3、ミドリ+あおい
昼休みが終わり五、六時間目が終わり、掃除が終わり。
高松高校での初登校はあと十分もすれば終わる。
(隣はあれだけど結構楽しそうなトコで良かった)
先生の話も終って帰る準備をしていた翠は碧が廊下に立っていることに気づいた。
「?」
何となく気になった翠はカバンを抱え早足で碧の元へ向かった。
「何してんの?」
「・・・別に」
流石に驚いたらしい碧がこちらに振り返って多少戸惑いながら答えた。
相変わらずの答えに翠が思わずため息をもらした時、背中側から声が聞こえた。
「みーどり!」
ふいに名前を呼ばれ、驚いて振り向いた先に、テンパで黒髪の男の子がこちらへ向かって歩いてきている。
(だれ!?)
「キミじゃない・・俺だよ」
翠の考えを見透かしたように碧が呟いた。
「わりい、先生から呼び出しくらっちまって・・・その子だれ?」
「転入生」
男の子の問いに碧がどうでも良いとばかりに答えれば、それを聞いて男の子は珍しいものを見るようにまじまじと翠を見てきた。
「へぇ・・・君が噂の転入生・・・」
「?・・えっと・・・夏目 翠デス」
『噂の』というのが多少気になるがとりあえず自己紹介をした。
「翠ちゃんね。よろしく!俺そいつのダチの双葉 葵っての」
そいつ、と指を指された碧は鬱陶しそうに指を払いのけた。
「葵、呼び出しくらったんだろ。いつ終わるんだ?」
「ちょっと話すだけだからすぐ終わると思う」
「そ、んじゃ下いるから早くしろよ」
言うや否や碧はスタスタと階段を下りていった。
「・・・翠ちゃん、家どこ?」
碧の姿が見えなくなると葵が遠慮がちに話しかけてきた。
「南町の方」
「お!近いね、今日一緒帰らない?・・碧もいるけど・・・」
「・・・え」
会って十分やそこらで女の子を誘うか?普通・・・。
「今日一人なんだろ?最近は暗くなるの早いから危ないかなって思ったんだけど・・・」
翠の意図を察してか葵が慌てて理由を言った。
なるほど・・・。この人は碧とは違ってとても優しい人だ!
「うん、良いよ。一緒に帰ろ」
その返事を聞いて葵はにっこりと微笑むと、下で待っててと告げ教室に入っていった。