侵略者は殺人鬼の顔をしない
道を歩いていると、地面に二メートルほどの穴が開いているのを見つけた。傍には両足が歪に千切れた男が転がっている。
死体だ。その両目は大きく見開かれている。
おそらく敷設された地雷を踏んでしまったのだろう。失血死なのかショック死なのか。
彼は自分が死んだということを自覚して逝っただろうか。たぶん痛みを感じる暇もないような一瞬だったのだろう。そう願う。
僕は、いつまでもその場所にいても仕方がない、と歩を進める。死んだ男と同じ目に合わないよう、地面を注意深く観察しながら。
このあいだまで平和だったこの街には死体が山盛りだ。
誰かが誰かに殺された。その積み重ね。いまのところ僕は前者ではない。だから僕はまだここにいる。
人の死がそこら中に転がっているのを見慣れると、自分の心が死んでいくように感じる。
これは誰のせいか。誰のせいにすればいいのだろう。
頭の一部が欠けた死体。
地雷で下半身を吹き飛ばされた死体。
爆弾で焼かれ、いまだ燃え燻ぶっている死体。
まるで酔っぱらって地べたで眠り込んでいるだけに見える、綺麗な死体もある。
かつて人間が作った物の残骸の山々と、地面に穿たれた大小さまざまな穴ぼこ。それが今のこの街を形作るすべてだ。
街は死んでしまった。僕はその街の死骸の上を渡っている。
おびただしい数の人間の死体を横目に僕は歩く。どこへ、と自問して。