信じるものは
こんばんは。
本日ドローンサッカーなるものを見てきました。
これから流行るのだろうという近未来感があるスポーツ、実際に身体は動かさないけれど、いや目と脳と指先は使うかな?
なんだか、かつての運動神経とは違う部分を使う新たなスポーツができたんだなと認識した1日です。
本音。
ついていけない。
でも追いかけよう。
※
サナレスを追うという気持ちもなく、現状ではお荷物ーー、言い換えればほとんど棺桶の中の死体だったアセスは、ソフィアにいきなりサナレスの元に送られた。
出会い頭の事故にあったような感覚だ。
だるい。
頭を抱え、掌で頭を押さえて、ここがどこなのかを考える、血脈が身体中に戻ってくるまで、目眩と頭痛があり、体を動かすことすらままならない。
だから状況は、すぐさま理解できなかった。
霞む視界の向こうにランシールドの総帥がいて、サナレスは彼から『我が王』などと言われている。
銀髪のランシールドの総帥は、この世に存在していたことさえ驚かれるような人で、ランシールドが滅んだあとに発掘された銀髪の生きた化石だった。
自分のラバースとしての記憶があるので、化石が化石ではない。現実なのだと受け止めることはできるけれど、一目みた瞬間、アセスは彼を敵だと認識した。
ランシールドの総帥は、常軌を逸した呪力を秘める男だった。太古から生きた神、でもラバースの記憶が、こいつはリンフィーナを狙っていると警鐘を鳴らす。彼女を狙っていると感じたのは感覚的なものだが、銀髪の男を敵と認識するには十分だった。
まして彼の側にいる者には、煮えくりかえる思いがある。
シヴァール。
どこまでも執拗にリンフィーナを追い詰めて苦しめる存在が、控えていた。
どうしてサナレスが、この2人と対話しているのか、アセスには理解できなかった。
生命という感覚が体に戻ってきて、冷静に周囲を観察すると、サナレスは自分の臣下を従えているけれど、彼らはサナレスの指示を受けて動いていない様子だった。
リンフィーナは近くにいない。
見たところ対話している双方の力は五部と五部で、緊迫感が続いていた。
※
アセスには、珍しくサナレスが迷っているように見て取れた。
らしくもない。
『それでもテーブルについていただけるようで、私としては安心いたしました。先刻申し上げた通り、誓いは生きているのですから、我が王よ』
ラバースとしての記憶ではウィンジンという男、イケすかなかった。隙あらばリンフィーナを狙うような男だ。その男から『王』と言われている状況を考えて、さらにウィンジンの横にシヴァールが控えているだけで異常事態だった。
動けるか?
アセスは自分の身体能力を確認した。
異世界転生して赤子から別の世を生き直し、その後また冥府に戻ることになり、身体の運動能力はかなり萎えている。
筋肉って使わないでいると、本当にすぐ弱っていくのだ。
脳から身体に出す指令ですら、神経細胞が正常かどうか確認しなければならなかった。
さっきから耳は聞こえた。だから耳から自分の脳が声として音を認識し、意味を理解する部分は壊れていない。サナレスや、ここにいるウィンジンとシヴァールと、自分の関係性を記憶しているので、海馬も正常。脳の一部はちゃんと機能している。あとは運動能力を司る部分を確認しなければならない。
異世界転生して赤子からやり直した時の人生には、情報が溢れていた。脳が人の全てを支配しているという、生物学の基礎は書物から学んでいた。
棺桶の蓋をずらした状態で、気だるいけれど半身を起こして、脳と手指の連携を確認した。
山村悠希。
異世界転生して得た体験は、アセスとしては大きすぎた。
冥府という、異世界と異世界を仲介するような場所と、転生した先での文化の発展を見てしまい、自分はなぜか幸運にもその記憶を失っていなかった。そしてアセスとしてまた、身体を動かす魂を失っていない。
記憶があるまま、元いた世界に帰れているのだ。
身体が不自由ではないと確認できると、アセスは立ち上がった。
話し合いという場所の中にいるサナレスは気が付いていないかもしれなかったが、外部から邪魔が入らないよう、ウィンジンが水の結界を張っていた。サナレスの臣下らしい者達は、気がつかないうちに結界の外に出されている。
例えばこの状態では、サナレスがウインジンの提案を拒否したとしても、一歩も二歩も出遅れて、勝てない縮図が見えてしまった。
『我が王よ』と、サナレスは持ち上げられていた。その上で『リンフィーナに仇なす存在ではない』と弱いところをつかれている。
胡散臭いウィンジン、そしてリンフィーナを何度も苦しめ、その中の魔女ソフィアという女を飼い殺したいなどと言っているシヴァールと手を組んでいいはずがないと、アセスは一瞬で判断した。
ソフィアは乱暴に結界の外でサナレスに一番近いところにアセスを投げ込んできた。それって多分、意図したことだったのか、そうではないのか?
だが絶好のタイミングだった。
結界の中にいる者はアセスの存在に気づいていなかった。
とりあえずーー。
「破ろう」
アセスは自由に動く左手を前に伸ばした。
五芒星が刻まれた左手を手首から直角に曲げて、ばちばちと抵抗する守られた空間を壊していく。
さすがは天道士が用意した罠だと、考えずにはいられなかった。
幾重にもサナレスとリンフィーナを絡め取ろうとしている。
サナレスが控えさせている結界外にいる者達も、自分たちが結界外に追いやられているという認識がないようだったので、目を覚させてやる。
今そこにいる、作られた状況は異常だ。
水と炎の使い手が手を組んだ結界は、相反する属性が故に隙が少ない。
だがアセスは元々地の呪力を扱い、その容姿ゆえに他の精霊からは魂を取り込まれそうなぐらい熱愛され、この度冥府に行って闇の力も得ることになった。
破れない結界は、もうない。
破った瞬間、珍しくアセスは声を上げた。
声量をコントロールするのは苦手で、ボソボソと声を出すことが当たり前になってしまっていたのだけれど、サナレスの決断を一刻も早く阻止したかった。
「この方はサナレス・アルス・ラーディア。アルス家の長を私と競い合う存在。つまりアルス大陸で滅びかけたランシールド一族、そしてアルス家皇女リンフィーナを脅かした存在と手を組む必要など、つゆ程もないと私は思います」
サナレスが驚いた様子で自分を見てきて、アセスは少しうなづいた。
「私と貴方が揃えば、何の同盟も他に必要ない。違いますか?」
「アセスーー?」
サナレスは驚愕してこちらを見る。
サナレスのこんな顔を見せられるとは、嬉しい。
自然とアセスの口角が上を向く。
「死んでいたと思えば……」
「死にませんよ、貴方との勝負が終わらないうちは。それに私達が望むものって、アルス家でも大陸でも、権力でもないですよね?」
アセスは片眉を上げた。
サナレスは口の端を上げる。
「そのとおり」
首肯する。
「だったら、形勢逆転。ーー私が信じるのは、お前だけだ」
後書き
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




