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いまさら魔法少女と言われても  作者: 赤川
Wave-02 ヒロインはもうひとりの方で良かったのでは
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0001:警察には酷な話だと思われ



 ここ最近、ニュースにて奇妙、あるいは奇天烈な出来事が報じられる事が多くなった。


 千葉県にある国内最大のアミューズメントパークが無数の犬に占拠され、山手線内をSLが暴走し、首都高では夜な夜な異なるスポーツカーが高速機動隊と追いかけっこを演じ、強盗されまくっている銀行は軒並み信用を落とし、路上駐車しているクルマが破壊される事件が頻発し、霞が関では暴力事件が立て続けに起きており、国会には正義のレスラーが乱入し、某国に不法占拠されている島には謎の釣り人が上陸し、東京湾には海賊船が出没し、戦国武将が無法釣り人を海に叩き込み、テンガロンハットのガンマンが愛馬シルバーで渋谷を駆ける。

 もうワケが分からない。


 それらの事件に共通しているのが、一件として犯人が逮捕されていない事だ。


「警察はもっと優秀だと思ったんだけどなぁ…………」


 と言いつつも、捕まらずにいたのは雨音も同じ事だったが。


 この春に高校に上がったばかりの成り立て女子高生、旋崎雨音(せんざきあまね)は、風呂上がりで身体をホカホカさせ、髪の水気を取りながらテレビのニュース番組を見ていた。

 そこで報道された異常な事件の背景に、雨音は心当たりがあり過ぎた。


「案の定大変な事になってるし…………」


 不特定多数の人間に、特別な能力をバラ撒いている連中がいる。

 『ニルヴァーナ・イントレランス』を名乗る何者か。その正体は、結局最後まで分からなかった。

 その何者かは、『適性』とやらがある人間を強制的に拉致し、特別な能力を押し売りして来るのだ。


 雨音以外の人間の中には、喜んで能力を受け取った者もいたらしい。

 だが、どんな裏があるか分からない、どんなリスクがあるか分からない、どんなしっぺ返しを喰らうか分からない、そんな(ろく)でもないモノに、自ら手を出すなど、ロクな結果を招かないだろうと思う。


 とはいえ結局、雨音もその押し売りからは逃げられなかった。

 多少(さか)しい所を見せても、所詮雨音はただの人間でしかなく、超常の存在相手では刃が立たなかったのだ。

 そして雨音が危惧(きぐ)した通り、ここ数日でどう見ても普通ではない事件が山ほど起きている。

 いっそ、世間の常識感覚が塗り替えられるほどの勢いで、だ。

 『ニルヴァーナ・イントレランス』は、能力の使い方には一切関知しないと言った。

 ならば、犯罪に走る人間が出るのは、火を見るより明らかだろうに。


「一体何を考えてるんかな、あの連中は」


 あるいは、この混乱こそが目的か。

 それとも他に何か狙いがあるのか。


 雨音をニルヴァーナ・イントレランスへと導いたBDディスクは、気が付いたら影も形も無くなっていた。

 一瞬、夢オチを期待したが、夢ではなかった事は、その場ですぐさま証明されてしまったが。


「うぅ~~~~。とにかくもう関わらない…………。何が起こっても首突っ込まなきゃいいんだから……もう二度と使わない……使わない」


 頭からタオルを被り、(うつむ)く雨音は念仏のように繰り返し唱える。


『それでは、昨日の神奈川県室盛市で起こった事件の続報です――――――――』


 その念仏が、ピタリと止んだ。

 ニュース番組のアナウンサーが、次のニュースへ話題を移す所だった。


『昨日、神奈川県室盛市の上空にUH-60「ブラックホーク」と思われるヘリが侵入、地上へ向けて無差別発砲を行いました。奇跡的に死者は出ませんでしたが、転んだなどして軽傷を負った方が複数出ています。警察ではこのヘリの捜索を続けていますが、現在までに行方を示す手掛かりはなく、今後は自衛隊とも連携し――――――――』


 ニュース映像には、一般視聴者が携帯電話で撮影した事件の動画が映し出されている。


「…………うぅ、エライ事になってる」


 両手で顔を(おお)い、今にも死にそうな(うめ)き声を上げる雨音さん。

 映像の中では、ヘリの中から街中へと、哄笑を上げてドアガンを撃ちまくる、黒いエプロンドレスの金髪美少女が、しっかりと映っていた。



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― 新着の感想 ―
控えめに言ってテロじゃん
[一言] お前もかよ
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