いにしえからの因縁
こんばんは。
楽しく続けています。
最近めっきり秋になり、油断すると冬ですね。
もっと油断すると正月が駆け足で迫ってきそうですが、楽しいのでぼちぼち書きます。
意見交換とかしたいのですが、孤独に描いています。
話しかけて。反応して。
なろうとは年齢層も違うので、他のページに飛ぶことも少なく、孤高の時間になっている。
※
「少しだけ縁があって、気が乗らない」
サナレスは言った。
「失礼ながら全て調べさせていただいております」
「ラン・シールドの総帥はどちらかというと時代の被害者だ」
「けれど半人半魚の事件を引き起こしているのはラン・シールドが氏族でしょう? 下手するとラーディオヌ一族よりも厄介、神々の域を超えて、魔物に姿を変えようとしている」
サナレスが知らないはずはないので、ロイはあえて口にしなかった。
ラン・シールドが氏族はアルス大陸歴紀元前、滅びの時を迎える魔女裁判後直後に、一族の谷ごと海中深くに沈んだ一族だ。
彼らは総帥の神力で海中の中で千年生きながらえてきたが、時を経て氏族の民は海中で生活できるように進化、あるいは退化していった。
「少なくとも彼らの存在は人の王族を巻き込んでおりますよね……」
ラーディオヌ一族は呪術を肯定してきたとはいえ、アルス家直径が兄弟氏族としてラーディア一族と共にあり、人の暮らしには極力影響がないよう配慮する氏族だ。むしろラーディオヌ一族は薬学という観点では、人に貢献する氏族だった。
「ラン・シールド一族は危険視した方がいいでしょう。サナレス様は総帥の片割れ、ウィンジン様をご存知だと思いますが、彼の双子の姉であるユヴァスは非常に好戦的な性格をしているという話です」
これだけではサナレスを動かすことはできないと実感していたので、とっておきの情報をサナレスに話す。
「そもそもラーディオヌ一族の総帥アセス様が魔道士にならざるを得なかったのも、水月の宮がユヴァスが差し向けた兵に襲撃されたからだというところまで掴んでおります」
「そうか……」
少しだけサナレスの感情が動いた気がした。
「アセス総帥は妹姫であるリンフィーナ様を守るため、一族を裏切ってまで魔道士になられたこと、ご存知でしょうか?」
「ーー知っている」
サナレスの心に言葉の毒を塗り込んでいることは承知していた。
まさかとは思ったが、サナレスは想像以上に銀髪の皇女であるリンフィーナに思い入れがあるらしい。
「ことの発端はラン・シールドが氏族なのです。先にラーディアの水月の宮の領地を侵してきた」
「そこまで調べたとは大したものだ」
サナレスは全てを把握しているようだった。リンフィーナか、もしくはウィンジンに聞く機会があったのだろうと、ロイはサナレスの行動を促すことは難しいと、内心で嘆息した。
そしてサナレスから逆に問われた。
「革命軍を率いるようになったお前は、差別についてどう考える?」
「銀色の髪だとか、呪術の力があるだとかで差別するなんて、馬鹿げています。そんなものに振り回されて生きるなんて、まっぴらだ」
「ロイ、聡明なお前でも感情的になるんだな」
サナレスは少し悲しげに笑った。
「差別ってさ、違うものに対して、優劣をつける概念だと私は思うよ。優劣の中には、恐れや妬み、牽制ってのも入るかな……。人は自分と違うものを否定したい性分なんだ」
サナレスはロイの髪をひとつまみした。
「銀の髪には呪力が宿る。そんな広告のような文句が広まったのは、魔女と言われるソフィアと当時王太子であった双子のジウスとヨアズが居たからだ。彼らの力はあまりに強大で、人々に畏怖され、排除された。その時ちょうど世界に天変地異が起こる時代背景だったことを理由に、彼らを差別したのが始まりだ」
「ーーそのようなこと、歴史書で学んでおります。けれど現実はーー!」
サナレスはロイが言おうとするその先を、唇の上に人差し指を立てることで封じてしまう。
「現実というか、史実は残酷だったな」
今もその因縁は脈々と続いている。
「てことでさ、革命軍こそ、現代に起こっている異形、つまりラン・シールド一族を異端視して攻撃するのは間違ってないか? 私は、それこそ差別だと思うのだが」
「それは……」
論破されると、サナレスが正しいと思えてくる。
けれどロイは、革命軍の核になる存在に傾倒していて、言葉を詰まらせた。
「ふん……、だから私はお前たちの仲間、いや見え透いたカタチばかりの長になんてならないと言った」
サナレスは象徴になるなんて御免だと言って口の端を歪める。
「ロイ、お前じゃない。そして私でもない。革命軍の長って、他にいるよなぁ?」
サナレスは更に鋭い突っ込みをしてきた。
「お前は妹みたいなルビィを危険に晒す(さらす)ことに反対したはずだ。でも私に薬を盛ることができたのはお前だけだ。ーールビィはお前を指示する立場じゃない。ということは、もう一つ上から指揮系統があったと考える方が自然なんでね」
ロイにとって、認知してくれた父だと自慢したいサナレスは、天井人だった。
ここまで見破られていたら、革命軍というものを創始した御方を紹介せざるを得ないと思う。
だがロイは戸惑った。
自分の意思では決められないほど、至高の御方なのだ。
動揺していると、サナレスは更に言及してきた。
「想像はついているんですけどね。 私と……ルカの子であるロイまで味方にできて、このような大掛かりな革命軍を率いることができる人、ーーそれに一番にラン・シールドを敵視するなんて、私には見え見えなんですけど……、私は父とは違いますよ」
サナレスの声に凄みが増していた。
「太母ラァ様、あなた以外いらっしゃらないでしょう?」
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偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
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