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魔王様のリコル  作者: aaa_rabit
魔界扁
17/66

リコル様、まな板の上の鯉

下品表現入ります。ご注意ください。

 なぜあの女の元に?


 ルーデリクスが怪訝にするのも無理はなかった。移動先が勉強部屋だったと安心したのも束の間、アリサが客室の方へと向かっていくのだ。それだけならまだしも、アリサの行く先は淫族に宛われた客室。会議場を見回せばルーデリクスからほど近い所で族長のバースが座り、その後ろにシェナも控えている。


 流石、元花嫁候補といったところか。アリサほどではないが、強大な魔力は淫族の部屋に留まっている。これが先日アリサが暴走しかけた原因のと考えたところで、弁論が止まっていることに気づいた。


 脂汗を掻きながらこちらを見るジェイルに、どうやら魔力が漏れ出たらしいと嘆息。瞬く間に充満していた濃密な魔力が霧散し、一同は安堵を浮かべていた。


「一体どうしたんですか、陛下?」


 再開されたのを確認し、頃合いを見計らってジェイルが話しかける。


 アリサが脱走した。


「脱走!?……いえ続けてください」


 出席者の咎めるような視線を受け、ジェイルは慌てて声音を抑えた。


 隣室から消えた。


「え?あ……本当ですね」


 ルーデリクスの魔力に覆われているため、魔王城で気配を探るのは難しいのだが、傍にいる機会が多いことと、この場合ルーデリクスが一時でも抑えてくれた為、辛うじて探知を可能にしている。


「これは精猫の間。淫族の客室じゃないですか」


 行ってくる。


「待ってください!今貴方に行かれるのは困ります」


 転移しようとするルーデリクスの腕を慌ててジェイルが掴んだ。抗議の視線を受けるが、ジェイルは頑として譲らなかった。


「ただでさえ遅れているのです。これ以上伸ばすのは、各領地にも影響があります」


 主やその一族不在の今、留守中の各領地では下位魔属の動きが活発になる。ヒエラルキーの底辺に位置する彼等は数も一番多く、それを統率するには上位魔属ほどの力でなければ不可能だ。会議が延びるほど、抑圧の効果は薄まっていく。そうなれば数に明かせた暴力によって、深刻な被害を受けるだろう。


 そんなもの、と思ったが、衛兵に連れ戻させますからというジェイルの言葉に渋々ルーデリクスは引き下がった。


 数時間後、元花嫁候補の愚かさを甘く見ていたジェイルは頭を抱えることになる。




 アリサの現状を一言で表せば、絶体絶命に尽きる。カロンズースの言葉に薄々そうかなーとは思ったけれど、これは恥ずかしい。というか、何の羞恥プレイでしょうか。


「気を失いたい」


 今ほど切実に願ったことはない。高校の部活で過呼吸になるほど頑張って走る友人に、羨望を持ったことはあったが、それ以上だった。だが悲しいかな、こんな事態に陥っているにも拘わらず、頭はクリーンなほどすっきりしていた。


「ま、その内離れなくしてやるよ。ほんっと、あんたの魔力はそそられる」


 ちろりと赤い舌が唇を舐める。なまじ顔が良い為、ちょっとした仕草で色気も倍増なのだがどうもいかん。やっぱり目が肥えすぎたのだろうかと、妙に落ち込んでしまった。


「ねー、私お腹減ったんだけど」

「俺もだ」

「……体力持つかな?」

「心配しなくても一発ヤれば、天界に連れてってやるよ。安心しろ」

「いや、貴方の技術を疑うわけじゃ……って何言わせるの!」


 もしかして毒されてる?にやにやしているカロンズースの頬を張り手したかったが、かちゃりと鳴る金属がそれを阻む。今のアリサの状態はまさにまな板の鯉。いや、鯉よりも酷いかも。


 部屋の内装は先程とは一変してどこの一流ホテルですかと問いたくなるような程豪華で(←ここ重要)、部屋の中心にでかでかと置かれたベッドはルードのベッドよりも更に大きいサイズ。真っ白なシーツには甘ったるい香りが染みこみ、思考を奪っていくような錯覚に陥る。壁には鞭とか長い棒のようなものとか、一体何に使うのか疑問に思うようなものが多数かけられいるが、流石にここで聞く勇気はなかった。


 なるべく視界を上に固定しながら(上からぶら下がる赤い紐は何だろう?)、どうにか抜け出そうと藻掻くがシーツの皺が寄っただけだった。


「無駄だ。お姫さん程度の魔力じゃ破れねーよ」


 程度って失礼な。これでも、ジェイルさん曰く相当高いらしいのだが。


「魔王様もなんであんたみたいな弱い奴を選んだんだろうな。俺達のマ……おっと、危ねぇ」

「態とらしすぎる。っていうか、ここに来る前に本人と会ってるし」


 嫌なことを思い出してしまった。四肢を繋いだ鎖から逃れるのを諦めて、アリサはベッドに身を任せた。これから始まるのは食事という名の饗宴と聞かされている。餌はアリサ。別に操立てているわけではないが、初めてがこれかと思うと泣けてくる。喜ばせるだけだから泣かないけど。


 きっと、首謀者は今も安全なところから見ているのだろう。哀れに震え上がって泣くのを期待していると思えば、溜飲が下がる。そんな可愛らしい女だったら、魔界に来た途端逃げ出していた。


「んじゃ、これからすることも判ってるよな」

「食事でしょ?」


 カロンズースの口角が上がる。一拍遅れてアリサも気づいた。


「準備が整った。んじゃ、まぁディナーを始めましょうかね」


 メインディッシュは極上なる魔王のリコル。


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