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下僕令嬢 〜お猫さまを拾ったら、国王でした〜

 



 なぜなの……こんなにも愛しているのにっ!

 下僕にしてとお願いしているのにっ!


「ミラベルお嬢様……猫の目をガン見してはいけません、と何度言えばいいのですか」

「だっ、だって! あんなに美しい金色なのよ!? 見るなっていうほうが無理よ!」

「チラチラ見るのはいいんです。ガン見がダメなんです」


 チラチラ見るってどういうことなのよ。

 侍女のアデーレはいつもお猫さまに囲まれているのよね。それに対して、私は少し動いただけで、お猫さまたちに走って逃げられてしまう。我が家の飼い猫なのに、なぜっ!?


「屋敷の子たちは、もうお嬢様を覚えてしまっていますからね」

「くっ……野良さまの観察に向かうわよっ!」


 お猫さまが大好きなのに、お猫さまに嫌われているのが本当に悔しい。


 屋敷のお猫さまにはご飯を食べていただいたので、日課の野良さま探しに向かうことにしました。じっくり観察して病気や怪我があれば保護し、下僕(飼い主)探しをしたりもしています。


「その情熱が、魔術の訓練やお見合いに発揮されれば、伯爵家は安泰なのでしょうね。二十になっても――――」

「しっ! 来ましたわよっ! あっ、逃げたわ……アデーレが声を出すから……」

「いま逃げたのは、お嬢様が叫んだからですよ。猫は、人間が普通に話している声は好きです。そもそも――――」


 アデーレが何やらクドクドと言っていますが、無視して野良さま探しを再開します。パン屋の裏にもよく集まっていますので移動してみましょう。


「お嬢様、聞いてます!?」

「聞いてる聞いてる…………あら?」


 パン屋の裏では、野良さまたち五匹ほど集まってパン屋の主人からおこぼれをもらっていました。その集団から離れたゴミ箱の陰にボロ雑巾のように汚れ果てた薄茶色のお猫さまがいました。


 バタバタと駆け寄ったせいで、野良さまたちが逃げ惑ってしまい、パン屋の主人に睨まれてしまいましたが、それどころではありません。


「大丈夫ですか!?」


 地面に膝をつき、ゴミ箱を少しずらしながら薄茶色のお猫さまに触れようとしましたら、フシャーッと歯を剥いて警戒されてしまいました。アデーレが手負いの猫は危険なので毛布か麻袋を持ってくると言い、馬車の方へ走って行きました。


「お猫さま、後ろ脚を怪我しておいでです、無理に動いてはいけませんわ。確かに人間は怖いかもしれません。野良さまに厳しい方もいますので。でも、私たちは大丈夫ですよ。どうか安心してくださいませ」


 アデーレが戻って来るまで時間を稼がねばと、にこりと笑顔を向けて話しかけていましたら、薄茶色のお猫様がふらりと立ち上がりました。


「動いては危険ですわよ!? どうかお座りになられて……あぁっ! ほらふらふらしてますわっ」

「……んみゃぅ」


 お猫さまがちょっと低めの声で弱々しく鳴きながら、ふらりふらりと歩いてこちらに向かって来ました。逃げられてしまうかもと不安になっていましたら、地面についていた膝に寄りかかるように倒れ込んできて、みゃうと一声鳴いたあと、気絶するように眠ってしまいました。


「……へ?」

「なっ!? あの、ミラベルお嬢様が、猫に触れられている!?」


 馬車から毛布を持ってきたアデーレが、私の膝に寄りかかるようにして眠っている薄茶色のお猫さまを見て、まるで天変地異が起こったかのように、驚愕の表情を浮かべていました。

 ちょっと失礼じゃないかしら?

 きっと、猫の神様が献身的な下僕だと認めてくださって、味方してくださっているのですわ。


「猫神様? ないです」

「もぅ! とりあえず、毛布にくるんであげましょう。それから、屋敷に戻ったらすぐに獣医を」

「承知しました」


 アデーレから毛布を受け取り、お猫さまの怪我をあまり触らないようにしながら毛布の上に移動させると、お猫さまの目蓋が薄く開いてしまいました。逃げられてしまうかもと、少し身構えたのですが、お猫さまは私をちらりと見て、また目蓋を閉じられました。


「……あら? 見た目より怪我が酷いのかしら?」


 アデーレと二人、もしかしたらお猫さまは逃げる体力もないくらいに弱っているのかもと、慌てて抱き上げて馬車へと急ぎました。

 その途中で数人の騎士様とすれ違ったのですが、肩がぶつかってしまいました。


「きゃっ!」

「チッ……ちゃんと前を見て歩け! どけ!」


 前を見ていなかったのはどちらもだと思うのですが、流石にそれを言う勇気はありません。それに、騎士様たちは近衛騎士の格好をしていますし、かなり気が立った様子で誰かを探しているようでしたので、あまり関わらないほうがいい気がします。深々と謝罪し、馬車へと急ぎました。


「何かあったのかしらね?」

「表通りにもかなりの数の近衛騎士がいましたね。王族のどなたかが視察でもされていたのかもしれませんね」


 あの慌てようは視察とも違うような気がしましたが、一介の伯爵家の娘が事実など知りようもありません。お猫さまの治療もありますので、早く城下町から屋敷に戻りましょうと、アデーレと馭者に声を掛けました。




 屋敷に戻り、私室の保護スペースに毛布ごとお猫さまを置きました。保護スペースは、二メートル四方のケージを置いており、大人ならば二人は中に入ることも可能です。

 お猫さまは、時々ちらりとこちらを見てはまた目蓋を閉じ、苦しそうに息をしていました。

 

「そこまで酷い怪我には見えないのですが……もしかして、腹部にも怪我をしているのかしら?」


 アデーレがそう言いつつお猫さまに手を伸ばした瞬間でした。


「フシャァァァァ!」

「わっ……」


 薄茶色のお猫さまが上半身を起こし、ブルーサファイアのような瞳をギラリと光らせてアデーレを睨みつけました。


「お猫さま、落ち着いてくださいまし。アデーレも私も酷いことはしませんわ。ただ怪我の確認がしたいのです。少しだけ見せてくださいませんか?」

「……みゃぅ」


 お猫さまがアデーレから私に視線を動かすと、まるで言っていることが理解できたかのようにひと鳴きして、毛布に身体を横たえました。


「お猫さま……言っていることが理解出来る…………なんてことないわよね? これも、下僕への祝福とか?」

「んみゃ……」

「……え、いや、まさか」


 私もアデーレもぽかんとしつつも、お猫さまに他に怪我がないかの確認をしました。お猫さまは、アデーレが触ろうとすると警戒したように鳴くのですが、私が触るのは良いらしく、ちらりとこちらを見るものの、無言で耐えてくださいました。


「お腹を押すと痛そうですね」

「えぇ。獣医が来たら伝えますね」

「それにしても、お猫さまの瞳は不思議な色をしているわね? ブルーサファイアのように煌めいてるわ」


 この屋敷の子たちも、野良さまの中にも、こんなにも美しい瞳の子はいませんでした。酷く珍しいのではないのでしょうか? もしかしてそれで他のお猫さまたちから爪弾きにされたとか? お猫さまって、人と同じように色が見えるのかしら? 後で獣医に聞いてみましょう。


 


 獣医が到着し、治療をしてもらおうとしていたのですが、お猫さまが警戒して獣医を引っ掻こうとしました。慌てて止めて、説得してどうにか治療は完了。

 獣医がこんなにも言葉を理解する猫は珍しいこと、私にこれほど懐いているのも珍しいと驚いていました。私たちも驚きですが、私に懐いている件に関しましては、私の努力の成果ですので、驚くのは失礼だと抗議しておきました。


「そういえば、お猫さまたちの瞳は、人と同じように色などは見えているのでしょうか?」

「ん? どうしてですか?」


 もしかして瞳の色で他のお猫さまにいじめられたのかもと話すと、獣医が納得していました。

 どうやらお猫さまたちは青色や緑がよく見えるらしく、つい追いかけてしまう習性があるのだとか。お猫さま用のおもちゃに青が多いのはそれが理由なのだと言われました。


「確かに珍しい色ですね。私も初めて見ま……した?」

「どうされました?」

「あ…………いえ。まさか……いや、ないよな…………?」

 

 獣医がお猫さまをジッと見つめながら、何かボソボソと呟いてたのですが、よく聞き取れませんでした。

 獣医は何やら慌てて退室して行ったのですが、お猫さまを誰かが引き取りにきても絶対に渡したらだめなことを指示されました。

 普通は、治療方針や食事形態などを説明するはずですが、それどころじゃないかもしれないとかなんとか言って、いなくなってしまいました。


「どうしようかしら? とりあえずご飯よね?」


 一応柔らかいもののほうがいいだろうということで、クタクタに煮た鶏ささみをペーストになるまですり潰したものをスプーンで掬い、お猫さまの口元に運びました。


「お猫さま、どうか食べてくださいまし」


 口元にもっていくものの、プイッと顔を背けられてしまいました。ささみペーストが嫌いなお猫さまがいるとは驚きです。

 このささみペーストは、どんなに体調が悪かろうと、人間嫌いでビビりだろうと、ふらふらと寄ってきて夢中になって食べる子がほとんどでした。


「ささみが嫌いなのかしら?」

「……みゃぅぅぅ」


 低く唸られてしまいました。ささみが嫌いだというお返事なのか、ほっといてくれとというサインなのか。分からないので、とりあえずペーストを入れた器を床に置き、保護スペースから出ました。


 一先ず服を着替えましょう。外に出ましたし、お猫さまを保護した際に血や泥で汚れてしまいましたから。




 着替えたり、お父様とお母様に本日の活動の報告をしていましたら、いつの間にか夕食の時間になっていました。

 食事を取って部屋に戻ると、保護スペースの床に置いていたささみペーストが半分だけ減っていました。


 ――――良かった。


 少しでも食べてくれたことにホッとしつつ、新たに作り直したささみペーストと、お魚ペーストも別の器で置いてみました。

 もしかしたら、お魚派かもしれませんし。


「お猫さま、お加減はいかがですか?」

「…………みゃ」


 毛布の上に丸まっていたお猫さまに声を掛けると、視線をチラッとだけこちらに向けてくださいました。そして、短く鳴くとまた目蓋を閉じて眠られました。

 動物も人間も、怪我や病気の時はたくさん眠っている印象があります。いまはとにかく寝ていただくことが優先なのかもしれないけれど、ご飯はちゃんと食べてほしいです。水分もちゃんと摂って欲しいです。

 

 ポケットから小さなスプーンを取り出し、水を掬ってお猫さまの口元に差し出しました。すると、お猫さまがブルーサファイアの瞳でこちらをジッとみて、フーッと鼻から息を吐き、のそりと起き上がってスプーンのお水をテチテチと舐めてくださいました。


「っ! もっと飲んでくださいね」


 お猫さまの口元に何度も何度もスプーンを差し出しては、お水を飲んでいただきました。

 これで脱水は免れるだろうと考えていましたら、お猫さまがフラリと動いて座っていた私の膝の上に上ると、丸まって眠ってしまわれました。


「――――っ!」

「ミラベルお嬢様、そこで叫んだら全てが水の泡ですよっ」


 アデーレが小声で叫ぶというなんとも器用なことをし、歓喜の声を上げそうになっていた私を止めてくれました。


「ひっひっふー、ひっひっふー」

「……何を産み出すおつもりですか。落ち着いてくださいよ」

「お猫さまが、私を下僕として認めてくださったのですよ!? 落ち着いてなどいられませんわっ」

「…………みゃぅ」


 深呼吸をしていましたのに、なぜか呆れられてしまいました。

 とりあえず、お猫さまがあまりにもボロボロかつ泥まみれなので、湯とタオルを持ってきてもらい、濡れタオルで拭いて泥や汚れだけでも落とすことにしました。


 怪我を避けつつ濡れタオルでそっと撫でると、お猫さまがチラリとこちらを見てまた目を閉じられました。この程度の接触ならば許してくれる、心の広いタイプのお猫さまでよかったです。


「あら……お猫さま、目の色も珍しいと思っていましたけど、毛色も本当に珍しいですね」


 キラキラと輝く金色に近いクリーム色の毛で、触るとサラッとしています。


「なんだか、国王陛下そっくりね!」

「……お嬢様、流石にそれは不敬すぎますよ」

「そぉかしら? 一度お会いしたことがあるくらいだけど、なんというかツンとしてるし、サラサラの髪の毛っぽいし、瞳の色なんて一緒じゃないの」


 アデーレに、猫を見るたびに擬人化させて想像するなと怒られるものの、結構たのしいのですよね。


「でも、パン屋の裏にいるブチ柄の丸々したボスは、財務官のヌーテラ卿に似てるって言ったら、アデーレ爆笑してたじゃない!」

「あれは――――」

「ブフッ」


 アデーレが何やら言い訳をしようとしていたら、どこからか吹き出すような音が聞こえました。

 キョロキョロとしていて、膝の上がプルプルと震えていることに気が付きました。


「お猫さま? もしや寒いのでしょうか?」


 先程、濡れタオルで拭きましたが、ちゃんと乾いたタオルで仕上げ拭きをしました。それでも体力を奪ってしまったかと焦り、新しいタオルでぐるぐる巻きにして抱きしめましたら、お猫さまが「みゃぅ……」と鳴いたので、きっと満足してくださったのでしょう。




 お猫さまがあまりにも心配で、夜は私の枕元に寝ていただいていたのですが――――。


「っ、ぎゅわぉぇ、あああああぁぁぁぁぁぁ!? えっ!? はっ!? ひぎゃぁぁぁぁ! 服っ、ふくぅぅぅ!」

「ん……煩い。耳元で叫ぶな………………あ?」


 目の前にというか、同じベッドの中に、素っ裸の男性がいました。

 金色のサラリとした髪を掻き上げ、ブルーサファイアのような瞳の…………国王陛下?


 見つめ合うこと数秒。

 陛下は自身の手のひらをくるくると返して、裏表裏と確認し、布団を捲って何やら下半身を確認していました。


「ひえっ!」

「おい……指の隙間から見るなら叫ぶな。バカか」


 ――――バレました。


「あの、これはいったい…………あっ! お猫さま! お猫さまっ!?」


 慌てて布団を剥ぎ取りお猫さまを探したのですが、いたのは全裸の国王陛下のみ。

 ベッドから飛び降り、ベッドの下や室内を探せど、金色のお猫さまがいません。


「……驚くほど察しが悪いな」

「ミラベルお嬢様! どうされまし――――は?」

「チッ……」


 アデーレが部屋に駆け込んできて、部屋の惨状に目が点になっていました。

 そして、次いでお父様とお母様が現れ、お父様は卒倒、お母様はなぜか祝飯を用意してくるとか言って、走って消えて行きました。


「はぁ…………面倒なことになった。まぁいいか。おい」

「はい?」


 たぶん私のことだろうなと振り返ると、国王陛下がクツクツと笑いながら「根っから下僕だな」と言いました。私が下僕なのはお猫さまにだけなのですが。

 それより消えたお猫さまの捜索をせねばとアデーレに国王陛下に服を用意するよう言って、屋敷内で迷子になっているであろう金色のお猫さまの捜索に出ました。




 ■■■■■




「……お前の主人は、アホだな」

「弁明の余地もありませんが、根は良いのです。ところで、どういった状況なのでしょうか? あの猫は陛下で?」

「あぁ、まぁな」


 視察中に襲撃され、政敵に変な魔法を掛けられた。そして殺されそうになったが、その場で反撃し壊滅させた。ただ、大怪我を負わされたうえに、魔法が同時に数人に掛けられたせいで解除に手間取った。そして、治癒に膨大な魔力を割いたせいで魔力が尽きてしまい、猫の姿から戻れなくなり、路地裏で倒れてしまっていた。


 そこで、あのミラベルという娘に拾われたが……まさかの猫伯爵家だったとはな。

 しかし、前々からこの家は政治的に関わりがなさすぎてというか、たぶん伯爵家自体が政治に興味がなさすぎて、国に関わっていなかったのだろうが。噂では知っていた。猫屋敷なうえに、保護活動などもしており、そういった活動が輪を広げ伯爵家の収益にも繋がっていると。裏で悪どいことをやっているのではと疑われてもいたが、全く違った。善良すぎて心配になってきた。


「さて。どうするかな」


 そもそも、全裸の私がここにいる時点で、あの娘を迎え入れなければならないのだが。

 夜中に魔力が回復してしまったのが災いしたな。寝ぼけて解除してしまうとは。

 あの娘を迎えるとして、問題は婚約者だろう。

 父が急逝し五年。政敵をある程度減らしてからにするかと、結婚問題を放置し続けていた私には、婚約者はいないからいいとして…………いや、アレにも婚約者はいなさそうだな。好きな男はいないだろ、アレ。猫しか見ていないし。


「アデーレだったか?」

「はい」

「とりあえず、服を。そしてミラベルを呼び戻せ。あと、そこで伸びている伯爵を起こせ」

「かしこまりました」




 ◇◇◇◇◇




 お猫さまが見つからず半泣きになっていましたら、使用人たちにアデーレが探していたと言われ、私室に戻りました。


「へ?」

「だから、あの猫は私だ」


 ――――へっ!?


「どどどどどぅ……? ななななんっ!?」

「どうやってか、なんでか、か? 説明が面倒だ。後でする。とりあえず、婚約するぞ」

「は!?」


 なぜに婚約なのでしょうか!? 全くもって意味がわかりませんが。


「未婚の男女が全裸で同衾したんだから、そうなるだろ」

「全裸は陛下のみですが」


 私、しっかりと夜着を着ていましたが!?


「全裸の私を撫で回しといて? そう言えるか?」

「全裸!? おっ、お猫さまの状態の話ですよね!?」

「全裸だろうが」

「そっ、それは……ちょっと違うといいますか……」


 国王陛下が、サラサラの金髪を掻き上げ、ハァと大きな溜め息を吐き出しました。

 そして、お父様に婚約証書の準備をと命じました。私はまだ了承していませんのに。お父様、言い返してやっておしまいなさい!


「……承知しました」


 ――――えぇぇぇ!?


 お父様が肩を落としてトボトボと歩いて消えて行きました。何という裏切りでしょうか。


「私の下僕になったんだろう? 最後まで責任を取れ。捨てるのか? 家名が泣くぞ?」

「っ……下僕にはなりましたが…………あれはお猫さまで……」

「それが私だが?」

「っ……」


 結局、家族全員丸め込まれてしまいました。

 しかも、その数時間後には昨日診察してくれた獣医が、魔術師団長や近衛騎士たちを引き連れて我が家に来ました。お猫さまから人の魔力を感じたことと、お猫さまがあまりにも陛下にそっくりだったから、と。

 やっぱり陛下にそっくりだったわよね。

 ……まぁ、本人でしたけど。




 ◇◆◇◆◇

 



 怪我して弱ったお猫さまを拾って看病しましたら、お猫さまはまさかの国王陛下。

 そして、なぜか陛下の下僕(飼い主)になることに。


 あれよあれよ外堀も埋められ、あの日から二ヵ月で結婚式をすることに。


「ふぅ。今日も疲れたな」

「はひ……」


 今は、私の膝に頭を乗せて、さあ撫でろとドヤる国王陛下の頭をナデナデ中です。

 下僕なのだから、甘やかせとうるさいのです。

 

 見た目はツンとした国王陛下ですが、時々可愛い時もあるので、下僕としてはまぁ、楽しく過ごせてますが。


「そういえば、陛下って何歳ですの?」

「二七だ……というか知らなかったのか。ミラベルは本当に私に興味が無いな。まぁ、そこが気に入ってはいるが……」


 苦笑いしつつ、私の手に顔を擦り寄せる陛下はやっぱ可愛くて。まぁ、大きなお猫さまを飼っていると思えばいいか! なんて、結果に至りました。




 ―― fin ――




最後までお付き合いありがとうございました!

猫派のみなさんも、犬派の皆さんも、おっさん派のみなさんも、ブクマや評価などしていただけますと、作者が小躍りして喜びますヽ(=´▽`=)ノ


あ、短期集中連載でしっとりした物語も投稿しておりますので、そちらもぜひぜひ!

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