浮動大陸
伝説、というのは往往にしてはるか過去に実際のできごとだったりする。
実際に見たことがなくても、本当ならばあり得ないという話であっても。
それが昔の人が受けた印象であるというのであれば、それが本当のことになる。
そんな昔話を集めている俺であったが、ずいぶんと不可思議な話を聞いた。
それが浮動大陸という伝説だ。
聞いたのは、砂賀町にいる古老。
なんでも彼のはるか祖先が見たことらしい。
大陸と言っているが、実際には大きめの島といったものであって、今でいう大陸とは全然違うということだけは確認をしておいた。
はるか過去にこの地にいた豪族が、目撃してくれたという話だ。
今は砂賀城があるが、その昔にはただの山があったという。
その稜線の、山頂とも言えないようなところにはるか昔にはやぐらを立てて、そこで見張りをしていたそうだ。
敵が来たら報せ、あるいは戦うために数人が駐屯をしていたという。
そこで見張っていたある日の夜。
突然大きな振動があった。
今でいうところの地震だ。
慌てて櫓から外に出てみると目の前にあったはずの土地が大きくえぐれていた。
ばらばらと空から雨のような何かが降ってきて、それが土くれだということに気付くのに時間はかからなかった。
見上げるとはるかに大きな土地が上へと上がっていて、どんどんと宙へと浮かんでいくという。
それを見張りが見たものだから、本当かどうかと当時の豪族の一人が見にいったのだという。
実際に大きなクレーターが出来上がっていて、木々もなぎ倒されていた。
それが浮動大陸という伝説になっているのだという。
実際に砂賀城の向こう側には大きくえぐれたあとがあるが、1000年どころか5000年は昔の出来事のようだ。
それぐらい過去の出来事であることは、炭素年代測定からもはっきりとしている。
しかしながら実際にあったことということは間違いがない。
ちなみにその浮かんでいったものについては、どこで何をしているのか全く分からないという。
往々にして伝説というのはそんなあいまいな終わり方をするものだ。




