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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

詩の目次

侵略者は殺人鬼の顔をしない

作者: 冬野三月

 道を歩いていると、地面に二メートルほどの穴が開いているのを見つけた。傍には両足がいびつに千切れた男が転がっている。

 死体だ。その両目は大きく見開かれている。

 おそらく敷設された地雷を踏んでしまったのだろう。失血死なのかショック死なのか。

 彼は自分が死んだということを自覚して逝っただろうか。たぶん痛みを感じる暇もないような一瞬だったのだろう。そう願う。

 僕は、いつまでもその場所にいても仕方がない、と歩を進める。死んだ男と同じ目に合わないよう、地面を注意深く観察しながら。


 このあいだまで平和だったこの街には死体が山盛りだ。

 誰かが誰かに殺された。その積み重ね。いまのところ僕は前者ではない。だから僕はまだここにいる。


 人の死がそこら中に転がっているのを見慣れると、自分の心が死んでいくように感じる。

 これは誰のせいか。誰のせいにすればいいのだろう。


 頭の一部が欠けた死体。

 地雷で下半身を吹き飛ばされた死体。

 爆弾で焼かれ、いまだ燃えくすぶっている死体。

 まるで酔っぱらって地べたで眠り込んでいるだけに見える、綺麗な死体もある。


 かつて人間が作った物の残骸の山々と、地面に穿たれた大小さまざまな穴ぼこ。それが今のこの街を形作るすべてだ。


 街は死んでしまった。僕はその街の死骸の上を渡っている。

 おびただしい数の人間の死体を横目に僕は歩く。どこへ、と自問して。

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