第3話 博士、スライムに手を焼く
知性、自我。知的生命体にこういったものは必要であるが、生物である以上それ以前に必要となるものがある。いや、それは生物に限ったことではない。この世のどんなものであっても活動には必ず何らかのエネルギーの摂取が必要だ。
「いきなり高度なことを求めるよりも、やはりまずは基本だな。
だがしかし、いったい何を与えたものであろうか……。
いや、それ以前に……」
人造生命体SL2-Sはよくあるアメーバタイプの変容型魔法生命体とは違い、魔法やエネルギーを元にした発生型魔法生命体とも違う。無生物を原料に造られた被造型魔法生命体だ。
だが有機生命体として造られており、そうである以上それに基づいたエネルギー摂取を行うわけだが、知性なきこのSL2-Sがどのようなタイミングでそれを行うのかは不明。食事を与えたからといってそれを素直に食すとは限らない。
「まあ、無駄に悩んでばかりいるよりも実際に何でも試してみるべきであろうな」
移動のため取り出した小瓶へとSL2-Sを移すべく手を伸ばす博士。
ボコッ!
「うわっち⁈」
SL2-Sの体表の泡が弾けた。
焼かれるような痛みに反射的に手を引っ込める博士。
アンデッドといえども痛覚はちゃんと存在するのだ。
「こ、こいつ、まさかこのワシに攻撃してきよるとは……。
しかしこれは面白い。
ただの偶然かも知れんが、もしこれが反射的反撃行動ないし威嚇行動であるとするならば、こいつは最低限の自己保存を行う知性は持っているということになる」
文字通りに手を焼いた博士であったが、それでも彼に対する好奇心が勝るようだ。
きっとこういうのを研究バカというのであろう。