世界+改変=?
「ルード、次それが食べたい」
言われるがまま料理を口にしたルードから奪い取るようにして私は食事を取る。所謂給餌という方法によって、飢えた胃袋を満たしていた。それを傍目で見ている面々の表情は愉快げであったり、赤面していたり、同情を浮かべていたりと三者三様であったが、私は気にしない。というか、ここで気にしたら負けだと思う。
……アリサ?
んむ?ん~、羞恥心の問題でちょっと
そんな不思議そうな顔でこっち見ないでくださいよ、ルード。元はルードが悪いんだから。……そう考えたら、ちょっと腹たってきた。……って、そこは触っちゃダメ!
慌てて押し留めようとするが、ルードの腕力には敵わず、変な声が出そうになるのを咳払いで誤魔化す。吐かされて、ルードの血を飲まされて、公衆の面前で真っ裸にされた挙句、ルードの上着だけを身につけた中では、現在進行形でルードの手が這い回ってるのです。しかも、魔力を籠めて触れているらしく、くすぐったいだけでなく気持ち良……ゲフンゲフン!とまあ、え?何この嫌がらせって感じなわけですよ!もう穴があったら入りたい気持ちを通り越して諦めが入ってきたけどさ。いや、でも身体は本当に正直だよねぇ。ぶっちゃけルードが欲しくて堪らない、みたいな?……え?あ、流石にここではいたしたくないからね、ルード。公開プレイなんて嫌過ぎる!!
「赤くなったり青くなったり、忙しないな、ルドヴィーのリコルは」
「そういうレベルなのか、あれって!?」
「我もそなたとなら構わぬぞ」
「俺が構うっつーの!てか離せ」
二人を直視していられなくて、アオイはジルシールに顔を押し付けていた。それを満足そうに抱きしめるジルシールの顔はだらしなく緩んでいる。
「あんたも大概やべぇよ」
「初々しくて微笑ましいじゃないか」
「……おたくの陛下もえらい変わり様で。実は別人って言われても驚きませんよ、俺ぁ」
「ボクは今の陛下の方が愉しくて好きですけどねぇ。リコル様も面白いですし」
「そういうもんですか」
「ロシェ殿も”宝”を得れば分かるさ」
こればかりは経験してみなければ分からないだろう。まだ年若いロシェに分かれというのも酷な話だ。
「君のお兄さんは、違うみたいだけどねぇ」
からからと笑うウォーリアスの視線の先には、一組の男女の姿があった。意味深な言葉に問い返そうとロシェが口を開いた時、
「……っルードの変態魔王!うわ~ん、ジェイルさ~ん」
「ああ、終わりましたか。……て、ちょ、待っ、リコル様止まってください。これ以上、近付いてはなりません!」
切羽詰まったジェイルは制止の声を上げるが、ものともせずにアリサが駆け寄ってくる。瀕死の覚悟を決めたジェイルだったが、一瞬早く動いた揺らぎを感じて、安堵の息を吐いた。
ルーデリクスの膝上に戻されたアリサは不満を露わにしているが、ジェイルの命が救われた事に気付いただろうか。
「……まあ、こんな事もあり得るから気を付けなさい」
「恐え~ですよ!!……あ~マジでやばい」
他人のモノに触れたら最後、消炭にされてもおかしくない。それは、おおらかな気性の天属でも同じ事だ。だからこそ、彼等にとっては、ルーデリクスの執着心をいまいち理解していないアリサの行動が、一番恐ろしかった。
「真に恐ろしきは、無邪気な王の”至宝”と言ったところか。そなたらも苦労するな」
ジェイルの知る限り、常に不機嫌を隠そうともしないジグリースが、のんびりと腰掛けていることに違和感を禁じ得ない。その理由はルーデリクスが天界の大部分を自分の支配下に置いてしまったせいなのだが、ジグリースは気にした様子もなかった。
「天王陛下。ご無沙汰しております」
「銀狼か、久しいな。変わらずあれの子守をしておるのか」
「子守など畏れ多い。俺はただ、魔王陛下に忠誠を捧げているだけですよ」
ジェイルをじっと見つめていたかと思えば、興味を無くしたようにジグリースは視線をルーデリクスの方へ戻した。
「……ふむ」
全力でルーデリクスに抗っていたアリサは、外側から引っ張られる感触にこれ幸いと便乗した。結果としてルーデリクスの腕の内から脱出することには成功したが、今度は何故かジグリースの中に収まっている。
「あまり構い過ぎるとコレに嫌われるぞ」
いつの間にか、室内は静まりかえっていた。
「……」
「ああ、そう言えばお前は昔から先代に似ず器用であったな。だが……ここは余の領域よ」
間近で食らったアリサは勿論のこと、その場に居合わせた全員が身の内を暴くような傲慢な力に不快を憶えた。作り手による完成された世界が宮殿を中心にして放射状に行き渡り、世界はまたも様相を変えていく。力の隅々が行き渡ったことで、ジグリースの顔は大きく歪み、忌々しげに舌打ちする。急にジグリースの纏う空気が変わったことにより、アリサは戸惑いのままルーデリクスの元に戻った。
「ルード。ジグ様がおかしい」
「あれが我々の知る天王陛下ですよ、リコル様」
「ジェイルさん!……ちょ、ルード。やだってば!」
ルーデリクスの手が、再びアリサの全身をまさぐり始める。自らルーデリクスの元へ逃げ込んできたことを後悔するも、最早手遅れだった。
「必要なことと、どうかそのまま暫く陛下を受け入れてください」
「え?」
大人しく身体の力を抜けば、それに呼応してルーデリクスの手つきも優しくなる。
「長らく天王陛下の恵みを受けていたせいか、リコル様の魔力から陛下の魔力がかなり薄くなっているんですよ。これって、かなりまずいです」
何が拙いのか、アリサには理解出来ない。しかし、理解していないのはアリサ達異世界組だけのようで、ここの住人達は当然のように肯んじている。
「自らの”至宝”を奪われれば当然であろう?何故それがお前にはわからぬのだ!」
「えーと……。ジグ様、何で怒ってるんですか?」
「余は怒っておらぬ!」
カルシウム足りていないのかと疑問に思う程度には苛立っているように見えるが、余計なお世話だと吠えられては首を竦めるしかない。
……面倒な
「ルード?」
アリサの首筋に顔を埋めていたルーデリクスが、一旦手を止めると魔力を解放する。
また世界が変わった。
ひたすら、ルードは変態行為に及んでます。どうなってるのかは、ご想像にお任せします。
前回から今回に至るまでのルードの奇行が明らかになったようななってないような……。(単なるセクハラじゃないんですよー)
次こそは必ず。