表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
2/66

既成事実つくられても

こんばんは。

偽りの神々シリーズ、10作目になるのです。


日記のように書く日々が続いていますが、長編です。

てか、どれがどうつながってとか、書きたいまま書いています。

せめて後書きに、読む順番を載せているのですが。


それでいいんでしょうか……。


過去一つにまとめろとご意見いただいたので、同じタイトルで、永遠に番号ふっていくのも楽しそうですが。

こち亀ですかぁ?


        ※


「ーーうそだろ、おい……?」

 昨夜革命軍のアジトで酒を飲んだ。

 確かに……。懐かしさも相まって、少し深酒をしたかもしれない。


 けれどなんだって今、目の前に全裸の女性が横たわっているのか。

 少しの間サナレスは自分の記憶を整理しようと頭を抱えた。


 金髪の少し癖のある柔らかい髪は腰まで伸びており、女の華奢な体を覆ってはいるが、まだ大人とは言えない少女らしい裸体が側にあって、あろうことか自分に絡みついているではないか。


 革命軍の皆からルビィと呼ばれていたこの娘は、確かルージェと言った。

 ムーブルージェの血を濃く引いた、彼女の妹が、どうして一糸纏わぬ(まとわぬ)姿で横に寝ている!?


 顎を触りながら考えていると、自分が目を覚ました気配を察したのか、娘はモゾモゾと起き始めた。


 色気が足りない。

 まるでリンフィーナではないかと思い、サナレスはさらに頭を抱える。


 それなのにルージェは自分が彼女の顔を覗き込んでいると、とたんにパチリと目を見開いて、じっとこちらを見返してきた。


 そして一瞬悪い顔をして、突拍子もないことを口にしてくれた。

「昨夜は激しかったね」

 この瞬間、世の中で天才と格付けされたサナレスの頭のネジが、一本弾け飛んでしまった。


「覚えていないの? 昨夜のこと??」

 ひどい、と頬を膨らませてこちらを見つめてくる少女に、サナレスは絶句ぜっくする。


「確かに、全然覚えていないな」

 頭が重い。

 酒を飲んだだけでこうはならないことを経験で知っているサナレスは、いっぷく盛られたことを悟って舌打ちした。


「本当に覚えてないんだ。けっこうひどい!!」

「人に薬を盛っておいて、既成事実を作ろうとする方がひどいと思うのだが……」

 サナレスは身ぐるみはがされ、全裸にされていることが不本意だった。


「何言ってるの? 昨夜は意気投合したでしょ!?」

「そうだったか? 覚えていないので何も言えないな」

「覚えていなくても、こういう時男ってちゃんと意識して責任感じてくれないと!!」

「ーー意識?」


 ゾッとするほど冷たい笑みを浮かべてしまっていた。

「私は確かに酔っていたし、何か盛られるぐらいだから油断していた。でもね、ルージェ。いやルビィって名前の方が君にはぴったりくるな。私は、愛した女性を間違わない。ムーブルージェそっくりな君をどうにかするなんて、ないんだ。それにーー」


 そう言葉を続けようとしてサナレスはやっと、ーーやっと長い間かけて自分の本心に気がついた。


 今自分が愛しているのは、もうムーブルージェじゃない。

 銀髪のコンプレックスだらけで、不器用で、漆黒の総帥アセスに焦がれている、自分が妹として育ててきたリンフィーナだと、気がついた。


 こんな別の女と裸体で絡み合っているこの状態でーー?

 サナレスはおかしくなって笑う。


「たとえ昨夜君をムーブルージェだと勘違いしていたとしても、私は君を抱かないよ」

 やっとムーブルージェに背を向ける時がきたのだと、リンフィーナをアセスのところに残してきて気がついたのだ。


「ーーで、こんな茶番を仕組んだのはロイか?」

 自分に薬を飲ませることができたのは彼だけだ。


 咎める(とがめる)口調になると、ルビィの方が動揺して、取りつくろうように早口になった。

「ロイ兄さんは反対したの! でも私が……」

「ほう。君の企みか?」

 あっさり口を割ってくれるあたり、幼さがにじみ出ている。


「だって貴方を革命軍に引き入れるなら、姉さんそっくりな私が女になった方がいいと思って……」

「……」

 サナレスはしばし黙った。


「歌の才は認めよう。でもな……」

 憐れむような視線でサナレスは言った。


「私の女になるなら、もう少し、出るとこ出てからにしてくれないか? この状況じゃ私は犯罪者の気分だ……」

 リンフィーナに迫られたときに彼女の気持ちを躱す(かわす)ための、割とひどい逃げ口上を口にすると、ルビィは顔を真っ赤にした。


 こんな猿芝居を打ってくるなら容赦ようしゃしてやる気はないと、サナレスもさらに意地悪になる。

「男を誘えるくらいになるよう、私に練習台になれというのなら、考えてやらんこともないが……」

 そう言いながら彼女の顎を指先で摘んで顔を近づけると、鬼灯ほおずきのようになった彼女の顔から火が出て、次の瞬間殴りかかってきた。


「おっと」

 サナレスは彼女の二の腕を掴んでそれを防ぎ、頭から彼女にシーツをかける。

 子猫でも相手にしているようだと眉上を指先で触りながら、「頭を冷やしたら、歌ぐらい聴いてやる」と言いおいて、サナレスは服を着た。

感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ