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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
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過去と向き合う

こんばんは。

新春は付き合いで週末ゴルフ三昧でし太。


2月はボーリング月間です。

とりま、大会までにボーリングしようかな。

2月のテニス強化もあるのだけれど。

全部手首痛めそうです。


どんない手首を痛めても、キーボードさえ叩ければ。

ほちほちかける楽しみがあります。

        ※


「総員、構えておけ」

「どうして、サナレス? 我々は同盟。ランシールド一族は貴方の氏族の配下になると申し上げましたのに」

 ウィンジンは心底悲しげだった。

「私は貴方の妹姫リンフィーナ皇女のために手を回し、この場を整えた」


「そうかもしれない」

 サナレスは本心でそう思ったけれど、サナレスの横に歩みを進めてくるアセスが、ウィンジンの意見を頭から否定する。


「そんなの貴方の勝手な思い込みでしょう? 彼女のためですって? それってリンフィーナに、一言でも聞いてみたんですか? それなら話は別ですがね、ーー少なくとも貴方達は、彼女のことを何もわかっていない」


 女人のような美しい顔で眉根を寄せるアセスのことを、サナレスはよく知っていた。彼が動く時、その行動のほとんどがリンフィーナのためなのだ。


 それくらい純粋。

 だから味方にはしても、絶対に敵にしたくないタイプの男だ。


 細い肢体ではあるが、アセスは気だるそうにサナレスとウィンジン、そしてシヴァールの前に割って入った。


「サナレスもーー、貴方は器用なぶん許容範囲がすぎて、潔癖さを時に軽んじます。一度でも危険な駆け引きに出ようとした者など、相手にすべきではない」

 アセスは鼻で笑って、ウィンジンを睨め付ける。


「こういった方々は、すきあらば、貴方の裏をかいてリンフィーナを狙うでしょう。まぁ、ーー私も……」

 自嘲気味に口元を歪めたアセスはこちらに一瞬視線を向ける。

「私もこの男と同じように彼女を狙う立場だから、気がついてしまうのかもしれないのですが」


「ほう……」

 サナレスは感心して吐息をついた。口には出さないが、自分が妹として子育てした魂は、どうやら世界を左右する様々な者を魅了したようだ。


 いったいリンフィーナ、妹の何がそんなにも魅力的なのか。

 冷静に考えると、笑えてくる。


 彼女はいつだって自信がなく、いつも背伸びしているような小さな魂だった。

 1人でいることに耐えられず、寂しがりだ。そして目を離せば、すぐにトラブルを起こす。


 天性でわがままな素質があるのに、自信がないから人の顔色を窺って(うかがって)、奇想天外な発想で他の者が思いもよらないようなことをしでかしてくれる。


 でもーー。

 自分だってそんな彼女に落とされた。


 最愛の女性。この世にはもういないとはいえ、生涯最愛の女性だと誓ったムーブルージェを裏切るほどの決断をしてしまっているのだから、ずいぶんこの小さな魂、リンフィーナにご執心だ。それは認めざるを得ない。


「これ以上、お前以外のライバルを増やすというのは、確かに得策ではないな」

 サナレスは苦笑した。

「そうでしょう? 仲良く同盟なんてやっていられるほど、我々は平和な世の中にいないのです、サナレス」

 リンフィーナその人自身を失うかもしれない。

 アセスがボソッと呟いた本心を聞き逃さず、サナレスは首肯した。


「すまないなウィンジン。一対一の時は、本気になってもらえなかったようだが、二対二になった。今度は本気で手合わせ願うよ」

 そう言い終わるか終わらないかのうちに、アセスは先制攻撃に出ていた。身体に響く音で地響きがして、身体が一瞬浮遊する。


 遠くで甲高い声が聞こえてきた。

「ロイ兄様! またサナレスが勝手なこと言ってるんだけど。私達がいるってこと、あの人忘れてるんですけど!! ねぇ、ロイ! 悔しくないの!?」

 ルージェの声だった。ロイと一緒にいて、手を出すなという指示の元に足止めしているロイを煽って(あおって)いる。


「貴方がお望みではないかもしれませんが、我々も参戦します。今、結界を壊します」

 ウィンジンがランシールド一族に張っている結界を、ロイは力でこじ開けようとしていた。

「ラーディオヌにできて、ラーディア一族神官長を担ってきた私にできないはずがない」


 ーーどこと競っているのだろう……?

 サナレスは頭を抱えた。


 さっさと目の前の天道士と魔導士2人を片付けなければ、革命軍として率いてきてしまったものが暴走する。

 味方が増えると喜んでいられるほど、単純な問題ではない。きっと無駄死にする者を増やすだけだ。


「アセスーー」

「何ですか? サナレス、貴方にしては初動が遅い」

 相変わらずアセスは無表情だ。敵だと認識した相手のみに無駄なく呪力を向けている。


「シヴァールには少なからず怨恨があります。まず私は、こいつから片付けましょう」

 キレた者ほど強いものはない。

 アセスは完全にキレてしまっていて、四方八方にその影響が行くことも考えられないほど、シヴァールの息の根を止めることを楽しんでいる。


 こんなところだけ……。

 リンフィーナをこいつに任せきれなかった部分なんだけど、未だアセスはわかっていないようだ。

 若さゆえか? サナレスは舌打ちする。


「私のツレが結界内に入ってこようとしている。結界内の全てを崩壊させるのは、ランシールド一族全てを滅ぼすということだ。加減しろ、アセス」

 そう声をかける傍で、シヴァールがランシールド一族内を炎で包む。


 おいーー。

 想像できないことではなかったけれど、ウィンジンが組んでいる相手のシヴァールも、キレると見境ない男らしい。


 ウィンジンもシヴァールの行動に焦っていて、彼が燃やした部分を水の力で消火しているといった始末だ。


 ウィンジンの炎に耐性があるアセスの地を動かす力、大地を割いて地層を動かす力は、容赦なくランシールド一族が築いてきた神殿各地を廃墟に変えていくし、シヴァールが焦土にしようとするほど火力をあげて立ち回る。


 この状況で、サナレスは自分がどうすればいいのか判断しなければならなかった。


 人は面倒な事態に巻き込まれた時ほど、アルゴリズム的な思考を早送りする。


 最優先事項は2つだった。

 とりあえず、キレた2人を取り押さえる。

 結界を破ってまで自爆しに来ようとする革命軍の連中を死なせない。


 どうすれば?

 アセスとシヴァール、キレた2人をねじ伏せるだけの力が、自分にはない。

 命をかけるなら可能かもしれないが、ここで差し出すほど、自分の命は軽くはない。


 一方でロイが結界を破る状況を、阻止できないだろう。

 日頃冷静なロイではあるが、立場ゆえの状況と妹分のルージェや革命軍メンバーの矢面に立ってしまっている存在だ。


 自分同様に、困り果てているのはウィンジンだ。

 自らの領土をめちゃくちゃにされている、最大の被害者だ。サナレスはお悔やみを申し上げたいほどなのだが、この状況はラーディオヌ一族のアセスが参入し、彼自身が見栄を張って作ってしまった状況とも言える。


 一緒にこの場を治めようかと、サナレスが提案しても彼は受け入れないだろう。


 ーーだったら、どうする?


 一瞬考えたサナレスは、ひとつのギアを手にしていた。

 滅びそうになるランシールド一族の神殿内でサナレスが見つけたのは、楽器だった。


 弦楽器。

 ランシールド一族は文化的で、多くのエルフが住まう一族だったと聞いていた。


 この楽器は、弦楽器でメロディを奏でるヴァイオリンだ。


「歌え!」

 叫んだ言葉は、弾け飛びそうなほどの諍い(いさかい)の最中だったと思う。


 楽器を肩に乗せた。

 今自分ができる行動は、アセスと共にランシールドを滅ぼすことではなさそうだった。


「歌え! ムーブルージェ!!」

 いや、ムーブルージェはもういない。彼女の声を継承しているのはルージェ。

「歌え、ルヴィ!!」


 先行させたのは自分のヴァイオリンの音色だった。

 ムーブルージェが死んでしまって、封印したものはたくさんあった。

 数えるとキリがない。


 自分に課した戒めだ。


 ひとつ、恋愛。

 彼女の他、誰をも好きにはならない。


 ふたつ、差別。

 ラーディア一族の中で、あらゆる差別を許さない。


 みっつ、音楽。

 全ての音楽を捨てる。


 すでにひとつ目を反故にした。

 三つ目まで守れないとは、とサナレスは苦笑する。


 サナレスが音楽を口にしそうになったのは、赤子だったリンフィーナを寝かしつけるための子守唄ぐらいだったのだが、今、手の中に楽器があった。


「ムーブルージェ……、音ってすごいよな」

 誰にも聞こえない声で呟いて、サナレスは楽器を奏でた。

 天使の声を奏でるムーブルージェと一緒に音楽を成立するために、幼いサナレスはヴァイオリンを奏でた。天使の声と協奏できる旋律を出すのは、サナレスが奏でる楽器だけだった。


『ねぇ、私達って吟遊詩人みたいね』

『君の歌を最大限まで引き出せるのは、僕のヴァイオリンだけだと思う』

『うん。でもヴァイオリンって貴族だけが所有する楽器だからね。サナレスは吟遊詩人になったら、他の楽器も奏でないといけないわね』


 幼いころ交わした会話を思い出した。

 ムーブルージェ、君との思い出だけが、ずっとーー。ずっと自分を縛ってきている。


 でも少しづつ変革しようとしているのをサナレスは感じていた。


 





後書き

感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後

5「炎上舞台」

5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」

6「魔女裁判後の日常」

7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

9「脱冥府しても、また冥府」

10「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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