見過ごせない怒り
こんばんは。
書くのが楽しくて描いています。
すごい枚数ですが、お付き合いいただける方、お願いします。
不精でして、相互フォローとかそもそもやり方がわかりません!
すみません。ただ書いています。
※
「わかっているならーー」
サナレスは落胆して、掴み上げたアセスの胸ぐらの拳の力を緩めて、がっくりと項垂れる。
「ーーほんとにお前……、それって生きる世界を変える……、ーーいや、冥府って場所を考えるなら……生きないって選択肢を選んだってことなんだぞ」
「心得ていますよ、すべて」
「おまえ、そんな簡単に人生を決めるな。ーーリンフィーナは……!」
裏路地の壁に、そのままアセスの身体を押し付けて問い正した。
険しくなる自分の眼差しを、アセスは少し驚いた顔で眺めていた。
「貴方がそれを言うのですか? リンフィーナとサナレス、貴方達は私とではない未来を選んだんでしょう?」
「お前っ……」
「わかっています。私はリンフィーナに選ばれなかった。なんとか力づくでも彼女をと思いましたけれど、わかってしまったんです。彼女の決意」
サナレスは目を細めてアセスを見ていた。
決意ってさ、意識して決めたってことなんだけどな。彼女の本心がどこにあるのか、考えたこともなさそうだ。
もっとアセスと話さなければならないと思っていた。
でも革命軍はサナレスを探しているはずで、この場にそうゆっくりとはとどまってはいられない。
「おまえ、どうやって私を探し出した?」
「貴方が無理やり冥府の扉をこじ開けたんでしょう? まさか自覚がないんですか? 統治者の使い魔と契約して、こっちの世界に連れ出したら、冥府にはそれは派手に伝わりますよ。貴方ーー、今全ての冥府の亡者から、天変地異の権化だと思われているんですからね」
李蘭とかいう女の下僕、炎の使い手、あれと契約したからかーー?
自覚はなかったけれど、サナレスは斜め上に顎を傾けた。
驚いてはいたが、驚いた風を装わないくらいには歳をとっている。
「アセス、おまえの提案を飲むよ」
サナレスは苦笑した。
追ってくる革命軍。おそらくはウィンジンも自分達を探すだろう。リンフィーナとのこともアセスと話さなければならない。
自分達には時間が必要だった。
冥府が、時間を与えてくれる場所だというのであれば。
もう一度煉獄の門でもなんでも、こじ開けてやろうという気持ちになった。
「何があっても、私が貴方をこちら側に戻します」
「そんな言葉、望んでないよ。おまえさーー、おまえ自身がこちら側に戻ってくる努力をしろ。私と、勝負するとか言ってただろ?」
「ーーリンフィーナは……」
「私がまだ勝敗がついていないと感じている。察しろ」
乱暴な言い草だったけれど、サナレスは説明したり同じことを繰り返し言うのが好きではなかった。そしてアセスは、理解者だった。
「承知しました。ひとまず、行く宛がないと言った貴方を冥府へお連れします」
冥府の統治者になったなどと言うアセスの言葉を、サナレスは半信半疑で聞いている。冗談なんて言えるほどの器用さをアセスが持ち合わさないことは百も承知で、できれば冗談であってくれと思っていた。
だがアセスは持ち前の律儀さで、サナレスが目にする世界を一瞬で一変してしまった。
リンフィーナを自分のものにする。
初めて妹ではない感情で彼女を見た。
考える時間をくれたのはアセスだった。
正々堂々と三角関係に挑むつもりだと言ったのは、百も年下のラーディオヌ一族の総帥で、未だラーディア一族を背負う覚悟すらしていないサナレスを震撼とさせるような存在だった。
自分の気持ちがわからないままのサナレスを置き去りに、リンフィーナが強烈にアセスに惹かれていった。
彼女が焦がれた男がアセスであって、なぜかほっとしたのだ。
それなのにーー。
目の前ーーつまりリンフィーナとアセスが関わる世界がいっぺんし、冥府に変わってしまって、絶望する。
「アセス、本当におまえ……、冥府の統治者になるなんて言ったのか?」
「ええ。私は貴方に嘘は言いません」
リンフィーナは?
彼女がこの先にずっとアセスを恋焦がれ、アセスを追って行ったら、彼女も冥府に住むことになるのか?
ああ。もうふざけるな、と心の中でサナレスは叫んでいた。
こんな魑魅魍魎が日常にいる世界に、彼女を住まわせることなんてできない。
おまえもだ! アセス!!
苦しかった。
心の中に火の玉を飲み込んだかのような熱さがあって、苦しい。
「撤回したい」
「え? 何をです?」
「とりあえず、ヨアズに会わせろ」
クソッタれ!!
珍しく頭に血が上り、目が座っていた。口汚い言葉だって、冥府で叫び出したいくらい、サナレスは血気盛んになっていた。
取り戻す。
アセスと、彼に惹かれるリンフィーナ。
こんな文化すらない冥府に、ーー音楽すら届かない冥府に、2人を置き去りにはできないから。大切な人を冥府に送る。もうそんなことは絶対にできない。
かつて冥府に愛する人と親友を、なす術もなく送ってしまった。
「サナレス、どうしてヨアズ様に会いたいなどと?」
「ヨアズなどに様付けするな」
冥府の王などクソ食らえだ。
「貴方の父上ジウス様のーー兄上なのですけれど……」
「知るか」
ジウスのことだって罵りたい衝動に駆られていた。
「サナレス、貴方どうやってシヴァールを殺しましたか?」
「光の属性の呪力、少し覚えたよ。空気や色ばかり考えていたけどな、音も司る。つまり音速で攻撃できること、光の属性の強みだろ?」
「さすがです」
何がさすがだ。
おそらくアセスは呪術において全ての属性を使うほどの天才で、だからこそ自分がリンフィーナの婚約者に望んだ男だった。
やっとシヴァールを狩る方法を学んだサナレスとは格が違う。
「サナレス。ヨアズに会いたいと言うのであれば、私が取り次ぎます。けれどその前に、冥府はかなり不安定で、それが各世界に及ぼす影響は大きい。ーー李蘭を探さなければ」
後書き
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




