雀力、魅惑の将
今日は知り合いのつてでタカさんの雀荘に向かう。
テレビの収録にも使われるこのスポーツ雀荘、店内は広く明るく賑やかな会話が弾んでいる。
「坊、今日は勝てないぞきっと」と声かけられる。
?と、頭の中でハテナが浮かぶ。
どういう事かなと色んな考えが一気に吹き飛んだ。
店内の奥に知り合いのお姉ちゃん。そのお姉ちゃんの背後に取り憑く背後霊が一人。
あの人、魅惑の将だ
雀力はきっと頭一つ二つ俺より上。
しかも力を隠してチャレンジャーの姿勢で勝負をしている。
試合が終わったのか背後霊の魅惑の将が俺を呼ぶ。
勝てばこの娘の命は無いよ
甘く囁く将の言葉、万が一も考えて打たなければいけない。
一対三の状況を作られ何故か有効牌が押し寄せてくる。
ツモは流せない状況もあり上がるしかない。
せめてあの娘を救えないかと手を崩すも周りは上がる手が止まらない…
対面の将は囁く。この娘が四位も許さないわと。
苦手のチーを仕掛けると三位、二位と順位を上げる将。
本当に1位をとってはいけないであろう状況に俺からの振り込みは拒否する将。
貴方の振り込みで上家と下家があがり、貴方が四位になるのも禁止にするわと高く笑う将。
万策つきたか、どうすれば自分は四位を防ぎきり、あの娘を1位に上げれるか…。
そうだ!合図を出して一対三で勝負に持ち込むしかない!!
宣言牌は「三筒だ」
手作りを変え、最終局面までテンパイを目指す。
もちろん人の命の掛かった局面、上家も下家も三筒を当たり牌にする為に手を廻す。
俺は点棒計算ではリーチを掛けれない!
だがそんなのは関係ねぇ!
宣言だ!リーチ!!
三人テンパイの模様で振り込みを避けはじめた将はツモと三人から点数をさらい1位にあがる。
魂が抜ける様な声で
「…着順より命なのね…」
また打ってくれるかな
と、将は去っていく…
「えっ!?1位!?」
と、喜ぶあの娘は天然の涙を流している。
ふーっと大きなため息をつく三人。
ギャンブルの最終着地面は安心なのかもしれない。
将の霊は同卓の三人にしか視えていなかったが、この話、紗理奈は聞いて理解してくれるだろうか…。