雨音もボンヤリ考えてはいたのだが。
今になって思うと、せめて興味が持てるジョニーズ――――――イケメン専門芸能事務所――――――タレントくらいはチェックしておくべきだったか、と。
目の前の悲嘆に暮れる大男を見るに、雨音は今、心からそう思う。
これは自分の招いた結果なのだ。旋崎雨音の罪の形に他ならない。
カッコ良く言ってみても、事態は全く好転しないのだが。
「………………いやコレ、あたしが悪いの?」
「だってこの姿はアマネちゃんが望んだからじゃないか! ヒドイよヒドイよー! こんなむさ苦しいオッサンのマスコットなんて夢も希望も無いじゃないかー!!」
「え、う……うーん……。でも相棒みたいなものだって言うから……。そ、それに鉄火場だとすごく頼りになりそうな見た目じゃない? 警察とか組織に包囲されて山ほど撃たれても平然としてそうな――――――――――――――」
「どんな魔法少女なのさー!! うわぁーーーーーーん!!!!!!」
「…………その顔で、そんな泣き言言わないでほしい」
うずくまって泣き崩れる、見た目40代のタフガイ。
泣きじゃくる子供よりも尽す手が無い存在から視線を逸らし、雨音は自分の手の中の物体へと目を向ける。
そこには、「魔法のステッキ」なる素敵な代名詞で呼ばれる、50口径はありそうな鋼の固まりが握られていた。




