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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
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生きた年月

こんばんは。


今日はテニスしていて、いつもの時間にUPできず。

なんだか一日一章のペースに戻ってきている今日この頃です。

やっぱり書くのが好きなのだなぁと思います。

        ※


「やはりこの子は一筋縄ではいかないようだね……」

「ご無沙汰しております。太母ラァ・アルス・ラーディア様。ーー妹リンフィーナのために呪術をご教授いただいた折には世話になりましたね」

 カウンターの奥から様子を伺っている気配に、サナレスはとうに気がついていた。


 ジウスがラーディア一族を鎖国した。

 その事実は一瞬自分を拒絶したのかと懸念したが、ジウスの天敵を考えれば矢面に立ったのは太母ラァだった。

 リンフィーナの話でも、彼女がラーディア一族を発たなければならなかった時、ラァは行方不明になっていたと聞いていた。


 どうして神そのものを生み出したと言われる太母ラァが、今になって神の氏族を滅ぼそうとしているのか、その点については合点がいかなかったけれど、革命軍なんて組織を率いることが可能なのは彼女ぐらいだ。


 ロイでも、彼女の言葉になら耳を傾ける。2人には接点があった。

 ロイの父であり、サナレスのかつての親友ルカの養育者なのだ。


 カウンター奥から姿を見せたラァはいつものように顔の半分を覆うほどのフードをかぶっていたが、薄い唇の口角を上げ、面白がっているようだった。


「この子はね、私の可愛い孫だというのに、私のことを昔から顎で使うんだ。ーージウスと同じなんて、私が考えるわけがないだろう?」

「それならばいいのですがーー」

 2人の会話にロイの表情は凍りついていたが、ラァは「だからこの子を引き入れるのは難しいと言ったはずだ」と失笑している。


「人が悪いーー」

「ムーブルージェの件を利用したことは謝ろう。しかしルージェの気持ちは嘘ではない。お前の伴侶はんりょとなる候補者に考えてやってもいいのではないか?」

「ラァ様ーーだから人が悪いと言っているのです……」


 私が認知したロイを手下にし大義を抱かせ、ムーブルージェそっくりのルージェを利用した。

「そのようなやり方を続けてきたなら……、ジウス様に嫌われるのは当然でしょうね」

「ーー言いたいことを言ってくれる……」


 ラァは酒瓶から酒を注ぎ、ぐっとそれを喉元に流し込む。

「もうずいぶん老化が進んでいますが、あなた、革命したいのか死にたいのか、どっちなのです?」

 率直にサナレスが質問すると、少し震えていた彼女の手がぴたりと止まる。


 千年生きる王族の神の氏族であったとしても、老化を促進させる方法はいくらでもあった。老化は病気なのだ。それが証拠に王族貴族であったとしても、老化の進行具合は様々だった。


「ジウスもヨアズも……、おまえのように竹を割ったような性格ならこうならなかったのかもしれないな……」

 太母ラァの姿は既に背中が曲がった老婆だった。

 少し前まではまだ、老化の兆しを感じ始めた中年女性といった容姿だったのに、確実にに老いていっている。


 ロイが更に酒を仰ごうとする彼女に向かって、首を振って静止しようと努力していた。

「いけませんラァ様。これ以上は毒にしかなりませんので」


 これ以上とかじゃなく、酒なんて一滴でも毒だろう。

 その毒を浴びたいと思う者は数えきれないほどいるかもしれないが、とサナレスは嘆息たんそくした。


「ラァ様、ーー私はあなたに少し借りがありますね?」

 サナレスはロイより先に、彼女の手に握られている杯に手をかけて蓋をする。

 そして飲むことを中断させるではなく、「何がお好きなのです?」と聞いた。


「一緒に毒をあおりましょう。私もねーー、ムーブルージェやルカ、そしてレイトリージェを失って、長すぎる寿命について辟易へきえきしております。ですから一緒に飲みましょうか? そしてあなた様を千年以上悩ませてきたことについて、共有しようじゃありませんか?」


 たった百年生きただけでも、今思い返せばしんどかった。

 過去を振り返ると、何度も未来に絶望してしまったけれど、未来には希望もあって、また立ち上がる。


 太母ラァは、千年という寿命を得たジウス以上の時を生きた。

 それだけで彼女が抱えてきた重みが違うこと、彼らから言わせればたった百年と少ししか生きていない自分には、到底わからない苦労というか、虚脱感があったに違いない。


「ーー孫と話すのも悪くはない」

 ラァは素直に、サナレスの盃を受け取った。


感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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