窓に映る行く末たち
こんばんは。
ちょっと久しぶりになりますか。
年末、掃除が忙しい。
まとまった時間が取れないから、一日一日、掃除する箇所を決めて新年を迎える準備をしています。
クリスマスも近い。
準備するのを楽しみにして過ごします。
※
「あなたは兄様に会ってどうするつもりなの?」
『ーーただ、約束したことを守ってもらうつもり』
ナンスが理想的なことを言ったところで、一つの体で二つの人格が納得するのは難しい事案だった。
彼女たちはずっと会話し続けている。
特別室をとっていなければ、二人の会話は単に精神のおかしい人だと認識される。
「何の約束をしたの? 私は聞いていないわよ」
『これは私とサナレスが交わした契約だからな。お前は知らなくていい』
疲れていないはずはないと言うのに、二人の会話は尽きることがない。
列車に乗って二日目の夜だ。
「あのーー、貴方達このところ眠れていますか?」
列車に乗り込んだその日、少しだけ意識を失う時間があっても、彼女達はずっと向かい合っている。
心配になり、ナンスは二人分の少女の魂に声をかけた。
「眠れないーー」
『この世に起きてから、ずっと寝ていない』
二人の少女の魂は、正直に状態を語ってくれる。
「順番にね。はい、リンフィーナ」
「アセスが冥府に行ってるって状況だけでも眠れないのに、サナレス兄様の行方もわからない。この状態で眠れたら、自分の神経の太さを疑ってしまう。当然眠れないよ」
「じゃ、次はソフィア」
『1000年ぶりに目覚めたんだ。寝てたまるか。また永遠の眠りについてしまうかもしれない。サナレスが私との約束を守るまで、絶対に眠るものか』
「貴方が寝ないから、私も眠れないのかも」
『眠いなら永遠に寝てればいい。お前なんて必要ない』
リンフィーナとソフィア、彼女らの押し問答の内容は幼稚だった。
初日の夜は少しは眠っているように見えたがーー。
そんな二人でも、サナレスに会いに行くことには異論がないようで、ナンスは軽く二人をまとめる方策を口にした。
「明日、もしくは明後日、サナレス殿下と会う機会が訪れたとき、貴方達はこれほど醜くていいんですかね?」
二人が自分の言葉に硬直したように感じる。
「ーー醜い……?」
「ええ、残念ながら。私から見ても、今の貴方達は心を病んだ人にしか見えませんし、残念ながら王族だと言うのに、目の下にくま、何歳かは老けたご様子で、魅力的とはとても言い難いのですが……」
ナンスは務めて冷静に、現状把握したことを口にした。
「私は明日のこともありますからもう休みますが、お二人の話では本日も寝ずに押し問答をされるご様子ですよね。止めませんので、遠慮なさらずどうぞ。私は耳栓をして眠らせていただきます」
本心だったので口の端をいじわるに上げたナンスは、何か楽しくなった。
どいつもこいつも勝手なのだ。
そもそも、臣下のことなど何一つ考えずに冥府に行った主からして勝手なので、これ以上面倒をみる義理はないと思っている。
「ではおやすみなさい」
ナンスは列車の窓ガラスに映るリンフィーナの姿を横目に見ながら、自分の足元で棺桶に横たわるアセスを見て悲しくなった。
主アセスとリンフィーナ、この二人だけでも成立しにくい婚姻関係だったと言うのに、そこにソフィアという別人格が混在し、その別人格はサナレスに執着している様子だ。
リンフィーナのブラコンぶりだけでも大変だというのに、アセスの命をかけた希望の行く末にある幸薄さが気になって仕方がない。
彼女らはナンスに醜いと言われ、落ち込んでいる様子だ。
「少しは寝ないと……」
『お前が寝ないんだろ……』
まだ牽制しあっている。
暗くなった列車の中で、ナンスはずっと窓ガラスに映っている少女の姿を眺めていた。
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー