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雷が落ちる。
木が朽ちる。
そんな中、表情を変えずに平然と整えられた道を進む両者。
目の前には巨大な門。
黒く、飾り気の無い門の扉は既に開かれており、魔王が城へ招待したように感じられた。
脇目も振らずに迷わず城内へ足を踏み入れるルジュを小走りで追い掛けたリリィ。
最上階へと続く螺旋階段が二人の視界に写る。
上れ、と命令するように雷が鳴り響く。
窓一つ無い城内は薄暗く、ルジュが取り出した蝋燭だけが明かりを灯していた。
カシャン、カツン、カシャン。
空洞な城内に響く鎧の音。
カシャン、カツン、カシャン。
焦るわけでも、ゆっくり進むわけでもない。
この先に進む事が必然なのか、当たり前なのかそれは勇者にしか分からない。
「ようこそ。魔王の城へ」
長い長い階段を上り、たどり着いたのは最上階。
闇の空間を表すかのように広間は真っ黒に染まっていた。
黒く、古い扉。
シミ一つない黒い絨毯。
完全武装した勇者と無防備な妖精を出迎えたのは魔王ではない。
美しく、妖艶な女性が広間の真ん中に立っていた。
露出度の高い真っ黒なドレスを着こなし、右手には扇子を持ち、顔の半分を隠している。
大きな髪飾りが雷の光で二人の視界に写る。
女性が一言発しただけで緊迫した空気が漂う。
心が押しつぶされそうな感覚の中でルジュは笑みを浮かべ、リリィは強い眼差しで女性の背後にそびえ立つ大きな扉を見つめた。
「わたくしは魔王の母、ローザ。息子に何か用かしら?」
「ルジュ=ソムティーズと申します。僕は父である勇者の変わりにあなた方を滅ぼしに来ました。魔王はその扉の中ですね?」
丁寧な言葉遣いとは裏腹に笑顔で目的を躊躇無く告げる勇者。
魔王の妻、ローザは音を立てて扇子を閉じると微笑み返した。
雷がローザの背後で花の変わりに光をちりばめている。




