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いまさら魔法少女と言われても  作者: 赤川
Wave-02 ヒロインはもうひとりの方で良かったのでは
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0008:実際に見たら恐いと思われ



 神奈川県室盛(むろもり)市、割桐わりきり


 市街中心より北にあるこの地区には、町工場や倉庫といった裏方の仕事をする会社が多く存在している。

 また、一般人の客よりも同業や業者を相手にする事が多い為、午後5時を境に人通りはほとんど無くなり、午後9時ともなると足音ひとつ聞こえない程、静まり返ってしまう。

 時折警察の巡回が通りかかるだけの、都会の無人地帯だった。

 そんな場所なので、どこかの社屋で防犯用の警報など鳴り響き出した日には、地区全体に知れ渡ってしまう。

 当然、巡回警備を行っていた警察も飛んで来ると言う寸法だ。


 何かをやらかす犯人としても、そんな派手な騒ぎを望んでいたワケではない。隠密裏に全ての事を運ぶつもりだった。

 だが、所詮は素人という事だろう。

 正面扉でも裏口でもない、壁の高所にあった窓を割り侵入させた(・・・)が、内側に動体センサーが設置されているとは、想定が甘かった。


「ムヒー!! ヤバスヤバスヤバス警察ッくーるー! テテンちゃんみくるちゃんマオ姉ピナっちハーブたんヲーちゃん、ちょっぱやで姉妹を連れだすでゴザルー!!」


 ある倉庫に侵入した集団は、そこに積まれていた細長い木箱を運び出そうとしていた。

 木箱は幅と深さが60センチほど、高さは2メートル以上ある。

 一団はひとりを除いて、黙々と木箱を運ぶ作業に従事していた。


「あー! 全部は連れて帰ってあげられないから……こ、コレ! あとは~~~~~~~あ! これ! 絶対コレ! コレだけは絶対運んでくだち!!」


 灰色のトレーナーにフードという姿で顔を隠しているのは、服の上から分かるほどに痩せている男だ。背丈の方は割とあるので、余計にひょろ長い印象を受ける。

 真っ暗闇の倉庫の中、ひょろ長い男の持つ懐中電灯だけが光源だった。

 その僅かな明りの中で、微かに女性らしきシルエットが垣間見える。


「みんな急いでくだち! みんなを誰かに見られたらと思うとボクぁ……ボクぁ……!」


 ひょろ長い男は焦りを滲ませ、懐中電灯を暗闇に泳がせ右往左往している。

 その男に女性のひとりが近づくと、慰めるかのように抱き寄せた。


「うう゛ぅ……ありがとうマオ姉、魔王なのにマジ天使……。で、でも今はボクの事より他の娘の事だお! 急がないとみんな見つかっちゃうだおー!!」


 と言いつつも、ひょろ長い男の方も全力で女性を抱き返していたが。


                          ◇


 那珂多浩史(なかたこうじ)巡査部長は、若い同僚の警官と共に指令にあった倉庫会社へ急行していた。

 数分後に現場へ到着してみると、倉庫の警報(アラーム)が大音量で響き、正面に付けられた赤色灯が景色を真っ赤に照らし出しているのが確認できる。


「ここっスね、那珂多さん。アレ、ワゴンっスか?」

「あー……割桐013より本部、通報のあった谷部倉庫へ現着しました。警報は動作中。倉庫前にワゴン車一台を目視。他、怪しい人物確認できません。庫内を調べますか。どうぞ」

『本部了解しました。応援を待ち倉庫内を巡回して確認してください。不法侵入者を確認できた場合は速やかに確保してください』


 警官二人は報告を入れると、応援が着くまで待機するよう指示される。

 警官といえども相手が数で上回っていた場合、返り討ちにあったり、最悪殺害の上拳銃まで奪われる、そんな事態になりかねないからだ。


 だが、事態の方は警察の応援を待たなかった。


「あ! お!? 那珂多さん那珂多さん!!」

「割桐013より本部、えー倉庫前動きあり。正面口より一名……訂正、二名確認。二名、倉庫内より荷物を持ち出してる様子。指示を乞う」


 もはや警備システムは働いているので気にもしないのか、正面から堂々と、ひとつの長い箱を抱えた二人分の人影が出てくる。

 箱を二人して抱えているのは、若い女に見えた。だがおかしい。何かが色々おかしい。

 運転席側の若い警官は、薄闇を半眼で睨みながら、クルマ前面のライトを上へ向ける(ハイビームへ)


「うおッッ!?」

「あ……? なんじゃありゃ?」


 すると、赤色灯でぼんやりとしていたヒトの姿が、今度こそハッキリと浮き彫りになった。


 それは明確なヒト型であったからこそ、警官二人は、正確にそれら(・・・)が何であるのか認識できない。

 特に、那珂多浩史巡査部長、御歳46歳には尚更理解出来なかっただろう。


 実際に歩き、動いている、フル可動式等身大美少女フィギュアの存在など。



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