『約束』 後編
ファミレスで、ふと俺は口を開いた。
「……あの、幼い頃の事を夢に見たんだ、僕の事を好きって言ってくれる人が出てきた。」
結は手を止め、頬をほんのり赤く染めた。けれど、すぐに微笑みを浮かべて、何事もなかったかのように食事を続ける。
その場は静かに終わり、俺たちは車に戻った。
運転してもらう間、俺は自然と瞼が重くなり、少し眠ってしまった。
夢の中で、あの頃の地元の女の子とその家族が現れる。
引っ越したこと、そして引っ越した先の街──ここだったことを、はっきりと見た。
目が覚めたとき、自然と声が出ていた。
「ちさねぇ……」
その声に反応するかのように、結が前を向いたまま聞く。
「……どうした?」
声の震えと、自分の胸の高鳴りに気づいたのか、結の頬はまた赤く染まる。
「……思い出したの?あんな昔のこと……今更だよね」
小さく息を吐き、彼女は真剣な眼差しで続けた。
「でも……好きだった。今でも好き。これからも、ずっとずっと好き。約束叶ったね。結婚するって、ね、遥斗」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が温かく溢れ、涙が自然に零れた。
目の前の結は、幼い頃の夢の記憶と今の自分を、静かに繋げるように微笑んでいた。
──あの日の約束が、こうして現実になった。
俺たちは手を取り合い、未来を確かめるように、静かに笑い合った。