第三話
「40点以下補修って聞いてないよな~」
「な~」
休日に補修をくらい、テンションは最悪。
そんな日だけど関係無くスピーカーが鳴り響く。
《注意!注意!虚獣発生!河川敷に出現!隊員は直ちに出動せよ!》
「またかよ」
俺たちは現場へ急行する。
そして、そこにいたのは――
「でかくね……」
「虚獣っていうか、巨獣やな」
推定25mはあるだろう。恐竜のような巨体。口から光線まで吐き出す。まるでゴ〇ラだ。
「一応ちょっと攻撃してみる」
【闇の波動】
「ギャオオオォォン!」
「無傷かよ!?」
「文句言ってる暇あったら攻撃!」
「効いてないのに何で俺も!」
「二人なら効くかもだろ!」
「……それもそうか!」
【異能解放】 【麒麟】
「いくで!【雷獣】!」
カキーン
「反射してきやがった」
「避けろ!」
「くっ……【雷瞬】」
あぶなかった今のがあたってたら....
「油断するなよ」
「分かってる」
「俺が動き止めるからとどめいけよ」
「りょ 【大雷槍】」
「よし、今だ!」
遥翔が虚獣の目を穿つ
「やれ!!」
虚獣が怯んだ隙に、虎ノ介の槍が深く突き刺さる。雷光が走り、巨体が河川敷に崩れ落ちた
「やった、...のか?」
「意外とあっさり...?」
緊張を解いた瞬間だった。
――ズズズ……ッ
崩れ落ちたはずの虚獣の体が、どろりと溶けるように形を変えていく。
黒い瘴気が辺りに立ち込め、裂けた皮膚から異様な魔力が噴き出す。
「ちょ、ちょっと待てよ……これ、ヤバいんじゃ……」
「おい遥翔! あれ、明らかにおかしいだろ!」
あれはやばい俺たちが敵う相手じゃ
河川敷に倒れていた巨獣が、肉を再構築するように膨れ上がり、
目は紅く爛々と輝き、骨のような角が伸びる。
――グガァアアアアアアアア!!
「変異……? ありえねぇ、あんなサイズでワンチャンA級とか……」
「俺らだけじゃ……止められない……っ!」
虚獣が雄叫びをあげた瞬間、衝撃波のような力で遥翔たちは吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられ、息が詰まる。
(.....クソッ、動けねぇ.....! 闇を出しても......耐えきれねぇ....)
その時だった。
「退け、小僧ども」
――ズバァン!
轟音と共に、鋭い斬撃が虚獣の片腕をまとめて切り落とした。
振り返ると、漆黒のコートを纏った1人の影が立っていた。
「国家異能管理局A級隊員、――氷堂蓮。」
冷気を纏った男が一歩前へ出る。
その周囲の空気は一瞬で凍りつき、地面の水分すら白く凍結していく。
「安心しろ。ここからは俺の仕事だ」
「グガアアアアア!!」
変異した虚獣は、四肢を大地に叩きつけながら暴れ狂った。
その魔力は先ほどまでとは比べ物にならない。
「……やっぱりただのA級じゃねぇな」
氷堂蓮が目を細める。
彼の背後では、黒コートの隊員たちが結界を展開し、周囲の被害を最小限に抑えていた。
その隙を突くように虚獣が突進してくる。
――ドガァアアアアア!
衝撃波で地面がめくれ上がり、氷堂は後退する。
こいつ……攻撃に異能を織り交ぜてる!?
虎ノ介が叫んだ。
「おい遥翔! 今の、見たか!? あれ、明らかに異能……だ!」
そう、虚獣の両腕に紫電のような光が走っていた。
雷鳴が轟き、次の瞬間、空から稲妻が落ちる。
「嘘だろ……虚獣が……異能を……!?」
遥翔の全身が総毛立つ。
蓮は一度大きく後退すると、静かに目を閉じた。
「……なら、こらも異能で応えるまでだ」
氷堂の周囲の温度が一気に下がり、吐息が白く凍りつく。
彼が掲げた右腕に、氷の魔力が凝縮していく。
「――異能解放」
【氷獄天鎖】(ひょうごくてんさ)
大地から無数の氷鎖が伸び、虚獣の巨体を瞬時に絡め取った。
もがく度に氷は鋭く食い込み、血と魔力を凍結させていく。
「グガアアアアアアア!!!」
雷撃を放ちながら暴れる虚獣。
だが蓮の瞳は冷え切っていた。
「雷か……悪くない。だが――俺冷気は、全てを止める」
次の瞬間、蓮の背後に氷の翼が広がる。
彼が両手を振り下ろすと、凍りついた世界が一気に虚獣を飲み込んだ。
――ズガァァァァァァァン!!
氷柱が空を貫き、虚獣の体を完全に封じ込める。
絶叫が途切れ、静寂が訪れた。
「終わりだ」
蓮が呟くと、氷の檻ごと虚獣は粉々に砕け散った。
――その光景を見て、遥翔はただ息を呑むしかなかった。
(....これが、A級隊員の力....!)
虚獣が粉々に砕け散った後、氷堂蓮は氷鎖を消し、深く息をついた。
「……やはり、厄介だったな」
その声に、遥翔たちは思わず駆け寄る。
「す、すげぇ……今の、A級の異能って……」
「マジで化け物だな……」
「ありがとうございま――」
だが、氷堂は振り返らず、虚獣が消えた場所をじっと見つめていた。
「……おかしい」
「え?」遥翔が問い返す。
「たかがA級虚獣が……異能を使うなど? あり得ない……」
彼の瞳は冷たく鋭い。
「……“魔界”の気配がする」
その一言に、空気が張りつめた。
「ま、魔界……?」
虎ノ介と遥翔が顔を見合わせる。
蓮は低く呟く。
「普通の虚獣は、この地上に現れた時点で力を大きく失っている。だが、今のあれは違った。まるで……魔界から“生きたまま”来たかのように」
彼の言葉に、遥翔の胸がざわめいた。
(魔界……そんな世界が本当にあるのか? )
蓮は背を向けながら言う。
「――この件は報告する。お前たちは今日見たことを、軽々しく口にするな」
その背中は大きく、しかしどこか不吉な影を背負っていた。
こうして俺たちは知ったのだ。
“虚獣の進化”と、“魔界”という未知の存在を――。
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