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「そろそろ出発しましょう。朝食はどうします?」
「そうね。闇の城はここからどれくらいかかるのかしら?私は自然そのものを食としているから平気よ」
森の真ん中にそびえ立つ黒い城。名はない。
人々は魔王が住む城を闇の城と呼ぶ。
葉の無い木々が生えている森のどこからでも城が見えるが森は広く、障害物を避けて城まで五日程かかる。
「そうですか。うらやましいですね。僕は人間ですので自然は食せません。後、二日程でしょうか。僕が森に入ったのが三日前ですから」
ルジュは柔らかい笑みを浮かべ、闇の城を見上げるように眺めた。
城は塔のように高く、雲がかかっており、全体を見ることが出来ない。
雲は真っ白ではなく灰色で時折雷を光らせる。この様子だともう時期雨が降るだろう。
「結構かかるのね……城は目と鼻の先にあるのに。貴男、魔法は使えないの?」
「移転魔法ですか、残念ですが今は使えません。先へ急ぎましょうか」
一瞬悲しげに笑みを緩めたルジュはリリィに背を向けて歩きだす。
それに続いてリリィは乾いた地面から体を少しだけ離し、ゆっくりと飛んだ。
自称勇者と妖精が歩き始めて半日。
時刻はお昼過ぎ。
降りそうで降らなかった雨は突然大雨となり、二人に降り注いだ。
空では休む間もなく雷が鳴り響いている。
「嫌だわ。雨よ」
「そうですね。どうかしましたか?」
先ほどまで低く飛んでいたリリィは素足でぬかるんだ地面に降り立ち、ため息をついた。
その表情は青白く、今にも目蓋を閉じてしまいそうだ。
ルジュはリリィに視線を向けることなく歩き続ける。
「羽が濡れるわ。ここから歩きなんて……最悪」
「羽、ですか?」
隣を歩くリリィに向きを変えたルジュ。だが羽などどこにも見えない。着ていた焦げ茶色のローブを脱ぎ、そっとリリィの頭から被せた。




