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魔王様のリコル  作者: aaa_rabit
魔界扁
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リコル様、首輪をつけられる

 何の前触れもなくぐにゃりと歪み、気づけばルーデリクスの膝の上。


この人本当に私を膝の上に乗せるのが好きだよね~ってあれ?オコッテマス?


「…アリサ」

「うひゃい?!」


 突然名前を呼ばれて吃驚するアリサ。彼は長い指先でアリサの額をとんと軽く押した。めっ、とどうやら怒られているらしい。のだがどれに対して?


「リコル様が流した魔力で現在魔王城の半分が機能を停止してるんですよ。自重してください」


 はて?と首を傾げたアリサにジェイルさんが魔王様を翻訳する。あ、ジェイルさんて実は魔王様の宰相さんで、魔王様のアイコンタクトだけで意味を理解する凄い人なのだ。魔王様の翻訳をしてくれるので助かっている。なんとなくの感情は判るようになったけど、細かいことはただ見ただけじゃ判らないのだ。


「あ、はい。ごめんなさい」

「……」

「暫く陛下の元で落ち着けてからにして下さいね。謁見者も全員当てられたみたいだから今日はもう終わりだな。ああ、そうだ陛下。頼まれたものを用意しましたよ」


 懐から出されたのは腕輪?にしては随分と大きいようだ。銀細工の鎖が複雑に絡み合い、赤いルビーがぶら下がっている。綺麗だなぁと覗き込んでいると、魔王様に肩を押さえられた。あれ?なんか嫌な予感。


「あはは…。ルード放して?ジェイルさんも怖いですよ~」

「何も怖くありませんよ、リコル様。ちょっと失礼」


 身動きがとれない私の腕、ではなく首に手が伸ばされる。これっていわゆる首輪?あはは。……こんちくしょー!


 魔術によって接合部分は全くない。要するにとれないって事だ。良くお似合いですよとジェイルさんが言っているけど冗談ではない。魔王様も無表情には変わりないけど嬉しそうだし。


「これはリコル様の魔力を相殺する魔具なんですよ。陛下直々の魔力が込められていますから、暴走しても危険はないです。思いっきり魔術の練習をしてください」

「ついでにリコルだと周囲に知らしめるため?」

「…その髪と瞳を見れば一目瞭然ですよ。ああ、本日は陛下とお過ごしください。むしろ使い物にならないんで引き取って下さい」


 さらりと本音を咬ましたジェイルは男気たっぷりな礼をして出て行った。ちょっと待ってください。このまま放置しないでー!


 アリサの絶叫も虚しく、あれだけ重たい扉をあっさりと開けてジェイルさんは出て行ってしまった。全体の強度が増している分、扉とか物が重たいのだ。アリサでは開けられないので、大抵誰かが開けてくれるのを待つしかない。

 遠くを見つめているとくいと髪を引っぱられた。


 何でしょうか?


「昼寝?」


 ふるふる


「お風呂?」


 ふるふる


「ご飯?」


 ふるふる


「散歩?」


 こっくり


 大の大人がそんな仕草をしても気持ち悪いだけだがルーデリクスがやれば可愛いになる。美形の神秘か!と思いつつ手を繋いで謁見室を出た。



「やっぱり外は気持ちが良いね」


 ごろりと芝生の上に寝転がったアリサは空へと手を伸ばす。魔界といえば、年中闇夜に覆われているイメージがあるけれど全然違う。というより地球とあまり変わらない。太陽が2つあって月が5つあるところがちょっとおかしいけど、四季だってあるし草原もある。

 そう。今いるのは草原。見渡す限り、青々とした緑が眩しいくらいだ。ここは魔王城の敷地内。魔王城は50キロ四方あるのだ。凄すぎです。城は国の権威だけれどやりすぎではないか。そう聞いたところ、シェナさんから返ってきた答えはこれでも家の敷地(淫族の本拠地)よりは小さい、らしい。どれだけでかいのよ。


 ちなみに魔王城本体は大体全長10キロ。つまり5分の1が建物にとられ、他は演習場や食料庫、牧場など様々ある。10キロの家なんてあり得ないと思うだろうが、魔王城へと登城できる者は全員転移魔術(高位魔術に匹敵する)が使えるので問題ないらしい。勿論私はそんなもの使えませんよ。だからシェナやサハンとの勉強部屋は私が通える範囲内に設置されている。王の居室近くまで行けるのは二人をルードが許可しているからなのだ。


 風に任せて目を閉じているルードは文句なしに格好いい。というか、夏のサイダーの宣伝とかに出てきそうなシチュエーションだ。ちょっとだけ面白くなくて、状態を支えている片手のバランスを崩してみる。えっ?って感じで私を見ているルード。重力に逆らわず柔らかい草が受け止める。


「これの仕返し。ちょっと怒ってるから」


 自分の力が制御できないから迷惑をかけてるのは判っている。でも、なんかルードの所有物って感じでいけ好かない。実際ルードのリコルなんだけどね。気持ちの問題かな。これが外される時はいらない時なのかなって思うと悲しいから。


 悲しみが伝わったのか、大きな手が頭をよしよしと撫でる。抱き寄せられて背中をリズム良く叩かれた。完全な子供扱い、いやペット扱いなのだろうがアリサは気に入っている。この腕の中は安心できるのだ。温かい陽射しにとろとろと目蓋が閉じていった。


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