人生是勉強也
体育祭が終わると、治たちの高校はすぐに試験期間に入る。
およそ1週間後に試験が開始されるため、毎年学生たちはスケジュールに追われてしまうのだが、それが終わると夏休みなため最後の踏ん張りだと思って勉学に励む。
麗奈「というわけでさ、勉強会の場所を提供してください。」
治「唐突だね?」
その日、麗奈たちは美佳の部屋で勉強会をしていた。
4人ともそれぞれが塾に通っているが、日曜日は塾が休みなため、それであれば土曜日から泊まりで勉強会をしようとなったのだ。
流石に泊まりとなると、男子である治を呼ぶのはどうなんだろうという話になり、誘っていなかったのだが。
美佳の部屋が選ばれた理由は、彼女たちの中で一番部屋に娯楽が少ないからだ。
4人とも試験勉強をしようとすると、ついつい目に入った物で遊んでしまいたくなる質なため、比較的それらのものが無い美佳の部屋に集まったのだが、人間追いつめられると普段全く興味がない物でもとても楽しそうに見えてしまう物だ、
ずばりいうと、彼女たちは1時間ほど麻雀をしていた。
麗奈が、いつから美佳の部屋にあったのかわからないとても古い麻雀セットを見つけてしまったのが原因ではあるのだが、麻雀は4人用の遊戯であり、全員が示し合わせて遊んでしまったのは明白だった。
美佳の部屋には、現代風のおもちゃはそこまで無いのだが、先祖代々のよくわからない物が多少置かれていたため、たまにこうして脱線してしまう。
因みにだが、彼女たちは誰一人麻雀のルールを知らない。
ノリでやっていただけだ。
よくわからないにもかかわらず、国士無双という唯一聞いたことがある技?を麗奈が叫んだ瞬間冷静になった4人は、これではダメだと不意に不安になる。
解決策を考え始めたところ、美佳がある事に気が付いた。
美佳「そういえば、治の部屋は物があまりないから集中できるかもしれないぞ。」
これにより、女子4人組は、『男子の部屋にお邪魔する』という大義名分を得てしまった。
そして至る現在。
治「まあ、うちで勉強するのは別に構わないよ。本当に何もないとこだけどどうぞ。」
4人「おじゃましまーす」
治が住んでいる早瀬家の離れは、離れと言いながらキッチンやトイレ、風呂まで揃っている。
元々は、治の曾祖母が生活しやすいようにバリアフリーで増築した場所で、築年数もそこまで多くないのだが、その曾祖母が離れが完成してすぐに亡くなってしまったため、たまに掃除する以外は放置されていた。
実は、美佳の妹の澄恋が秘密基地のように使っていたのだが、家族はそれを知らない。
麗奈「男の子の部屋ってこんな感じなんだ?旅館の客室って感じ。」
治「俺の私物があんまり無いからね。殆ど曾婆ちゃんのセンスらしいよ。たまに少女マンガとかも隠されてるけど、誰のか美佳も知らないらしいんだよね……。」
美佳「私が読むのは殆ど少年マンガだからな。少女マンガは麗奈たちから借りた時しか読まないぞ。」
当然その少女マンガは澄恋の私物なのだが、彼女は自分が少女漫画を読んでいる事を周囲に隠していたため、美佳すら気が付いていない。
花蓮「あー……、畳のニオイすきぃ……。」
聖羅「これ布団ひいて寝たら絶対ぐっすりですわ……。」
治「勉強しに来たんじゃないの?」
治の言葉で現実に引き戻された4人は、部屋の隅に荷物を置き嫌々ながらも勉強を始める。
勉強会とは言うが、この4人におけるそれは別に勉強を教えあう類のものではない。
周りの人間が勉強に集中できていないと感じたら注意しあい、勉強から離れたがっている心を少しでもつなぎとめようとする集まりだ。
どこからか治が持ってきてくれた座布団に座り、昔ながらのちゃぶ台で勉強をする4人。
何だかんだで、学年でもトップクラスの成績を誇る女子4人の勉強は順調に捗り始めた。
と、思ったのだが。
麗奈「……あれ?治は勉強しないの?」
麗奈の集中が途切れ、後ろで寝ころびながら本を読んでいる治に気が付いてしまう。
見様によってはマンガでも読んでいるような姿に、思わず声を出してしまった。
治「してるよ。教科書読んでる。」
麗奈「教科書?あ、ホントだ……。」
治「俺はいつも教科書丸暗記してるから、筆記用具あんまり使わないんだよね。紙がもったいない気がしてたからさ。それに家で勉強できるタイミングあんまりなかったし。」
麗奈「ふーん……。」
治が以前住んでいた家は、治が物心つく前に父親がいなくなって以降、治と母親の2人暮らしだった。
結果、心を病んだ母親の八つ当たりの矛先が治に向くことも多く、あまり家で安心できる時間自体がなかった。
その為、母親がいる時間帯はできるだけ外で活動し、家でもこっそり行動していたので、どこでも勉強できるように教科書を読んで丸暗記するという方法をとっていた。
美佳「教科書を丸暗記で点数とれるのか?」
治「試験は毎回学年10位までに入ってるから大丈夫なんじゃないかな?マークシート方式だともうちょい順位上がることもあるけど、筆記テストは苦手なんだよね。」
花蓮「でも教科書読むだけで10位までに入れるって凄くない!?マネできる気がしないけど!」
聖羅「不公平ですわ……。」
カリカリ紙に単語を書き込み続けて暗記していた聖羅が不満を漏らす。
もっとも、治は何か特殊な能力があるわけではなく、暇さえあれば教科書を読んでいるために覚えてしまうだけなのだが。
そうして勉強からまた脱線したタイミングで治が時計を見る。
治「そろそろ食料買い出し行ってこようかな。皆晩ご飯は食べて行くの?」
麗奈「もち。」
美佳「大盛で頼む。」
花蓮「お肉たべたーい!」
聖羅「甘い物で脳を労わってあげたいですわ。」
どうやら全員食べて行くようなので、ささっと出かける準備をする治。
治「じゃあ行ってくるけど、何か他に買ってくるものある?」
美佳「特にないな。最悪ちょっと歩けば私の家もあるしな。」
治「そういえばそうか。」
麗奈「お泊りセットもちゃんと持ってきたしね。」
治「そっか……え?」
麗奈たちは、どうやら今晩泊まっていくつもりだと気が付き、それは思春期の男女としてどうなんだろうと思った治だったが、そもそも友達が部屋に遊びに来るという経験が無いために、これが普通なのかもよくわからない。
むしろ、自分以外の4人とも特に違和感もないようなので、女子が友達の男子の部屋に泊まるのは普通の事なのかもしれないと考えておくことにした。
スーパーで2食分の食料を買ってきた治。
麗奈たちからは、1人につき2食分でそれぞれ1000円が渡されているが、治からするとちょっともらいすぎな気がしている。
麗奈たちは麗奈たちで、少なすぎるんじゃないかと思っていたりするのだが、自炊する場合人数が増えると1人分にかかる費用が安く済ませられる治にとってはありがたい話だった。
麗奈「今夜のメニューは何?」
治「鶏肉と卵が安かったから、オムライスと親子丼で悩んでるんだけど、どっちがいい?」
麗奈「オムライスかなぁ?」
美佳「どっちも美味しそうだからどっちでもいいぞ。」
花蓮「オムライス!」
聖羅「とろとろのやつがいいですわ!」
そうして、しばらく治が料理しているのを4人がじっと見ているという不思議な空間が生まれた。
治「なんで皆そんなに見てるんだ?」
聖羅「私も料理作れるようになりたいからですわ。」
麗奈「アタシも。将来誰かに作る時のために。」
花蓮「カレシに手料理とか憧れるよね!」
美佳「うぅ……、タマネギのみじん切りは見ないほうがよかったかもしれない……。」
タマネギに負けてる者を放置し、みじん切りのタマネギを炒めて行く。
ある程度色が変わってくるまで火を通したら、細かく切った鶏肉を投入。
この段階で塩コショウをササっとかけてしまう。
火が通ったらケチャップを適量投入。
ご飯を入れる前に投入して水分を飛ばすことでケチャップの味の深さが増すと治は思っている。
水分が飛んだらご飯を入れて混ぜ、チキンライスが完成だ。
治「オムレツ自分で作ってみたい人いる?」
4人「はい!」
治「……おおう、意欲がすごいな。」
4人それぞれ順番にオムレツ部分の作り方を教えて行く治。
美佳以外の3人は、卵はトロトロ派らしいので、高温からの余熱によって加熱する方法を選択し、皿に盛ったチキライスの上に中がトロトロのオムレツを乗せてから割り、中身のトロトロをあふれさせる非常に映えるものになった。
美佳だけは薄焼きでくるむタイプがいいと言っていたので、それを4つ作る治。
内3つが美佳の分だ。
オムレツだけではなんなので、鶏ガラスープと少し残しておいたみじん切りのタマネギ、乾燥ワカメでスープを作り、ついでに茹でたブロッコリーも添えておく。
鶏肉とブロッコリーは全てを解決するらしい。
筋肉もりもりの人が言っていた。
治「じゃあどうぞめしあがれ。」
4人「いただきます(わ)!」
殆どは治が作っていたが、一部とはいえ自分で作った料理を食べる4人。
それぞれが感慨深そうに味わっている。
麗奈「んー!ちゃんとオムライスじゃん!」
治「そりゃそうでしょ。」
麗奈「いやいや!アタシにとってはすごい事なんだって!」
花蓮「ちゃんと火使って料理したのすっごい久しぶりな気がする……。」
聖羅「……オムレツをひっくり返す時に、危なくどこかに吹っ飛びそうで焦りましたわ……。」
治「ぷっ!……ふふっ、アレは……カッコよかった……!」
聖羅「笑うなんてひどいですわ!」
美佳「美味しいなこれ!」
女子4人組は、見た目からは中々想像がつかないがお嬢様だ。
それぞれ家の厨房には家政婦がいるし、中でも一番のお嬢様である花蓮の家なんて、料理人が作ったものをメイドがテーブルへ運ぶ。
そのため、自分で料理をする経験は絶対的に足りていない。
なのに何故か全員簡単なお菓子作りだけは叩きこまれているのが不思議ではあるのだが。
全員が食べ終わり、片づけを始める治。
手持無沙汰になり、麗奈が話を振ってくる。
既にこれが勉強会だという事は忘れている。
麗奈「治ってさ、こういう料理お母さんから教わったの?」
治「いや、俺の料理はこの前の旅館の料理人たちに教えてもらった。母親は料理全然できない人だったし、俺が作って出したら食器ごと投げつけてくるような人だった。」
麗奈「えぇ……?」
軽い気持ちで聞いた麗奈。治も軽い気持ちで答えたが、軽さの基準が治なのは問題だ。
麗奈「治のお母さんってどんな人だったの?」
治「どんな……?どんなだろう……。」
改めて聞かれると、よくわからないと答えたくなる治。
それでも、昔を思い出しながら答えてみる。
治「俺の母親は、高校生の時に俺を妊娠したらしい。父親は、大学生だったって聞いた。父親に養う能力が無いから、爺ちゃんと婆ちゃんは堕ろせって言ったらしいけど、それは嫌だって駆け落ちして、無理やり結婚したんだってさ。でも父親は、俺が産まれる前に他に女ができていなくなっちゃったらしい。しかも、俺が産まれてから母親を連帯保証人にした借金まで作ってたのがわかってさ。それの支払いのために水商売し始めたって聞いた。」
麗奈「……なんか……すごいね。」
花蓮「うん……。」
聖羅「ヘビーですわ……。」
治が身の上話をすると大抵暗い雰囲気になる。
治もそれは自覚しているが、聞かれたら応える事にしている。
治にとってはすでに過去の事で、今自分は健康に生きているのだから気にすることじゃない内容だからだ。
治「近所の人が言うには、水商売始めてから段々精神的におかしくなっちゃったらしくて、俺が小さいころにはもう大分危なかった気がする。それでもしばらくは何とかなってたんだけど、今年入ってからはもう現実と妄想の区別がついてない感じだった。怒ってたと思ったら、いきなり泣き出して、すぐに笑って、知らない男の名前を叫んでたり。んで、ある日熱湯が入った鍋を俺に後ろからぶつけてきたんだよね。」
麗奈「は!?」
花蓮「大丈夫だったの!?」
聖羅「それでも母親ですの……?」
治「あんまり大丈夫じゃなかったから、すぐに風呂場に飛び込んで背中に水でシャワーかけまくって耐えてたら、なんか救急車が来たんだよね。母親が呼んでたらしいんだけどさ。」
花蓮「もう滅茶苦茶じゃん……。」
聖羅「何がどうなってるんですの……?」
麗奈「……その後どうなったの?」
治「いつの間にか気絶してたんだけど、気が付いたら病院のベッドでうつぶせに寝かされてた。お医者さんによると、火傷は最悪って程では無かったけど、それでもそこそこ大怪我だからしばらく安静にしてなさいって言われてさ。でも入院し続ける金なんて無いし、可能な限りスムーズに退院させてくれって言ったらすごい怒られた。その後、高額医療費制度……だっけ?なんか医療費の上限決めて返金してくれる制度教えてくれてさ。まあそれでも1週間くらいで無理やり退院してきたんだけど。」
麗奈「いや、入院はちゃんとしないとダメでしょ……。」
花蓮「もうちょっと自分大事にした方が……。」
聖羅「今は大丈夫なんですの?」
治「火傷の痕は残ってるみたいだけど、痛みとかは無いかな。まあ、あんな状態の母親を一人で家に置いといたらどうなるかわかったもんじゃなかったからさ、さっさと帰って様子見たかったんだよね。でも、家に帰ったら母親が死んでてさ。」
3人「………。」
治「居間のドアノブに掃除機のケーブルで首吊ってた。遺書もあったけど、内容が支離滅裂だった。それでも、世の中の全てが敵に見えてた感じだったな。恨みつらみが書きなぐられてて、半分くらいは俺に対してだったな。お前がいなければもっと楽だったのにとか。後は、どこから金を稼いできてるのかわからないのが不気味とか。」
麗奈「酷くない!?治別に悪くないじゃん!」
治「俺もそう思う!あのババァ好き勝手言いやがって!って思ってる!」
花蓮「……あ、そういうアグレッシブな感じなんだ?もっとしんみりするやつかと……。」
聖羅「どういう感情で聞けばいいのかわからなくなってきましたわ……。」
治「でも最後に、俺に対してごめんって書いてあったんだよね。本当に訳が分からなくなってたんだと思う。未成年で子供できて、駆け落ちまでしたのに夫には逃げられて、勝手に作られた借金返すために水商売なんてやってればそうもなるのかなって同情もしてる部分もあるんだよなぁ。まあふざけんなって感じだけれど。しばらく無断で休んだせいでガソリンスタンドのアルバイトクビになってたし。」
聖羅「世の中いろんな家庭があるんですのね……。」
花蓮「パパからの干渉がウザいとか思ってたけど、全然大したこと無かったのかもしれない……。」
麗奈「……治はさ、お母さんとの良い思い出って何か無いの?」
麗奈は、治の中の母親の記憶が悲しい物だけであってほしくないと思って聞いただけなのだが、治はまた悩んでしまう。
治「うーん……、正直あの人とあんまりまともな会話が成立したことが無くてなぁ。あーでも、小さいころに一回だけ動物園連れて行ってくれたんだよね。それだけはすごく楽しくて嬉しかった覚えはある。」
麗奈「動物園?あの山の近くにある?」
治「近くの動物園ってあそこしかないからそうだと思うけど、結局その後1回も行ってないからわからないんだ。それに、記憶も朧気でよく覚えてないんだよね。カバがスイカ噛み砕いてたのと、ゾウのおしっこがすごかったのは覚えてるんだけど。」
麗奈「もうちょっとまともな記憶ないの!?」
花蓮「まあ子供なんてそんなもんかもだけどさ!」
聖羅「どんなに奇麗な思い出も台無しですわ!」
治「いやすごかったんだって。嘘だと思うならインターネットで動画でも検索してみてよ。ほんとに笑っちゃうくらいドバドバ出てるから。」
治の謎の熱意に押されて、あまり見たくも無いのにゾウの放尿動画を探してしまう3人。
ヒットした動画には、滝のように放尿するアフリカゾウが映っていた。
麗奈「…………ふふっ。」
花蓮「いや出すぎでしょ!」
聖羅「ひっ……!ふふっ……!これ……夢に出ますわ……!」
治「でしょ!?しかもこれを小さい時に生で見たら臨場感がすごいんだって!」
非常に下らない内容でやけに盛り上がる4人。
こんなネタでゲラゲラ笑ってたと知られたらそこそこ恥ずかしいのだが、やけにツボにハマってしまったのか、なかなか気持ちが切り替えられない。
その時、部屋の中からかすかに嗚咽が聞こえてきた。
治が何事かと音の方を見ると、先ほどから静かだった美佳がグスグスと泣いていた。
美佳「ごめ……ごめんな治……!私は!お前とずっと学校も……一緒だったのに……辛いのも気が付いてやれず……!ごめんな……!」
治「あー、うん。美佳には何度か俺の身の上話したけど、毎回めっちゃ泣いちゃうな……。」
治が美佳の前で今までの経緯を放したのは、これが3回目だ。
1回目は学校の教室で、2回目は親戚一同の前で。
特に1回目は、周りにクラスメイトがいた上に、そこまで詳しく話したわけでもないのにすごい号泣だった。
それでも、流石に今回は慣れたかと思っていた治だが、美佳は基本的に涙もろいので、多分今後も同じ事になるのだろうが。
治「俺は、美佳にはすごく感謝してるんだって。美佳が俺の話聞いてくれて、伯父さんに話通してくれなかったら俺ここにいないんだ。もっと毎日アルバイトして、虫の養殖とか魚釣りで金を限界まで稼いだってさ、こんないい建物になんて住めなかっただろうし、多分何かを楽しむ余裕なんて相変わらず全くなかったと思う。女友達が俺が作ったご飯食べて喜んでくれるってだけでも、ちょっと前の俺にとっては夢みたいな状況だし。だから、俺の今までの人生の事で謝ってほしくない。それより、俺のありがとうって言葉を聞いてほしい。」
美佳「う゛ぅ……おさむぅ……!」
治「あと鼻水でてるぞ。美人が台無しすぎる。」
美佳「みるなぁ……!」
治が差し出したティッシュで鼻をかむ美佳。
悲しい話を聞くとすぐ泣く美佳だが、一回泣くとある程度落ち着くようで、気持ちの切り替えは早い。
まだグズグズ言っているが、とりあえず落ち着いたようだ。
麗奈「治はさ、今幸せなの?」
治「ああ。今までの人生で今が一番幸せだと思う。」
麗奈「……そっか!」
考えるまでも無いというように、すぐさま答える治に安心する麗奈。
さっきサラッと治が美佳を美人と言っていたことにモヤっとしたりもしているが、それは置いておくことにしたようだ。
治「あーでも、今少し心配してることならあるかな。」
麗奈「そうなの?アタシたちにも関係ある事?」
治「すごく関係あると思う。」
花蓮「なになに!?相談なら乗るよ?……友達……だし?」
聖羅「私もですわ!」
美佳「私も友達だし!しかも従姉だからな!」
先ほどまでの空気に当てられてテンションが上がっている4人。
しかし、それも長くは続かない。
治「いや、勉強しないの?」
4人「あっ。」
治、初めての勉強会の夜。
暗い表情で勉強を再開する女子4人を見やりながら、とりあえずお風呂でも沸かしておくかと、少しだけ気遣いができるようになったのを実感していた。