静寂の平原
見渡す限りの平原
いるのは一人の木陰で本を読んでいる旅人のみ。
何故ここにいるのか。何のためにここにきたのか。
もし、この平原に行ったことを知った人がいるのならば
首をかしげることだろう。
花はきれいな花が咲いているし、大きな木もある。
しかしここに来なくともみられる場所などいくらでもある。
わざわざここまで来なくともここよりきれいな花が咲き乱れている場所だってある。
この平原にしか咲いていない花があるわけでもない。
では大きな木が珍しい木なのか?
答えは否
そこらの木よりは大きいことが特徴として取り上げられる程度の木である。
そこらの森で見かける木
モノ好きですら訪れないような平原
あえてこの平原の特徴を上げるとするならば
労力のわりに得られるものがない平原
この平原に来るには大きく険しい山を越える必要がある。
険しい山を越えた先にあるのがわざわざここで見る必要のない花々
これがモノ好きすらも訪れない理由
これがこの平原のすべてである。
と
世界に住まう人々は
これが総意であると考えているが
実際は少し違っていた。
といっても
大したことではない。
ただ
この平原には穏やかでさっぱりとした温かさの晴れしかなく
心地の良い風が吹き
夜には満点の星空がみえるだけ
それ以外にはなにもない。
モノ好きがこのことを知ったら
もしかしたら
ここに来る人は増えるかもしれない。
それでもこの事実を知る人がこのことを口にすることはないだろう。
なぜなら
この静寂が好きだから。
この静寂に吹く優しい風
たまに聞こえるどこにでもいる鳥の鳴き声
この陽だまりが好きだから。
きっとこの先もここを訪れる人は限られているだろう。
そして本を読んでいた旅人も帰路につく。
今度は何を読もうかと考えながら