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CON-CREATURE  作者: 戯言士
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第27話 種族の起源 ⑧

「見つけたぞ、オークどもの集落だっ!」


 イーナから齎された凶報は図らずも告げられた途端に現実となった。

 突如現れた人間たち、彼らこそが冒険者と呼ばれる狩人たちだ。


「しっかしどういうことだ? オークどもと人間が普通に暮してやがる」


 彼らにとって亜人は野獣と同じ扱いであり、況してやオークは人間を脅かす存在。ならばこの疑問も当然であろう。


「さあな。案外やられまくっているうちに、本来の性癖が目覚めたのかもな。

 つまり所詮は雌豚、こいつらと同じ穴の狢だったってことだろうよ」


 そして男性の意見とすればやはりこうなるのであろうか。女性を見下した言葉が酷い。


「嘘でしょう? これが同じ女だなんて信じられない。

 これじゃ何のために私たちが来たのか分からないじゃない」


 それに対する女性冒険者の意見はあくまでも彼女たちは例外であり、同類扱いは忌まわしいとばかりに卑下をする。


「何言ってんだよ。そんな風に言ったところで結局は皆殺しにするんだろ?」


「当然でしょ。せめて人としての尊厳を取り戻せるように殺してあげるのが慈悲ってものじゃない」


 そして結局はこの結論。彼らはオークたちだけでなく人間の女性たちも区別なく皆殺しにするつもりなようで、そこに一切の迷いや罪悪感はないようだ。


「というわけだ。

 世界に呪われしものと、それに与する愚か者ども、この勇者イェシュア・ハリス・フォン・ハローウェンが死をくれてやる。大人しくあの世にて神の裁きを受けるがよい」


 ひとりの青年が進み出て話を締め括ったことでいよいよ緊張感が高まる。


「ぶっ! お前、まだそんなこと言ってんのかよ? 嘯くのはいいがさすがにそれは痛過ぎだって」


 いや、冒険者たちの方はそうでもないのか戯れ合いを止める様子はない。おそらくは彼らにとってこのようなことは日常茶飯事に過ぎないということなのだろう。


「はっ、嘘かどうかは見てりゃ判るさ」


 青年が言葉を発し終わった思った時には、その腕は既に振り下ろされていた。手にはいつの間にか剣が握られており、それが陽光に煌めいたと同時に数人のオークたちが崩れ落ちる。


「ちっ、ひとりにばかりいい格好させてたまるかっ!」


 それを皮切りに冒険者たちが集落へと襲いかかる。

 こうしてオークたちの日常を壊す戦闘もとい、冒険者たちの狩りともいうべき虐殺が始まったのであった。


「男たちは前へ!

 戦えぬ者は女や子どもを連れて後方へ下がれ!」


 オークの男たちが非戦闘員を護るべく受けて立つ。

 しかし冒険者たちとオークたちとの力の差は歴然だった。

 オークたちも一応は狩猟種族であるためそれなりに戦闘には慣れてはいるが、それでも常に戦闘をしているというわけでなく、況してやこの集落においては人との共存を図るという方針転換を始めており、それを生業とする冒険者たちを相手にしてはあまりにも分が悪過ぎた。

 唸る剣風に降り注ぐ矢の雨。

 雷が轟き、炎は周囲を焼き尽くし、氷嵐が血飛沫さえをも凍り尽かせる。

 革や石器を主とした肉弾戦特化で大した文明を持たぬ閉鎖的種族としての脆さがここにきて出たというわけだ。



「くっ、ここまでか……」


 広がる阿鼻叫喚の地獄、戦況は窮まり最早万事休す。

 魔の手は後方にも及びつつあり、避難最中の女子どもにも少なからず脱落者が出ていた。冒険者たちはオークも人間も見境なしに一切を殺し尽くすつもりらしい。


「こうなっては仕方がないか。最悪の決断をするしかないな……」


 避難の指揮を執っていたジョンが仲間のオークたち全てを見回したのち、哀しそうに告げた。


「ああ、残念だけど最早それしかないだろうね」


 ポールも頷いて仲間たちを見回し、そしてエベルの瞳をじっと見つめる。

 それは他のオークたちも同様で、彼ら全ての視線がエベルへと集まった。



「こうなれば玉砕覚悟だっ!

 行くぞっ!」


「「おおーっ!!」」


 雄々しい掛け声と共に冒険者の群れへ駆け出すジョン。

 その猛々しい突撃にオークたちが続く。

 正にここが正念場、ここが最終決戦となるわけである。


 そんな彼らを眺めるエベルをハミリアが厳しく督す。


「さあ、行くわよ。時間がないわ」


 涙を(こら)え戦場へ背を向けるエベル。きっと彼らは誰一人として生きて帰ることはないであろう。


「……ポ、ポールぅ……」


「……くっ、あの馬鹿、こんなときにかぎって格好つけちゃって。こんなことなら、もっとちゃんと応えてやればよかった……。ううっ……」


 そしてつらいのはエベルひとりだけでないようで、ポールと仲の良かったフィリシアを始めこれまでオークたちに冷たく接していたヨーコら女性たちもここにきて彼らの想いに涙を呑む。


「さあ、こっちよっ!」


 イーナの先導に続く一同。

 オーク一族の命運は彼らの種を宿した人間である彼女たちに託された。

 そしてこの時、彼女たちとオーク一族の未来を守ることが運命と、唯一生かされた男性であるエベルは己の務めと課したのであった。


 ◆◆◆◆◆◆


「──こうして人間たちの手から逃れた我の祖先たちは代を重ねながら流れ流れて(ようや)くこの地に辿り着いた。そしてこの森で静かに暮らしていくことに決めた。

 だがしかし、人間たちはそれでも我らを脅かす。狩りの対象として命を弄び、奴隷として尊厳を弄び続ける。

 これが我らが一族の起源であり歴史だ。

 お前たち人間と我らオーク、本当に邪悪なのは果たしてどちらなのだろうな?」


 青年の語る物語は重々しく、それを聞く者を沈黙させた。中にはそれに涙する者もオークたちの一部に見られる。


「そ、そんなのデタラメの作り話だ!」


 あまりもの酷さにロミオは(ども)りつつも否定する。人間がそんな倫理に外れた存在であると認めたくないといったところであろう。だが──。


「普通ならばそう思うであろう。

 だが、我ら一族が普通の亜人、オークとは思えぬほどに人間に似ていることはどう説明する?

 普通オークと人間が交わればオークが産まれるのはお前といえど知ってるのだろう?」


 人間としてのイレギュラーな存在と純粋なオーク、その間で生まれたハーフオークとでもいうべきイレギュラーな新種。ただの突然変異というよりも、彼らのいうそれの方が必然という説得力があるといえるのかも知れない。



「どわっ⁈ 何してやがる、こいつっ⁈」


 問いかけるオークたちと思い悩むロミオと余所に、一匹のスライムが場の空気も読まず檻車横に積まれた死体を漁っていた。

 実はこの場に来ていたエミール。

 と言っても襲撃に参加していたわけでなく、集落の護りとしての増援協力でなのですが。

 オークたちは回収した死体をロミオの解放と伴に引き渡すつもりだったのですが、エミールには場の空気なんて関係なく、お土産の餌にありつけただけだったようで台無しになりました。

 まあ、それでも遺品だけはなんとか無事なわけですし……。

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