雀力!コンビ打ちの壁!!
タカさんの雀荘に来ているが、今日は出だしから悪い。
空き卓を待って空いた席に座ったのだが1位と2位が取れない。
座った面子のうち、下家と対面は前回座った面子と同じだった。
そういえば前回も1位と2位はとれなかったな…。
思い返せば下家と対面はお互いのロンがなかったな…。
待てよ、前回も今回も下家と対面ではロンが一度も無いぞ!
これはまさかコンビ打ちなのではないか!?
それに下家と対面は自分達以外のリーチにはほぼ降りていたな。
前回負けて帰って、紗理奈に怒られたんで今日はこれ以上負けれない。
なんとかしなければ!
局の終わりに「トイレ」と席を立ちタカさんにもトイレに来て貰う。
「タカさん、N番台の俺の下家と対面がコンビ打ちかも知れない…」
「えっ、うちでコンビ打ちは困るよ」
「どうして?」
「二人の点のやりとりは、前回も合わせてツモでしか動いてないんだ。お互いのロンは器用に避けている」
「そうか…。他のお客さんに分かる前になんとかしないと…」
「じゃあ、これから言う作戦で。ハンドサインを出すから…」
と、急造の作戦と簡単なハンドサインを決めてトイレを離れ上家が離席するのを待つ。
上家はタカさんの店の常連でタカさんが、
「調子悪いみたいだね。変わろうか?」
と、声をかけると助かるよと席を立った。
ここからが本番な訳だが俺の今日の負けは大きい。
3位3位と二回連続でへこんでいる。
負け額にして一万四千円程だが勝たないと額も減らない。
サイコロを振って対面の親から局は始まる。
タカさんも目に力が入っておりこっちの手まで汗ばむ。
トイレで決めた作戦は二つ。
マンズ、ピンズ、ソウズ、字牌の四種類をテンパイ時にハンドサインで出すこと。
もちろんずっとお互いばかりみてるわけにはいかず、ハンドサインの前にキーサインを決めていた。
タカさんはテンパイ時にタバコを二回トントンとしてからをキーサインとし、その後のハンドサインで上がり牌を示唆するといった内容だった。
俺の方のキーサインは右の眉毛を触る事だった。
お互いのロン牌を教えあい無駄な点のやり取りをさけ、2対2の状況に持っていく事が狙いだった。
タカさんの手が早く十巡目にリーチを仕掛ける。
俺かタカさんのどちらかが1位になってどちらかが4位をさければ二人トータルで浮きになる寸法だ。
相手だって同じ構造なんだ何ら悪い事はない。
タカさんはリーチ後にタバコをトントンとし右手の中指をタバコと一緒にこすってみせた。
これはピンズのサインだった。手は下向きだから待ちはピンズの1から4のどれかだった。
俺の手配にはピンズの678しかない。手を回してテンパイを目指す。
そうこうしてる内に下家がロン牌を倒した。
助かった5800点の上がりだ。
そしてタカさんの親で次の局は始まる。
トス役でもして鳴かせたいが俺の手も良い。
ここは前回とは行かなくても今回の負け額を少しでも減らすため手を高めてリーチと行きたい。
しかし対面が先にリーチを掛けてくる。
こちらもイーシャンテンなので降りる気はない。
連続3位だって向こうのコンビ二人のツモ上がりと俺のリーチ宣言時のベタ降りで負けたんだ。
ここは張り合う、こちらもリーチだ!!
待ちは左手でタカさんに見えるようにハンドサインを送る。二満と五満なのだがハンドサインを二回出してタカさんは分かってくれるだろうか。
流局前に何とか積もって満貫、上出来だ。
これをあと二局やれば良い。
おそらく向こうのコンビもこちらが急造のコンビ打ちをしてる事に気づいているかも知れない。
ハンドサインもバレてもあとソウズと字牌のサインはバレていないわけでなんとかなる。
その後は同じ土俵に持ちこんだタカさんと俺で押し切り二試合連続で1位と2位と上出来の決着。
試合後、相手の二人はヤレヤレと店を出て行った。
タカさんも2位、1位とフィニッシュして勝ち金を手にする。
前回の負け額の回収までは届かなかったものの今日は一万の浮き。紗理奈にタカさんとの熱いコンビ打ちの話が出来るとウキウキの気分で帰宅するのだった。