過去の記憶
こんばんは。
一日どれだけ書くんだ?
芸術の秋ですね。
私の場合読書の秋ではなく、頭の中の本の排出の秋です。
※
手品を見せろってーー?
サナレスは項垂れ(うなだれ)た。
革命軍は無理難題ばかりを要求してくる。
呪術の力をかつて自分が使ったことがあったのかどうか、それを自身に問うた時、サナレスはイエスと回答を得てしまった。だから余計にタチが悪い。我関せずを通せないでいる。
ずっと封印された記憶が、ルージェの言葉をきっかけによみがえってきて、サナレスは過去を確認する作業に数分間を割かれたと思う。
史実だけを受け止めるなら反応すらしないで済んだ気がし絵いる。
けれど。
「いいだろう……」
考えるよりも行動することの方が楽で、ルージェの要求のまま、サナレスは彼女を浮かせようと呪力を使った。
ああ、簡単だーー。
これがソフィアの力なのか、自分が持っていた力なのか判別はつかない。単に彼女を納得させるためだけのイルージョンだった。
それなのに、実験のために宙に浮かせたルヴィは、目に涙をいっぱい溜めている。
「サナレス! サナレス! やっぱりあんたはすごいんだってば。金髪の呪術師、あんたがきっと世界を変える!!」
すまない……。
手品だ。
ソフィア(魔女)と契約したからだと、ぬか喜びしているルビィには言わなかった。
頭の中がスッキリしなくて、持ち上げたルヴィを、指先一本で室内をくるくると周遊させてみる。
ルビィは幼子に戻ったように、きゃっきゃ言っており、サナレスはこれで済むならと、色気のない方向への着地点に胸を撫で下ろした。
宙に浮かんだルヴィは両手両足を開きながらひとしきり浮遊感を楽しんだ後は、サナレスに手をのばし、首元にすがりついてきた。
「すごい!!」
嬉々として身体をすり寄せてくる感覚を受け止めながら、「それはどうも」と苦笑いを浮かべる他なかった。
「ーーほんと単なる、手品だよ」
ソフィアと契約する、それは魔道士に落ちたことを意味する。
呪術の資質がなくとも魔道士になるのか?
そんな疑問は持たなくはなかったけれど、契約したその日から、ーーというか魔女ソフィアとお近づきになった頃から、自分は呪術を使えるようになってしまった。
「手品でも、すごい、すごい!」
自分の力かどうかも分からない不透明な状態を手放しで喜ぶなよ、とサナレスは思ったけれど、ルヴィがこちらに向けてくる笑顔はムーブルージェを思い出させ、幼さはリンフィーナの姿を重ねてくる。
ムーブルージェでもリンフィーナでもない。
彼女は違う。
それなのに二人を錯覚させるなんて脅威だなと、サナレスはうつむいて鼻を擦った。
全然色気は感じない。
だからと言って。
「子供じゃないんだから、はしゃぎすぎだ」
サナレスは頭を抱えた。
感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー