第18話 知ってしまった事実
冒険者ロミオ・コロバスが目を覚ましたのは震動する部屋の中であった。
傍には薄汚れた身形の女性の姿があり、俯せ状態の彼を心配そうに見下ろしている。
「──んがあっ⁈」
身を起こそうと上半身を持ち上げようとしてロミオは苦鳴を上げた。
「ダメよっ!
あなた、大怪我をしてるんだからっ!」
「……くっ、つつつ……。
そ、それは解ったけど、いったい何が……?」
背中に走る激痛に嫌でもそれを理解させられたロミオ。
だが、だからといって現在自分の置かれている状況まで理解できるわけではない。
「ごめんなさい、それには答えられないの。
こうして今あなたを治療していることさえも、私たちにとって許されるかどうか問題となる行為だから……」
悲痛そうに応える彼女の言葉にロミオは何があったのかを思い出す。
《やはり人身売買の被害者である彼女たちとその救出にきた仲間からすれば、その護衛をしてた俺たちもあいつらの一味みたいなものか……。
全く、ギルドもよく調べてから依頼を出さないからこんなことになるんだ》
「くそっ、帰ったら絶対にギルドに文句を言ってやるっ!
そうすればギルドも面子に懸けてあいつら摘発に乗り出すはず──」
慷慨憤激なロミオであったが、その言葉は途中で霧散した。
なぜならば──。
彼は見てしまったのだ。
懸命に彼を治療する彼女の顔を。
そして彼はそれに気づいてしまった。
彼女の髪の中からちらりちらりと見え隠れするその特徴的な耳に。
その耳は人間のそれではなく、明らかに豚のそれに近い物であった。
つまり、彼女の正体は豚の亜人だったのだ。