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第30話 まさかの危機!

 翌日。今日も私は学校が終わると、すぐさま真っ直ぐ家に帰る。教室を出る時にチラリとオウマ君を探したけど、その姿はどこにもなかった。


「シアン、今日もオウマ君とは、一緒に帰ったりしないんだね」

「そりゃそうだよ。だって理由がないもん」


 一人で帰ろうとする私を見て、パティが言う。

 オウマ君がエイダさんから私を助けた一件は、未だ学校中に大きな波紋を残していて、中には私がオウマ君のお気に入りだって噂や、実は付き合ってるって噂まであった。

 おかげで私達は、これ以上誤解が広がらないよう、学校で話すことはなくなり、帰るのだって別々だ。そして何より、一緒に昼食をとることもなくなった。おかげで私は、オウマ君の豪華弁当を分けてもらえなくなったよ。とほほ。


「うーん、噂では色々言われてるけど、もしかして二人って、本当に何もないの?」

「だから、最初からそう言ってるじゃない」

「でも、前にシアンのこと、エイダさん達から助けたんだよね?」

「だからって、そこから話が飛躍しすぎ。確かに助けてもらったけど、それだけだから!」


 本当はそれだけってわけじゃないんだけどね。

 今日だって、これからオウマ君はコッソリうちに来るわけだけし、そこだけ見ると、なんだか本当に逢い引きしてるような気分になってくる。


「とにかく、噂なんてデタラメで、全部誤解だから!」

「うーん、そうなのかな?」


 これだけ口を酸っぱくして言ってるのに、半信半疑のパティ。だけど、彼女がこんな風に思うのも無理はない、実は今までだって何度も同じようなことを言っているんだけど、それ以上に新しい噂が次々と流れてきては、どれを信じたらいいかわからない状態らしい。

 この調子だと、誤解が完全に解けるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


 ため息をつきながらパティと別れ、学校を出て家へと続く道を歩いていく。

 だけど、角を曲がって人気の少ない小路に入った時だった。


「あの、すみません」


 道の向こうから歩いてくる人に、突然声をかけられる。それは、目深に帽子をかぶりコートを羽織った、見覚えのない男の人だった。


「少し道を訪ねたいのですが、いいでしょうか?」

「はい、どこですか?」


 後にして思えば、この時もう少し警戒するべきだったのかもしれない。話を聞くため、不用意に近づいたその瞬間、急にその男の手が伸びてきて、私の腕を掴んだ。


「えっ、ちょっと……」


 驚いて反射的に振り払おうとするけど、その手の力は思いの外強くて、ちっとも離れてくれない。

 そこでようやく、これはヤバイと恐怖心が沸き上がってくる。


 なにこの人。痴漢? 変質者? こういう時ってどうすればいいんだっけ。声をあげるの?


 いくらヤバイと思っても、咄嗟に動ける訳じゃない。逃げようにも腕を掴まれているし、半分パニックになってどうすればいいのか分からない。

 それでも、せめて大声で何か叫んで人を呼ぼう。そう思って口を開く。

 だけどいざ声をあげようとしたその時、後ろから伸びてきた手が私の口をふさいできた。


「んんーーーーっ!」


 こうなってしまっては、小さくうめき声をあげるのが精一杯だ。


 ジタバタともがきながら、いつの間にか後ろにいた、別の男に目を向ける。

 だけど、そこにいたのは一人じゃなかった。元々声をかけてきたやつを含めて、数人の男が私を取り囲んでいた。


 どう考えても尋常じゃないこの状況に、いよいよ恐怖を感じて暴れようとするけど、彼らはそれをいとも簡単にそれを押さえつけ、私の口にハンカチを押し当てた。


(なんで、こんなことに……)


 恐怖と疑問で頭がいっぱいになるけど、それも長くは続かなかった。当てられたハンカチから変な臭いがしたと思った瞬間、私の意識は急速に遠のいていき、すぐに何も分からなくなっていった。

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