めんどうだと思うことには
こんばんは。
そろそろこの章も終盤に差し掛かります。
とはいえ長編なので、この章だけではおそらく意味不明。
ということで後書に物語の順番を載せてきました。
お付き合いいただける方、よろしくお願い申し上げます。
※
この場にいれば、絶対に背負わなければならないものがある。
殺すか、もしくはこちらに従うという彼らと同盟を結ぶか。
一族を背負って決断するという、一番苦手とする面倒臭さがそこにあって、サナレスは口の端を歪める。
ここにいる全員に小さな小競り合いだと、自分の気持ちを伝えたかった。
でもそんなことはできない。今できることには限りがあった。
「めんどくさいんだよ。ばっくれよう」
サナレスはそう言ってアセスの手首をつかみ、引いていた。
アセスは、百年前の幼馴染ルカではない。
「はぁ? 貴方はまたこんな時に冗談を言っている場合ではありませんよ」
感心しないと眉間に縦皺を刻む、生真面目王族総帥のアセス相手にサナレスは、軽く笑う。
「お前は私を連れ戻しに来た。違うか?」
「それは……そうですが……」
「だったらお前に乗ってやると言っているんだ」
「このような状態で、ーーシヴァールを見逃すと?」
サナレスは片眉をあげてアセスに言う。
「そんなこと、私がすると思うか?」
「思いますよ。貴方の軽い性格なら」
ーーこいつ誤解している。
サナレスは落胆したけれど、指を刺した。
「見てみろ」
シヴァール。
現状でいくら子供の姿になっているとはいえ、こいつだけは許さない。
サナレスが指差した目の前で、シヴァールの首は身体から引きちぎれて転がっている。
子供の首が転がっているのは、かなりシュールな場面だった。
アセスだけではなく、そこにいる全ての者が、「いったいいつの間に?」といった感情を表情に貼り付けている。
音速ってのも、光の呪術だった。サナレスはさらに新しい能力を発揮していた。
たぶんシヴァール、こいつは呪われている。
だからこそ、その呪いが遂行されており、サナレスが首を落としたところで、こいつにとっての致命傷にはならないんだけどな……。
「あいつだけは送ってやった。冥府へ。だが、死ねないことが彼の悩みで、またあいつは生き返るだろう。それを待つのはめんどくさい、と言っている。ひとまずは、これでいいだろう? アセス」
アセスが目を見張って状況を判断している。
「ウィンジン。君もさ……、同盟とか言う前に、個々の罪に対しての恨みを考えてくれないか? 私はウィンジン、リンフィーナの命を軽んじなかった貴方には感謝するが、貴方の組んだ相手については、許すつもりには毛頭なれない。最悪の相手だ」
サナレスは毛の逆だった獣のように攻撃的になるアセスの手を握っていた。
「行こう、アセス。この場はめんどくさい」
氏族の代表が顔を合わせて、世界の行く末を考える場所ではない。
事態はもう、この世界の枠には収まらないのだから。
サナレスが楽器を捨てても、ルヴィは歌い続けていた。
この世の誰よりも、清らかな歌だ。
サナレスはそれを直視できないところにいる自分を感じて、ルヴィに背を向けてアセスの手を引く。
たぶんロイは自分を追ってくる。
でも音楽という名の芸術に、サナレスはもう二度とこの世で触れることはなさそうだと感じていた。
ヴァイオリンという弦楽器を、ランシールドの総帥であるウィンジンの足元に転がして、サナレスは走り出した。
無造作に置き去りにしなかったのは、歴史上サナレスが愛でてきた楽器だったからだ。
「この場は、退いていただいて結構です、サナレス殿下」
自分の背中にウィンジンが声をかけてきた。
「ですが私が受け取ったご意見はシヴァール、そして、もう一方いらっしゃいます」
「誰?」
想像できていたのだけれど、社交儀礼で聞いてみた。
でも足は止めない。
「ジウス様ですが?」
でしょうね。
だからこそサナレスは振り返らなかった。
「アセス。行こう」
後書き
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




