第7話 くそったれ
結局人造生命体SL2-Sの新たな巣には研究室備え付けのバケツを流用することとなった。それは取っ手が付いていて持ち運びに都合が良いというのが理由であったのだが、しかし──。
「やはりこうなったか。
なんとなくそんな気はしていたのだが、まさか本当にそうなるとは……」
溜め息を零す博士の目の前には、ガラン、ガランと音をさせながら移動する逆さ状態のブリキのバケツが。もちろんその中に潜んでいるのは彼の造り上げた人造生命体SL2-Sというスライムだ。
ガランッ!
バケツが浮いて傾いたかと思えば、その隙間から緑色の触手のようなものがシュッと飛び出した。
そしてその先で飛んでいた小蝿を捕えたかと思うと瞬く間にパッと引っ込む。
いつの間にやら俊敏性を身につけていたようである。
「いや、それよりも捕食を覚えたということを重視すべきか。
未だ本能の域ではあるが、それでも知性は育ちつつあるということであろう」
ガララガララ……。
石床を這い進むブリキバケツ。
その軌道には黒く湿った跡が。
残されたそれを調べる博士。
「ぶふっ!?
こ、これはっ……!」
鼻を突く腐臭に嫌でも理解をさせられる。
つまりこれはスライムの排泄物。
掃除道具を取りに行きつつ、そっちの問題についても考える必要性を感じる博士であった。