大神サナレス
こんばんは。
今日も楽しく書いています。
少し早く帰宅できたので、本日の更新は早い時間です。
他のシリーズも進めたいんですがね。
と言った時点で、近々進める性格らしいので、昼休憩の小説UPもやっていきますね。
反応とか感想とかは、ご飯です。
ご飯なくとも、好きなんで続けますが、ご飯なんです。
何卒よろしくお願いします。
※
「ルカ、おまえがラァ様が無理だからやめておけと言っても、私を仲間にしようとした気持ちはわかった」
「ーーだったら」
「けれど、それはならんな」
「どうして……?」
サナレスは深いため息をついた。
「その理由は根本的に、ラァ様と私の考えが違うからだ。軍というのは考え方が違う頭が二つあってはうまくいかない。ーーそれがわかっているからラァ様は私を引い入れることを諦めよと言ったはずだ。ねぇ、ラァお祖母様」
サナレスはラァに酒を注ぎ足した。
「ラァ様には悪いが、お祖母様の考え方はもう古い。自覚はあられますよね?」
「私の孫はジウス以上に容赦ない。笑いながら酒という毒薬をどんどん私にすすめてくるわ」
「何をご冗談を、私は貴女と一緒に飲んでいるのですよ」
サナレスは手の中の酒を空にする。
「ルカ、おまえは私に革命軍を率いよと言いながら、ラァの人脈に頼ったんですね。ーーそれは評価できたものではない。ラァ様は昔、ただ1人の少女を魔女に仕立て上げ、大陸滅亡の責任を彼女1人に押し付けた。そうしなければ世界が治まらなかったとはいえ、私からすれば、それはお祖母様、卑怯と言うのでは? ですから貴女は、世界の法規を司るとも言われるジウスに徹底的に嫌われたのだと、私は考えていたのですが、ーー違いますか?」
「おまえがそう思うなら、私は弁明するつもりはない。事実ラーディオヌ一族をアルス家から排除したのは私だ」
この一言で、ラァがまだ何かを隠していることを悟ったサナレスだったけれど、まだ革命軍に入る気にはなれずにいた。
そもそも自分は、リンフィーナを魔女ソフィアに人質に取られている。ソフィアの意思を汲むことも多くなるだろう。
ラァに火炙りにされた魔女ソフィアと火炙りにした張本人ラァが、今革命軍として貴族を配することで目的を同じにしていることが、何の運命の悪戯かと思ってしまう。
「今協力したとしても、きっと袂を分つことになる」
ラァは笑った。
「かつて軍を率い、戦乱の時代エヴァを収束した男であるサナレス、おまえなら軍と言うものがどう言うものかわかっているだろう? ロイ以上に」
「目的を同じとするのであれば、刹那的でも寄せ集まっていいと?」
「ああ。そして軍旗を取るのはいつも、その軍で最も優れた者になっていく」
ラァは小さかった。
お祖母様は何を考えているのかと思う。
彼女には野心がない。そして彼女には後悔だけがあって、それを償うために今命を生き永らえているように思えてきた。
自分が気にかけてきたロイを手中にしたあたり、彼女の策を感じていたが、どうしてこうも彼女は小さいのかーー。
「貴女も、過去にやり残したことがあるのですね?」
サナレスが問うても、ラァはただ口の端を上げた。
「なぁに、そんな大そうなことではない。太母と言われた私は、太母になった責務を果たしたいだけだ」
「貴女の遠見を可能にするその瞳には、何が映っていらっしゃるんでしょうね」
「私の未来予知の力なんてしれている。ほんの少しだけ、孫と一緒にいられるという、ほくそ笑むほどの喜びだけだ」
さてそれがひと月先、いや三日先だけの限りある未来になったとしても、彼女はそれでいいと言ってきた。
「サナレス様、革命軍にご理解いただけなかったとしても、アルス大陸で憎まれ役を勝ったあなた様が、この革命軍を隠れ蓑にしていただけるなら、それは私の望むところです」
ロイも同じ思いのようだ。
厄介な連中だ。
隠れ蓑など必要ないほど、サナレスは王族である身分を捨てたとしても、率いる組織を整えていた。
ムーブルージェを諦めて、彼女を死なせてしまったという過去を苦々しく思い、サナレスはずっと整えてきたのだ。
「一つだけ条件を飲めるなら、な。おまえ達に協力してもいい」
「条件とは?」
「これがラァ様と私が決定的に真逆である理由だ。私はアルス家の血統を決して殺めない。ーーつまりラーディア一族のジウス総帥、そしてラーディオヌ一族のアセス総帥を何があっても支持している」
「よい」
ラァが首肯したが、ロイは顔を曇らせた。
「それはアルス大陸の王族の化身2人ではありませんか? その2人を打たずして革命軍などと……」
「彼らは打たない。化身、それはつまりは象徴なのだ。私は象徴を廃することで、この地を平穏にしようとはしていない」
ラァにとっては皮肉に聞こえたかもしれない。
けれど呪術の象徴である魔女ソフィアを火破りにし、黒髪の民ラーディオヌ一族を迫害したことは、サナレスにとっては許せない過去だ。
能力や見た目で差別する世の中を肯定していては、その先の未来なんてないだろう。
「ラーディオヌ一族総帥アセスは、私の友だ。そしてラーディア一族が忌み嫌った銀髪の貴族、ロイーーおまえの父であるルカもまた私の親友だった。私に妹ーー、いや将来伴侶に望む姫もまた銀髪で、私が望む平穏な未来にあって、アルス家を蔑ろ(ないがしろ)にすることはできない」
サナレスは少し笑う。
「百年以上、王族貴族のしがらみに振り回されたが故に、私にも確たる正義ができた。それを曲げない範囲であれば、おまえ達の考えも受け入れよう」
ロイは神官だと言うのに、まるで軍人かのように胸の前で拳を作り、右手でその拳を握りしめ、サナレスの前にかしづいた。それは兵士が大将に心臓を捧げると言う表明のポーズだ。
いったい誰に教わったのかーー。
「父とお呼びしたかったが……、私にとってやはり貴方は大神サナレス殿下です。殿下ーー、お心のままに!!」
感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。
何卒反応よろしくお願いします!
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー