パニックを認知するには
こんばんは。
今日も楽しくテニスした後、小説を書く日々なのですが、
色々したいことがあります。
そもそも挿絵を描きたい。
それにキャラのフギュアも作りたい。
ロードに乗りたいし、テニスしたいし、たまにゴルフもラウンドするのもいい。
色々やりたいことが多くて、人の寿命では足りないですね。
今日、テニスに夫婦で来ていた方が、やめていました。
諸事情ということのみ伝えられましたが、
高齢のご夫婦に、とても若いコーチは「父ちゃん、母ちゃん」と読んでたんですよね。
その呼称はどうかと思ってました。
特に「母ちゃん」と呼ばれていた年配の女性、不満そうでしたしね。
私の母が言ってました。
「図書館に行ったんだけどさ、職員からお母さんって言われたんだよね。ーー奥様はいいけどねぇ、結構おっさんにお母さんと言われる覚えないし、私はおまえの母になった覚えはないんだけどと思った。ついでにさ。奥様って呼ばれ方はハイソな感じだけど、お母ちゃんってなんかさ、服装振り返ろうかと思ったわ」
女性は複雑なようです。
怖い。震えるし。
※
リンフィーナが想像していた港町は、そこにはなかった。
前回ラーディア一族を追われる形になって、隠密のまま渡り歩いた港町の雰囲気とは、質を異にしている。
ラディと立ち寄った港町には、人魚という心配事があったけれど、この沈鬱した港町にはいったい何があったのか? そしてこのような影を残す港街で、本当にサナレスが列車を降りたのかどうか?
その2点が気になってしまい、リンフィーナは海辺で眩しい太陽の照り返しを感じながら、日差しの強さに疲れていた。
それなのに、列車を降りたリンフィーナを見た駅員は、最敬礼の姿勢で腰を折った。
「皇女リンフィーナ様でいらっしゃいますか?」
皇女と言われたリンフィーナは、出来うる限り姿勢を整えた。
こんな辺境の地まできて、王族だという意識を強くする必要があるなど正直面倒だと思ったけれど、自分達はサナレスの足跡を辿っているのだ。サナレスにとって恥ずかしくあってはいけないと思った。
「サナレス様から、おおせつかっております」
「会える? 今日兄様に会えるの?」
「会えるように手配しております」
ナンスは相手をやぶ睨んだ。
「本当に?」
「いえ。私案内できるのはこの駅舎を出て、サナレスから伝言をたまわった所までです」
わりと絶望的なことを言われた。
「だったら、この先どうやって、兄様に会えるの!? そこに滞在していれば兄様は来る?」
「サナレス様はそこにいらっしゃると仰せでした。私にはそこまで案内してほしいと」
ナンスは鼻を鳴らした。
「果たしてそれはどうかな? 世界に望まれることを、望まれる頻度で、望まれる規模と人脈を辿れば、自然と好機はめぐってきます」
「意味わからない」
そんなことはどうでもいい。ただリンフィーナは一刻も早くサナレスに会いたかった。
「貴方は依存しすぎだ」
ナンスの言葉に耳を貸せなかった。
後で咀嚼すれば、ナンスは彼の役目通りの言葉を発していたと思う。でもこの時、リンフィーナは港に着いたばかりで、サナレスに会える手がかりを短絡的に期待した。
「待っていてどうにかなるのかな? 僕はリンフィーナ、一刻も早くアセス様をこの世に戻らせなければならない。ここで足止め、ただサナレスが現れるのを待つなんでできない。僕はこのままサナレス殿下を探しに行きたい」
二者択一。
サナレスが待っていろと伝言した場所に出向いて、大人しく待っているか、アセスの命の灯火を気にして、情報通りサナレスが向かったであろうといラン・シールド一族に突撃するか。
「んーー」
ごめん兄様!
リンフィーナはナンスに同意した。
大人しく待っているのは性に合わない。これは昔からの悪い癖だった。
「貴方とは行かないわ。事態は一刻も争うし、兄様には後で謝る」
体裁や格好つけるという考えなんて、ナンスとの間では取っ払われていて、リンフィーナは案内役を一掃した。
「そんなーー皇女様」
彼の脇を通り過ぎて駅舎を出て行こうとする自分達一行を、手を伸ばし、止めようとしてくる。
「皇女様、お待ちください」
「待っている時間はないのよ。兄様が今ここに現れたら話は別だけど」
ナンスが指先で棺桶を浮かせてアセスを運び、すり抜けていく。
「皇女リンフィーナ! 困ります!!」
口調だけは丁寧だったが、不躾に肩をつかまれた。
「ーー何をっ!」
無礼であることを伝えようと振り返って睨んだ瞬間、駅舎内に現れた案内役の頭が不自然に左側に吹っ飛んだ。
えっ?
自分の体にも、感覚があった。
掴んでいた肩への圧が無くなった感覚。
それから駅舎内だというのに、スイカの種でも飛んできたかのように、ぷつぷつっと突然水滴がかかる。
ーー何!?
かかった水滴は顔にまで及んでおり、リンフィーナは自分の手で頬を拭った。
赤い。
掌についたものは単なる水滴という密度ではなく、ねっちゃりと絡みついて、赤い。
俯き加減になっていて、確認したものをすぐさま認識できなかった。
瞬間的に怒った出来事をやっと検証しようとして左側に吹っ飛んだ案内役に、リンフィーナは目を向けた。
そして血の気がひき、驚愕して呼吸することに失敗して、ひくっと悲鳴にならない嗚咽を漏らした。
死んでいた。
左側に吹っ飛んだ案内役は、駅舎内の冷たい床に転がって、頭が潰れ、彼が倒れた頭の左側には血飛沫が飛び散っている。
「リンフィーナ! 来ます!!」
ナンスが脳天に響くような声で警鐘を鳴らした時、リンフィーナの目の前を小さな黒い玉が通り過ぎた。自分でそれを避けたつもりはないが、ナンスの声に応じてソフィアが警戒したらしい。
ナンスを振り返ると、彼はアセスが入った棺桶を庇いながら、無数の黒い小さな点に傷つけられていく。すぐに血まみれになっていくナンスを見て、リンフィーナは動いていた。
手を伸ばし、飛んでくる虫のような黒いものを数十個、掌で受け止めた。
火薬の匂いがする。生き物ではない。
掴んだ手が焦げて、痛い。
けれどナンスと彼が庇うアセスに、黒い虫のようなものを近づけることを阻止できた。
阻止したのもソフィアだ。
「ナンス、逃げよう」
「すでに逃げられるほど、元気ではないのですが」
アセスがいる棺桶を身をていして庇ったナンスは、かなり血を流していた。
一方リンフィーナは無傷だった。
ソフィアはナンスとアセスを守ろうとした訳ではないらしい。
攻撃が来て、その進行方向に自分と彼らが居たので、自分を守った結果ナンスとアセスの致命傷を防いだに過ぎない。
「ちょっとソフィア、アセス様やナンスのことも守ってよ」
『私にとってアセスは死んでいいし、ナンスはうるさいからな。おまえのこともどうでもいいが、この体に傷がついたら、私も痛い。そう判断しただけだが?』
ソフィアはどこまでも利己的だ。
リンフィーナは眉間に皺を寄せて、唸るように言った。
これは脅しだ。
「三人とも生きていなければ、絶対に死んでやる。絶対にあんたを外に出さないまま、自害してやるんだから」
『それは困る』
ソフィアは答えた。
彼女がそう言った瞬間、おそらくは鉄砲だと思える小さな鉄の塊を構え、自分達を取り囲んでいた集団の手首から先が、空気の刃に切り落とされた。
「うわー!!」
その場が奇声と共にパニックになる。
敵とはいえ、突然両方の手首から先が切り落とされて、自分達に黒い虫を飛ばしてきた相手が絶望の悲鳴をあげて混乱していた。
『これでいいのか?』
得意げに言ったソフィアに対して、リンフィーナはめまいを覚えた。
むせかえる血の匂い。
駅舎内が血まみれになってしまっている。
こんな化け物級の魔女が自分の中にいる。
自覚せざるを得なかった。
「ナンス、逃げよう」
やり過ぎなのだと訴えるより先に、リンフィーナはナンスに肩を貸した。
「ごめんナンス、私は力を調整してアセスを運べない……」
「わかってる。僕が運ぶ」
『この荷物、サナレスまで運ぶのか?』
「違う!」
「待って!!」
ナンスとリンフィーナが答えるよりも早く、リンフィーナはめんどくさそうに手を打ってきた。
『お荷物なら先に運んでおく』
そう言ったソフィアは、アセスの身体が居る棺桶を、一瞬で消してしまった。
「アセス!」
「アセス様!!」
逃げることに必死になっていたリンフィーナとナンスは、呆然と立ちすくんだ。
『ほら、さっさと逃げよう』
後書き
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
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「十G都市」ーレシピが全てー