歌声に反応する手品
こんばんは。
もー。節操なくどっちも書いてます。
アニメ「ヒロアカ」見ながら、ながら♪
ミルコ戦ってるなぁ。
※
組織ってのは面倒だ。
だって自分達で長を決めておきながら、長の下でずっと小さな政治をやっているからだ。
仲間を作り、相手を中傷する悪口を言い、そんな汚い顔を忘れて常に上仁媚びへつらう。
どんなふうに組織を束ねていこうと、必ずアンチ派がいるし、そいつらは瑣末な政治を繰り返して、波のように押し寄せてくるのだ。
「やっぱ組織率いるのとか、めんどうなんだよ!」
自室に戻ったサナレスは、唇を噛んで窓枠を叩いた。
だが、革命軍とはいえラーディア一族の民がラン・シールド一族の民が一戦交えてはいけないと思っていた。
サナレス一個人が、歴史上黒幕として名を刻むことになったとしても、ラーディア一族は『守らなければ』と考えたサナレスは、自分の思考に首を傾げた。
随分皇子らしくなったものだ。
愛国心ができていた。
「何がめんどうなの?」
不意に部屋の扉が開いた。
「鍵をかけていたんだがな……」
「え? 忘れちゃった? 昨夜も忍び込んだでしょ?」
サナレスは人差し指を眉間に当てた。
「ルージェ、私は女性に押し入られる趣味はないよ」
「私だって推しいる趣味なんてないけど」
「じゃあ勝手に鍵まで開けて、何の用だ?」
彼女は苦手だった。
黙っていればどうしてもムーブルージェとその姿を重ねてしまって、心の古傷がまだズキリと痛んでいるのを感じていた。
「貴方は今朝、私にひどいこと言った」
身の覚えはないと腕を組んで片眉を上げると、ルビィは具体的にこと細やかに口にしてきた。
「女に対して、出るとこ出てからはひどい。成長は個人の問題で、それを言ったらダメだと思う。どれだけ気がつくか、わかる?」
覚えているというのに。
そういうことを振り返すから子供なのだと、サナレスは苦笑した。
反面、リンフィーナをも傷つけてしまっていたのかと少し不安になって内省しながら、サナレスは何食わぬ顔をした。
「それで?」
「何だか割に合わないから、貴方に要求に来たの」
無茶苦茶な理論だったが、一歩一歩近づいてくる彼女は、簡単にこの部屋を出て行ってくれそうにない。
居座らせそうな気配に浅い吐息が出た。このまま我関せずで放置するか。でもしつこそうだと思ってしまった。
一応聞いてみようと断念した。
「どういう要求?」
色気のあるやつ(要求)はごめんだなぁとサナレスは辟易してしまう。
なぜかアセスを思い出した。
あいつは自分の価値を知っていたな。
だから興味を惹かれた。
価値を知らない人間は、怖いほど無鉄砲だから危険で、サナレスは身構えた。
死罪覚悟で自分の寝室に潜り込んできた女人の怖さには、何度も肝を冷やされた。
「お前は何を要求するんだ?」
完全に受け身を取ったサナレスに対して、ルビィは勢いよく言ってきた。
「寝るのは諦めた。せめて手品を見せろ」
意外性をつかれた。
は?
手品ってなんだ?
魔術師まがいが使う詐欺行為か??
「えっと……。おまえ私をペテン師扱いするのか?」
「違うって。ブームルージェ様が言ってたって、レイトリージェ様から聞いたの。サナレス殿下は手品ってのを使うって」
「ーー使わない……」
鼻じろんだ。
「だいたいお前、手品の意味わかってる?」
サナレスが吐息をつくと、ルヴィはそんなのわかってるとカラカラと笑った。
一向にサナレスが発する嫌悪感など頓着する人ではない。
「だって叔母さまが言ってたよ。金髪の術師はいないって。でもサナレス、あんたは金髪なのに呪術まがいのことができたんだって。手品なんでしょ? それ、見せてよ」
ーー。
サナレスは黙ってしまった。
「そんな能力はないよ……」
そう言った言葉の、歯切れの悪さよ。
なんだかモヤモヤとした過去に切り込まれた気分になって、サナレスは珍しく動揺していた。
呪術なんて能力は一片でも自分にはない。
それなのにサナレスは不条理なことに、現に今、呪術を使っているではないか?
それはソフィアの力だと思っていたのだけれど、呪術を使う感覚は、何か心地よく、サナレスにとって懐かしくさえあったからだ。
「そんなのは嘘だよ。あんた子供の時、ムーブルージェ様を宙に浮かせて、彼女の歌を聴いていたって聞いた。天使の歌声? 二人が共鳴する時って、公爵家の庭は重力ってのを失ったって聞いてるよ」
頭の奥が少し痛んだ。
天使の歌声に引き寄せられ、自分はどうしたのだった??
羽が生えた。
風の精霊は友達。
いや!!
サナレスは一瞬でも考えた愚かな妄想を打ち消した。
呪術なんてあくまで妄想。その一片でも真実ではなく、赤いと思っているりんごでさえ、人の目から伸びた細胞がつながる脳がなければ。赤くはない。認識できない。幻想なんだ。
ソフィアと出会って、科学で証明できないことばかり起こっていた。
証明できない、今現在では。
けれどいずれ証明できるはずだ。そう思った。
科学のーー人の学問という知識で証明できる。
「さぁ手品見せて。私歌ってみるから、貴方はムーブルージェ様を浮かしたみたいに、私を浮かせてほしいの。叔母さまは天使の歌声にサナレスが手品を見せてくれるって言ってたから」
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偽りの神々シリーズ紹介
1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後
5「炎上舞台」
5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」
6「魔女裁判後の日常」
7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
9「脱冥府しても、また冥府」
10「歌声がつむぐ選択肢」
シリーズの10作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー