後悔することがある
こんばんは。
なんだか、シリーズ違い「偽りの……」と「オタク……」
を同時進行中。
関連する部分だから、同じ小説を書いている気分。
気分的に文章量多少削ってる三人称「偽りの」と
文章を極限まで減らす「オタク」の一人称。
勉強します。
楽しんでもらえるように。
※
初恋に夢中になった。
だからできないことなんてないと思っていたけれど、ある時期サナレスは悟ってしまった。
病気の彼女を連れて旅に出るなんて、彼女を殺してしまう行為だと。
気がついて、大人になっていく。
けれどどこかに靄がかかっていて。
サナレスは追憶をづづけた。
「サナレス、どうして母さまとの約束を破ったの?」
「ごめんなさい」
病気のムーブルージェを慰め(なぐさめ)たくて、それと自分が彼女から頼られたくて、母との約束を破ってしまった。
罪悪感だけが、どこか記憶に残っていたけれど、どういった約束を破ったのか、今のいままで思い出せないでいる。思い出せないのに、サナレスは王族である自分が、フィラ公爵家に簡単に出入りしてはいけないのだと思い込んでいた。
そんなことをうっかり忘れるサナレスではないと言うのに、どうして記憶が混濁したのかーー。
記憶の中の母は、違うことを責めていた。
「サナレスあなたは人前で、その力を使ってはいけないのよ」
子供の自分の腕をつかんで説得する母の姿を、大人になったサナレスは少し離れた位置から俯瞰する。
「どうして?」
子供のサナレスは素直に母に質問していた。
「目立たないのがいいの。目立つって敵を作ることなのよ。目立たずに、しんどくない道を行く方がいい」
母は祈るように言ったのだけれど、サナレスには納得できないことがあった。
「僕だって目立ちたくなんてないよ。でも、やりたいことはやりたいんだ!」
ムーブルージェを元気づけられたんだから、力を使ったことは間違いじゃないと、子供のサナレスは主張していた。
力って……。
聞き分けのない自分を説得する母セドリーズは、周囲に人がいないかを確認するように気配を配り、声をひそめた。
サナレスは忘れてしまっていた記憶に意識を集中する。
セドリーズがこれから口に出すことが、知りたかった真実だ。
「金髪でも呪術を使えるなんて、私達は特殊なのだから。絶対に知られてはいけないのよ」
愕然とした。
「知っている者は限られているの。お願いだからサナレス、絶対に力を使わないで。この力を使ったら、私達親子はラーディア一族に居られなくなる!」
過去の記憶を、脳の中に保存して封印していたサナレスは、封印を解いてしまった。
子供のサナレスは、母から言われたことをムーブルージェと関わってはいけないと記憶のすげ替えを行っていたけれど、そうではない。
ムーブルージェといると力を使ってしまう自分を、封じたのは自分自身だった。
すっとトリップした過去から、現実世界に戻ってくる。
少し頭が朦朧としていたが、サナレスは自分の弱さを自覚することになった。
母に言われたことが子供心にショックだった。
力ーー、つまり呪力があることを知られたら、ラーディア一族を追放されることになると恐れていた母の言葉は、直接サナレスの恐怖に変質し、サナレスはムーブルージェと距離をとった。
けれど彼女を忘れられなかった自分は、おそらくラーディア一族なんて捨てても平気だと、旅に出ることを夢見たのだ。
そして自分の気持ちにケリをつけていた。
ムーブルージェに対しても、アルス大陸を捨てて旅に出ることが自分の夢だから、病気の彼女を連れていけないと、用意周到な言い訳を考え、記憶を改竄してきたのだ。
後悔することは嫌い。
嫌いな言葉は、後悔先に立たずだったけれど。
この時ばかりは、子供だったとはいえ弱すぎた自分を非難したかった。
そして大人になっても、ムーブルージェが死んでしまったことがネックになって、今まで過去と間向かわなかった。
なんという失態。
呪術の才のない自分が、ソフィアという変異種と契約したからといって、魔道士になるなんてそもそもおかしな話だった。
「ーー私は、生まれた時から呪力があった……?」
わかっていたら、そもそもリンフィーナを守るためにアセスを巻き込むことはなかったのかもしれない。
自分一人で解決できたかもしれなかった。
ーーいや。
そんな迂闊な自分だったから、ムーブルージェを死なせたし、リンフィーナはアセスと出会ったのだ。
サナレスは暗い部屋の中で唸る(うなる)。
死ぬほど後悔するよ。
感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー